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リディアは殆ど一睡もできないまま朝を迎えた。体の異変は収まってはいるが、気分も体も重たい。
(ヴィレム様は大丈夫かしら? エリオット様達に会う前に今後どうするつもりか確認しないといけないわ。昨日のことを見なかったことにするのか問い詰めるのか……。当たり前だけどエリオット様は戻ってこなかったわね)
これからのことを考えているとドアをノックする音がした。
「リディア、起きているかい?」
「! はい。起きています」
ドアを開けてエリオットが部屋に入ってくる。エリオットは部屋を見回すと不思議そうな顔をしてリディアに尋ねた。
「リディアは一人なのかい?」
(あぁ。わたしがヴィレム様と一晩過ごしたと思っていたのね。やっぱり、何もなかったのように振る舞うのだわ。二人の関係はいつからなの……)
「? そうですけど、どうかしましたか?」
リディアは何事もなかったようにとぼけた。
「いや、ヴィレムがどこにいるのか知っているかと思ってね」
「お部屋で休んでいるのではないでしょうか。昨日はエレイン様が心配だと早々にお開きになりましたの。エレイン様は?」
「機嫌は直ったよ。ただ、ちょっときまりが悪いみたいだ。殆ど癇癪みたいなものだからね。機嫌は直ったけれど、遅くなってしまったから別の部屋で寝ることにしたんだ。起こしては悪いからね」
「お気遣いいただかなくても大丈夫でしたのに」
ヴィレムの部屋には同じように浮気の現場を押さえようとエレインが部屋に踏み込んでいた。当然、部屋にはヴィレム一人だったため、エレインには何も出来なかった。
***
エリオットとエレインは何事も無かったかのように振る舞っている。リディアも何も知らないふりをしてヴィレムに今後のことを相談することにした。
今日もエリオットとエレインは相変わらず二人でいるようだ。昨日は何も無かったような二人の態度に、リディアは昨日のことは見間違えだったのかと錯覚しそうになる。
ヴィレムが二日酔いだから一人でゆっくりすると言うと自然と二人で行動することになった。リディアもヴィレムに合わせて一人になりたいと適当な理由をつけたのもある。
リディアとヴィレムの態度に二人は完全に油断しているようだった。
「ヴィレム様、エリオット様達のことは如何なさいますか? わたしはエリオット様が現状維持を望むならそのままで、離婚を望むのならばそれを受け入れます。もちろん、ヴィレム様のお気持ちが一番ですので、ヴィレム様の方針に従います。エリオット様達の関係を暴いてしまっても構いません」
「……僕は二人の関係を受け入れられない。二人の気持ちと行為を知ってしまった以上、これまでの関係を続けるのも無理だ。僕たちは離婚になるだろう」
ヴィレムは苦しそうに言った。
(それはそうよね……。普通はあの現場を見て夫婦を続けるのは難しいわ。けれど、わたしには自分から離婚を切り出すことなんてできない)
「リディアには申し訳ない。僕たちが離婚となればあの二人は一緒になると言うだろう。君たちも離婚になってしまう」
「いいえ。もとよりわたしはエリオット様のお望み通りにするつもりですから問題ありません。離婚と言われればそれに従います」
「リディアはそれで良いのかい?」
「問題がない、とは言い切れませんが仕方のないことだとは思っています」
「そうか……」
「わたしはヴィレム様にも幸せになって欲しいと思っています。ヴィレム様とも友人だと思っていますから。ですから、わたしのことは気にせずにお話を進めてください」
「……ありがとう」
(ヴィレム様は大丈夫かしら? エリオット様達に会う前に今後どうするつもりか確認しないといけないわ。昨日のことを見なかったことにするのか問い詰めるのか……。当たり前だけどエリオット様は戻ってこなかったわね)
これからのことを考えているとドアをノックする音がした。
「リディア、起きているかい?」
「! はい。起きています」
ドアを開けてエリオットが部屋に入ってくる。エリオットは部屋を見回すと不思議そうな顔をしてリディアに尋ねた。
「リディアは一人なのかい?」
(あぁ。わたしがヴィレム様と一晩過ごしたと思っていたのね。やっぱり、何もなかったのように振る舞うのだわ。二人の関係はいつからなの……)
「? そうですけど、どうかしましたか?」
リディアは何事もなかったようにとぼけた。
「いや、ヴィレムがどこにいるのか知っているかと思ってね」
「お部屋で休んでいるのではないでしょうか。昨日はエレイン様が心配だと早々にお開きになりましたの。エレイン様は?」
「機嫌は直ったよ。ただ、ちょっときまりが悪いみたいだ。殆ど癇癪みたいなものだからね。機嫌は直ったけれど、遅くなってしまったから別の部屋で寝ることにしたんだ。起こしては悪いからね」
「お気遣いいただかなくても大丈夫でしたのに」
ヴィレムの部屋には同じように浮気の現場を押さえようとエレインが部屋に踏み込んでいた。当然、部屋にはヴィレム一人だったため、エレインには何も出来なかった。
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エリオットとエレインは何事も無かったかのように振る舞っている。リディアも何も知らないふりをしてヴィレムに今後のことを相談することにした。
今日もエリオットとエレインは相変わらず二人でいるようだ。昨日は何も無かったような二人の態度に、リディアは昨日のことは見間違えだったのかと錯覚しそうになる。
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リディアとヴィレムの態度に二人は完全に油断しているようだった。
「ヴィレム様、エリオット様達のことは如何なさいますか? わたしはエリオット様が現状維持を望むならそのままで、離婚を望むのならばそれを受け入れます。もちろん、ヴィレム様のお気持ちが一番ですので、ヴィレム様の方針に従います。エリオット様達の関係を暴いてしまっても構いません」
「……僕は二人の関係を受け入れられない。二人の気持ちと行為を知ってしまった以上、これまでの関係を続けるのも無理だ。僕たちは離婚になるだろう」
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(それはそうよね……。普通はあの現場を見て夫婦を続けるのは難しいわ。けれど、わたしには自分から離婚を切り出すことなんてできない)
「リディアには申し訳ない。僕たちが離婚となればあの二人は一緒になると言うだろう。君たちも離婚になってしまう」
「いいえ。もとよりわたしはエリオット様のお望み通りにするつもりですから問題ありません。離婚と言われればそれに従います」
「リディアはそれで良いのかい?」
「問題がない、とは言い切れませんが仕方のないことだとは思っています」
「そうか……」
「わたしはヴィレム様にも幸せになって欲しいと思っています。ヴィレム様とも友人だと思っていますから。ですから、わたしのことは気にせずにお話を進めてください」
「……ありがとう」
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