【2】元始、君は太陽であった【完結】

ホズミロザスケ

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小さな進歩

第二十四話 小さな進歩4

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 翌日、今日は土曜日だ。授業はないが、朝から夕方まではバイトへ行かなければならない。
『おはようございます。具合はどうですか』
 と桂さんにメッセージを送る。バイト先に到着したころに、
『だいぶ楽になった。昨日買ってくれて置いたおかゆとゼリー、助かったぜ』
 と返信が来た。ちゃんと起きて、食べているなら安心した。
 バイトが終わった後、桂さん家のインターフォンを鳴らす。
「おう、駿河」
 とドアを開けてくれた桂さんの顔に血色が戻っていた。
「元気そうですね。これ、食料です」
「ありがと、助かる」
「熱は下がったけど、次は鼻がなぁ……」
「またちゃんと病院行ってくださいね」
「おう、週明け行く」
「さて、今日はにゅう麵にします?」
「作ってくれるのか?」
「まだ少し身体もだるいでしょう。雑炊と作り方はだいたい一緒ですし」
「頼んだ」
 部屋でさっとそうめんを茹で、出汁を作り、にゅう麺を作る。時期的に少し早い気もしたが、こないだスーパーでそうめんを買っておいて正解だった。お盆に乗せて持って行く。
「おいしそう! 鼻が詰まって香りを堪能できないのが残念だ」
「あの、僕も一緒に食べていいですか。晩ご飯まだなので」
「もちろん」
 風邪をひいている人と同席して食べるのは風邪がうつるリスクはあるが、桂さんと食べる機会が増えて、僕も最近一人で食べるのが少し寂しいという気持ちがわかるようになってきた。二人で麺をすする。
「うまいなぁ」
「食欲がしっかりあって良かったです」
「どんだけ体調崩しても食欲だけは不思議となくならないんだよな」
「食べれなくなるのが一番治り遅くなりますからね」
 食べ終わり、食器を片付けていると、
「駿河、帰るのか?」
 昨日と同じように悲しそうな声で桂さんが訊く。
「横にならないで大丈夫ですか」
「昼間めちゃくちゃ寝たし」
「なるほど」
「なんか話してくれよ」
 まるで絵本を読み聞かせしてくれとねだる子どものようだ。そんな彼女に口をついて出たのは、
「こんな時に話すことではないかもしれませんが、僕は風邪をひくのが一番怖いんです」
 という言葉だった。
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