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本編
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叔父様からはすぐに会ってくれると返事が返ってきた。手紙からは激怒している様子がよく伝わってくる。やっぱりそうなるわよね……。
叔父様の邸に行くのは五日後に決定した。リンハルトの父親からの返事も出発前には届くだろう。もし間に合わない場合は叔父様のところに届けてもらえばいい。
今後の予定が決まったからには家族にしばらく不在にすることを伝えなくてはいけない。会話をすると疲れそうだと思いながらもこれからの計画のためにも話をしに向かう。
気が重いけれど仕方がない。
「お父様、叔父様のところにしばらく滞在しようと思うのですがよろしいでしょうか? 時間ができたので、良い機会だと思って少しゆっくりしようかと思いまして……」
「あぁ、それが良いだろう。今まで忙しかっただろうからゆっくりすると良い。これから我が家はエリザベスの結婚準備で忙しくなるからな」
お父様はようやく決まったエリザベスの結婚にかなり浮かれている。今までたくさんお断りされてきているからか嬉しくてしかたがないらしい。どうしてお断りされるのかほんとうにわかっていないのかしら。残念なことにお父様はエリザベス母娘に対して目が曇ってしまうようだ。
「リアーネはこれから時間がたっぷりあるものね。この家のことは任せてゆっくりしてきて。どれくらいを予定しているの?」
すでに当主にでもなったつもりなのかしら。エリザベスには恵まれた美貌はあるが、侯爵令嬢としてふさわしい振る舞いはできていない。あきらかに教育が足りていないと思う。社交に精を出すのも良いけれど、侯爵家の名前は汚さないで欲しい。エリザベスもその母親も幼少期は普通の貴族として過ごしてこなかったのだから仕方がないのだけれど。
エリザベスの母親は子爵とその愛人の間で生まれ、平民の母親の元で育てられた。母親が亡くなったため、政略結婚の道具になるだろうと父親が引き取ったものの婿入りする予定の私のお父様の愛人に……。子爵はさぞかしがっかりしたことだろう。侯爵家の婿の愛人になり子どもまで作ってしまった。本妻には政略結婚で家にとってプラスになると言って引き取ったのにむしろマイナスになっている。本妻の目もあり、エリザベスたちを家に置くことはできずにひっそりと暮らしていたようだ。わたしのお母様が亡くなるまでは……。
「五日後にお約束しているのでそこから十五日ほどを考えています。叔父様たちもゆっくり滞在してほしいと言ってくださっているのでもう少し延びるかもしれません。あと、リンハルト様のお父様にはわたくしとの婚約破棄とお姉様の結婚についてお手紙を出しておきました。すぐにお返事がくると思いますわ」
「ありがとう、リアーネ。これで憂い無くリンハルト様と一緒になれるわ。政略結婚なんてお互いに不幸になるだけだし、愛し合う二人が結ばれるのが一番よね。いろんな障害に阻まれても最後は真実の愛が勝つのだわ」
エリザベスは上機嫌で貴族間の結婚を否定してくる。これはお母様とお父様の結婚についても言っているのかしら。お父様の今の生活もお母様と結婚したからこそなのだけど……。
リンハルトとは政略結婚と言ってもわたしたちは幼なじみでしたし、お互いに情はあったはずですよ。あなたよりもずっと長い時間、親交を深めてきたのですから。略奪しておいてよくそんなことを言えるわね。
「まぁ、お姉様は真実の愛を見つけられたのですね。喜ばしいことですわ。お姉様はリンハルト様と幸せになってください」
二人の力だけでどうやって生活していくのかしら。リンハルトの実家の援助は望めないと思うけれど。わたしは笑顔で会話しつつも心の中でエリザベスに毒づいていた。我ながら上手く顔をつくれていたと思う。
出発までの間、わたしはこれからの話し合いに必要な書類をまとめていた。部屋にこもっていたがお父様にはお姉様に引き継ぎするための準備と言えばあっさり納得した。本当にのんきな人。
ルドルフと協力してお父様を当主代理から降ろすための準備は問題なく終わった。
リンハルトの父親からは婚約解消は考え直して欲しいとの予想通りの返信が届いた。一時の気の迷いだからと。なぜわたしが許さないといけないのだろうか。そもそも破棄したたいと言ってきたのは向こうだ。簡単にエリザベスになびくような人はごめんだ。心が狭いと言われようがわたしは浮気を容認して結婚するつもりはない。
外に子どもを作られれば今と同じようなことになってしまう。わたしは正直、お母様の死の原因がただの事故だったのか怪しいと思っているくらいなのだ。
正式に婚約破棄が成立しなかったことは少し残念だったけれど、現状は婚約破棄が成立していないことは確認できた。けれど、お父様たちはすでにエリザベスとリンハルトの結婚が決定したと思っている。婚約破棄に対する認識が甘くないかしら?
準備期間はあっという間に終わり、出発の日。わたしは叔父様の邸に向かう馬車のなかでぼんやりと侯爵家に来たときのエリザベス母娘について考えていた。馬車は苦手だが移動するには仕方がない。頑張って馬車以外のことに意識を向ける。
お母様が生きていたらエリザベス母娘はこの侯爵家に入れない。貴族としてエリザベスに良縁を望むのならなるべく早く侯爵家の人間になりたいだろう。エリザベスの年齢は当時十二歳。社交界デビューを考えると時間が無くもう待てなかったのでは? と邪推してしまう。
だって、あの二人はお母様が亡くなってすぐに当たり前の顔をして我が家に来たのだもの……。
お祖父様はエリザベス母娘をこの家に迎えることを強く反対していた。けれど、お父様は前々から準備していたようで無理やりこの家に入れてしまった。
お祖父さまは溺愛していたお母様の死ですっかり気落ちしてしまったのか身体を壊してしまい、わたしが十三歳の時に亡くなってしまった。わたしはこれも怪しいと思っている。流石にお父様が関与していたとは思いたくない。
お祖父様もお母様の死にエリザベスの母親の関与を疑っていた。ただの事故ではないと疑っていたお祖父様は絶対犯人を見つけると意気込んでいた。それなのに急に身体を壊してしまうなんて……。けれどこれも証拠は無い。
過去のことを考えていても仕方がないのでわたしはこれからのことについて考えることにした。叔父様たちは最大限わたしの意志を尊重してくれるだろうから、わたしの方針は明確にしておかなければいけない。
・お父様の当主代理から降ろしてわたしが正式な当主になる
・リンハルトとは結婚しないし、婚約破棄の慰謝料を請求する
・エリザベス母娘には侯爵家を出て行ってもらいたい
わたしの主な希望はこの三点。ただ、今のわたし一人で侯爵家の当主が務まるかが不安だ。ルドルフもいるし、お父様やエリザベスたちにいろいろと思うところのある人間ばかりだから殆どの人はわたしについてきてくれるだろう。けれど、未婚の若い女が当主となれば問題がでてくるかもしれない。この点は特に叔父様に相談が必要だと思う。叔父様たちにいい助言をもらえるといいのだけれど……。
叔父様の邸に行くのは五日後に決定した。リンハルトの父親からの返事も出発前には届くだろう。もし間に合わない場合は叔父様のところに届けてもらえばいい。
今後の予定が決まったからには家族にしばらく不在にすることを伝えなくてはいけない。会話をすると疲れそうだと思いながらもこれからの計画のためにも話をしに向かう。
気が重いけれど仕方がない。
「お父様、叔父様のところにしばらく滞在しようと思うのですがよろしいでしょうか? 時間ができたので、良い機会だと思って少しゆっくりしようかと思いまして……」
「あぁ、それが良いだろう。今まで忙しかっただろうからゆっくりすると良い。これから我が家はエリザベスの結婚準備で忙しくなるからな」
お父様はようやく決まったエリザベスの結婚にかなり浮かれている。今までたくさんお断りされてきているからか嬉しくてしかたがないらしい。どうしてお断りされるのかほんとうにわかっていないのかしら。残念なことにお父様はエリザベス母娘に対して目が曇ってしまうようだ。
「リアーネはこれから時間がたっぷりあるものね。この家のことは任せてゆっくりしてきて。どれくらいを予定しているの?」
すでに当主にでもなったつもりなのかしら。エリザベスには恵まれた美貌はあるが、侯爵令嬢としてふさわしい振る舞いはできていない。あきらかに教育が足りていないと思う。社交に精を出すのも良いけれど、侯爵家の名前は汚さないで欲しい。エリザベスもその母親も幼少期は普通の貴族として過ごしてこなかったのだから仕方がないのだけれど。
エリザベスの母親は子爵とその愛人の間で生まれ、平民の母親の元で育てられた。母親が亡くなったため、政略結婚の道具になるだろうと父親が引き取ったものの婿入りする予定の私のお父様の愛人に……。子爵はさぞかしがっかりしたことだろう。侯爵家の婿の愛人になり子どもまで作ってしまった。本妻には政略結婚で家にとってプラスになると言って引き取ったのにむしろマイナスになっている。本妻の目もあり、エリザベスたちを家に置くことはできずにひっそりと暮らしていたようだ。わたしのお母様が亡くなるまでは……。
「五日後にお約束しているのでそこから十五日ほどを考えています。叔父様たちもゆっくり滞在してほしいと言ってくださっているのでもう少し延びるかもしれません。あと、リンハルト様のお父様にはわたくしとの婚約破棄とお姉様の結婚についてお手紙を出しておきました。すぐにお返事がくると思いますわ」
