18 / 35
気づき
第十八話 気づき6
しおりを挟む
「おーい~! ようやく見つけたぞ。ここにいたのか」
キョトンとしている佐野さんの肩を抱きつつ、男の手を無理やり剥がした。
「すいません。この子はワタシとの先約があるんで連れていきますね」
「じゃあ、君も一緒に飲まない?」
「え?」
「そうだよ、女の子二人いたらもっと盛り上がるし」
「いやぁ、それはちょっと……」
あぁ……ミイラ取りがミイラに……。僕は息を大きく吸ってから、
「桂さん、佐野さん。何してるんですかー? こっちに席取ってますよー」
と叫んだ。「なんだ、男いるのか」と吐くように言って男たちはそそくさと立ち去った。桂さんは佐野さんをそのまま連れてきた。
「駿河、マジ助かった……」
そう言って桂さんはオレンジジュースを一気に飲み干した。
「いえいえ、僕は叫んだだけなので。佐野さん大丈夫ですか?」
「うん。わたしは大丈夫。あの、桂さんも駿河くんもありがとうね」
「えっ、ワタシのこと知ってんのか?」
「英語の授業で近くに座ってる子は大体わかるよ。桂さんは斜め後ろ、駿河くんはわたしのすぐ後ろだもんね」
「なるほどなー」
「佐野さん、これもご縁ですし、一緒にここでお話でもしませんか?」
「いいの? 二人のお邪魔にならない?」
「ならねぇよ。それにまた変な虫が寄ってきたら困るだろ」
「ありがとう、桂さん」
「あ、咲でいいよ」
「じゃあ、咲ちゃんって呼ぶね。わたしも真綾でいいよ」
「真綾っていうのか。めちゃくちゃかわいいな」
桂さん、人と話さなくていいって言ってたくせに、距離の詰め方が早い。でも、さっきまでどこか表情が硬かったのがいつもの感じに戻ってて安心した。
「真綾はさ、今日なんで参加したんだ?」
「わたし、どうしてもお話ししたい人がいて」
「へぇ~」
「他の友達はみんな行かないって言うから一人で来たんだけど、その人も来てなかった」
「それは残念でしたね」
「全員絶対参加じゃないもんなぁ」
「来てたらいいなっていう一縷の望みをかけたっていうか。でも、咲ちゃんや駿河くんとお話し出来たから参加してよかった」
「よかったらこれからも気軽に話しかけてくれな」
「もちろんだよ! こうやって一緒にご飯食べたんだからもうお友達だよ」
そのあと最近読んだ本について話していたが、四月の夜はまだかなり冷える。しかし、一向に歓迎会は終わる気配がない。あまりの寒さに我慢できなくなった僕らはジュースとおにぎりを食べ終わると、駅へと向かった。石川から駅まで二十分ほど、暗い道をひたすら歩いた。スクールバスがなければ、こんなに長いのかと思い知らされる。しかし、歩いていると、夜風で冷えた身体も温まり、逆に良かったのかもしれない。反対の電車に乗って帰るという佐野さんとは駅で別れた。
キョトンとしている佐野さんの肩を抱きつつ、男の手を無理やり剥がした。
「すいません。この子はワタシとの先約があるんで連れていきますね」
「じゃあ、君も一緒に飲まない?」
「え?」
「そうだよ、女の子二人いたらもっと盛り上がるし」
「いやぁ、それはちょっと……」
あぁ……ミイラ取りがミイラに……。僕は息を大きく吸ってから、
「桂さん、佐野さん。何してるんですかー? こっちに席取ってますよー」
と叫んだ。「なんだ、男いるのか」と吐くように言って男たちはそそくさと立ち去った。桂さんは佐野さんをそのまま連れてきた。
「駿河、マジ助かった……」
そう言って桂さんはオレンジジュースを一気に飲み干した。
「いえいえ、僕は叫んだだけなので。佐野さん大丈夫ですか?」
「うん。わたしは大丈夫。あの、桂さんも駿河くんもありがとうね」
「えっ、ワタシのこと知ってんのか?」
「英語の授業で近くに座ってる子は大体わかるよ。桂さんは斜め後ろ、駿河くんはわたしのすぐ後ろだもんね」
「なるほどなー」
「佐野さん、これもご縁ですし、一緒にここでお話でもしませんか?」
「いいの? 二人のお邪魔にならない?」
「ならねぇよ。それにまた変な虫が寄ってきたら困るだろ」
「ありがとう、桂さん」
「あ、咲でいいよ」
「じゃあ、咲ちゃんって呼ぶね。わたしも真綾でいいよ」
「真綾っていうのか。めちゃくちゃかわいいな」
桂さん、人と話さなくていいって言ってたくせに、距離の詰め方が早い。でも、さっきまでどこか表情が硬かったのがいつもの感じに戻ってて安心した。
「真綾はさ、今日なんで参加したんだ?」
「わたし、どうしてもお話ししたい人がいて」
「へぇ~」
「他の友達はみんな行かないって言うから一人で来たんだけど、その人も来てなかった」
「それは残念でしたね」
「全員絶対参加じゃないもんなぁ」
「来てたらいいなっていう一縷の望みをかけたっていうか。でも、咲ちゃんや駿河くんとお話し出来たから参加してよかった」
「よかったらこれからも気軽に話しかけてくれな」
「もちろんだよ! こうやって一緒にご飯食べたんだからもうお友達だよ」
そのあと最近読んだ本について話していたが、四月の夜はまだかなり冷える。しかし、一向に歓迎会は終わる気配がない。あまりの寒さに我慢できなくなった僕らはジュースとおにぎりを食べ終わると、駅へと向かった。石川から駅まで二十分ほど、暗い道をひたすら歩いた。スクールバスがなければ、こんなに長いのかと思い知らされる。しかし、歩いていると、夜風で冷えた身体も温まり、逆に良かったのかもしれない。反対の電車に乗って帰るという佐野さんとは駅で別れた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる