上 下
15 / 35
気づき

第十五話 気づき3

しおりを挟む
「僕も撮ってみます」
 一枚撮影してみた。何も考えず、上から撮影しただけだが、初めての撮影ということもあってか、良い写真に感じた。
「駿河が記念すべき一枚目の撮影もしたし、いただきまーす!」
「いただきます」
 早速筑前煮をいただく。食べたのは一口大の鶏肉。味がしみ込んで、しっとりやわらかい。
「おいしいです……!」
「だろ?」
「桂さん、お料理上手なんですね」
「驚いたか~?」
 ここで正直に「はい、意外でした」と言っていいものかわからないが。
「普段のワタシからは想像できないって言いたいんだろ。あまりにもワタシがガサツだから、お母さんから家事はしっかり出来るように仕込まれたんだ」
「なるほど」
「駿河のもうまいぞ。やっぱ、みそ味はご飯との相性よすぎて箸が止まらなくなるよなぁ」
「ありがとうございます」
「このレシピ教えてくれよ。ワタシも作りたい」
「あとでレシピサイトのURLお教えしますね」
 そういえば、手料理、初めて食べてもらったのではと、気づいてしまうと少し照れてしまう。おいしいって言ってもらえると素直に嬉しいものなんだな。
「ちょっと待て駿河」
「なんです」
「お前まさか……しいたけ嫌いなのか?」
「……どうしてそう思うんですか」
「筑前煮のしいたけの量があきらかに減ってないからだ」
「桂さんが食べてないだけでは?」
「いや、食べてるんだけど?」
「……」
「都合悪くなったら黙るとか子どもか!?」
「実家にいるときは無理やり食べてましたが、こうして僕は一人暮らしを始めたんです。食べる、食べないのは僕の勝手です」
「駿河って好き嫌いなく食べそうな顔してるのにな」
「顔で判断しないでください」
「食べてみろよ」
「嫌ですね」
「美味しいかもしれないのに」
「姿かたちが見えてる時点で無理です」
「見えてなかったらいいのかよ」
「見えず隠れているならいいですよ」
「今だって、目つむれば解決だろ」
「いやいやいや、そういう問題じゃないです」
「そんなに嫌いなのかよ」
「そうですね。理由はわかりませんがDNAに刻まれてるみたいで、昔から好きではないですね」
「嫌いな理由壮大に言うやつはじめてだよ」
「そんなこと言うなら、桂さんは嫌いな食べ物ないんですか」
「この流れで言ったらワタシの立場ってものが」
「ということは嫌いな食べ物があるってことですね」
「そ、そうとは限らんぞ」
「ま、いつか自分からボロが出るのを待ちますよ」
「絶対言わねぇもんね」
しおりを挟む

処理中です...