「ありがとう、リアーネ。これで憂い無くリンハルト様と一緒になれるわ。政略結婚なんてお互いに不幸になるだけだし、愛し合う二人が結ばれるのが一番よね。いろんな障害に阻まれても最後は真実の愛が勝つのだわ」
エリザベスは上機嫌で貴族間の結婚を否定してくる。これはお母様とお父様の結婚についても言っているのかしら。お父様の今の生活もお母様と結婚したからこそなのだけど……。
リンハルトとは政略結婚と言ってもわたしたちは幼なじみでしたし、お互いに情はあったはずですよ。あなたよりもずっと長い時間、親交を深めてきたのですから。略奪しておいてよくそんなことを言えるわね。
「まぁ、お姉様は真実の愛を見つけられたのですね。喜ばしいことですわ。お姉様はリンハルト様と幸せになってください」
二人の力だけでどうやって生活していくのかしら。リンハルトの実家の援助は望めないと思うけれど。わたしは笑顔で会話しつつも心の中でエリザベスに毒づいていた。我ながら上手く顔をつくれていたと思う。
出発までの間、わたしはこれからの話し合いに必要な書類をまとめていた。部屋にこもっていたがお父様にはお姉様に引き継ぎするための準備と言えばあっさり納得した。本当にのんきな人。
ルドルフと協力してお父様を当主代理から降ろすための準備は問題なく終わった。
リンハルトの父親からは婚約解消は考え直して欲しいとの予想通りの返信が届いた。一時の気の迷いだからと。なぜわたしが許さないといけないのだろうか。そもそも破棄したたいと言ってきたのは向こうだ。簡単にエリザベスになびくような人はごめんだ。心が狭いと言われようがわたしは浮気を容認して結婚するつもりはない。
外に子どもを作られれば今と同じようなことになってしまう。わたしは正直、お母様の死の原因がただの事故だったのか怪しいと思っているくらいなのだ。
正式に婚約破棄が成立しなかったことは少し残念だったけれど、現状は婚約破棄が成立していないことは確認できた。けれど、お父様たちはすでにエリザベスとリンハルトの結婚が決定したと思っている。婚約破棄に対する認識が甘くないかしら?
準備期間はあっという間に終わり、出発の日。わたしは叔父様の邸に向かう馬車のなかでぼんやりと侯爵家に来たときのエリザベス母娘について考えていた。馬車は苦手だが移動するには仕方がない。頑張って馬車以外のことに意識を向ける。
お母様が生きていたらエリザベス母娘はこの侯爵家に入れない。貴族としてエリザベスに良縁を望むのならなるべく早く侯爵家の人間になりたいだろう。エリザベスの年齢は当時十二歳。社交界デビューを考えると時間が無くもう待てなかったのでは? と邪推してしまう。
だって、あの二人はお母様が亡くなってすぐに当たり前の顔をして我が家に来たのだもの……。
お祖父様はエリザベス母娘をこの家に迎えることを強く反対していた。けれど、お父様は前々から準備していたようで無理やりこの家に入れてしまった。
お祖父さまは溺愛していたお母様の死ですっかり気落ちしてしまったのか身体を壊してしまい、わたしが十三歳の時に亡くなってしまった。わたしはこれも怪しいと思っている。流石にお父様が関与していたとは思いたくない。
お祖父様もお母様の死にエリザベスの母親の関与を疑っていた。ただの事故ではないと疑っていたお祖父様は絶対犯人を見つけると意気込んでいた。それなのに急に身体を壊してしまうなんて……。けれどこれも証拠は無い。
過去のことを考えていても仕方がないのでわたしはこれからのことについて考えることにした。叔父様たちは最大限わたしの意志を尊重してくれるだろうから、わたしの方針は明確にしておかなければいけない。
・お父様の当主代理から降ろしてわたしが正式な当主になる
・リンハルトとは結婚しないし、婚約破棄の慰謝料を請求する
・エリザベス母娘には侯爵家を出て行ってもらいたい
わたしの主な希望はこの三点。ただ、今のわたし一人で侯爵家の当主が務まるかが不安だ。ルドルフもいるし、お父様やエリザベスたちにいろいろと思うところのある人間ばかりだから殆どの人はわたしについてきてくれるだろう。けれど、未婚の若い女が当主となれば問題がでてくるかもしれない。この点は特に叔父様に相談が必要だと思う。叔父様たちにいい助言をもらえるといいのだけれど……。
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