37 / 42
35-2.後処理(ジルベルト視点)
しおりを挟む
私のところにクリストファー殿下の部下から連絡が届けられた。
クリストファー殿下は視察中に賊に襲われたが地震と火事によって危機を脱したそうだ。
私の計画は失敗したらしい。クリストファー殿下を消すどころか、地震と火事で私の駒が失われてしまった。
生き残った人間はいない。遺体は損傷がひどかったためすでに全部火葬したらしく、その人数も合っていた。
殿下をかばって何人もの部下を失ったと書かれていたので、本当に惜しかった。
「使えないやつらだな……。まぁ、証拠を消す手間が省けたか」
私はグラスの中の酒を一気に飲み干した。今回、失敗したやつらは手下としてはあまり質がよくない。後先考えずに奪いすぎてしまうのだ。いずれ処分するつもりではあったが、本当に忌々しい。
再びグラスの中に酒を注ぐ。いくら飲んでも飲み足りない。
しかし、思った以上にあの周辺の土地は回復したらしい。想定外に土地を回復させることができたと知らせがあった。別のルートからも同様の報告が上がってきている。
よほどのことがあったのだろう。後ほど計算して請求するとあるのがまた忌々しいが。
これは嬉しい誤算だ。回復は間に合わないかと思ったがこれで希望が見えてきた。
それにしても、宰相が手配した癒やしの力を持つ、フィオナという女性は相当な力の持ち主のようだ。
もっと土地を回らせてから襲撃させればよかったな。惜しいことをした。
「宰相め。そんなに力の強い人間を隠しておくなんて……。話を聞く限りマリーベルより力が強いのでは? マリーベルや無能なリリアーナではなく、その娘を寄越せば良いものを……」
思わず本音が口からこぼれる。
私の手の者の報告には「聖女なのでは?」とあった。土地と契約しなくてもそれほどまでに強い力を示すなんて……。そんなに力が強いなら私が欲しい。
国王陛下が言っていた、クリストファー殿下の妻候補なのかもしれない。しかも、見た目も良いとか。ますます欲しい。
今回の計画で手に入るはずだったのに……。失敗してしまったのは本当に悔やまれる。
なんとかして、その聖女を手に入れることはできないだろうか。クリストファー殿下が消えればなんとかなるか?
いや、国王陛下に釘を刺されている以上、クリストファー殿下がいなくなったとしてもフィオナを私の妻にすることは難しいか……。
なら、やはり正妻はマリーベルだな。フィオナは存在を隠して言うことを聞かせる。
私はペンを取り、クリストファー殿下に手紙を書く。小屋は勝手に使われてしまった、管理不足で申し訳ない、こちらも多くの被害を受けており困っているという内容だ。
実際に計画の直前まであの小屋は使わせていない。別の拠点を使っていた。仮に国王陛下たちが私を疑い、事前に調査をしていたとしてもあの小屋からは何も出てこなかったはずだ。駒が捕まっていなければばれるはずがない。
クリストファー殿下はもう王都に戻ってしまう。これからは警備が厳しくなるだろう。国王陛下からの命令を達成し、廃領の話をなかったことにすることが先決だ。
幸い、こちらにはマリーベルがいる。マリーベルを上手く使えば、なんとか国王陛下との約束は果たせるはずだ。聖女になれば効率よく土地も癒やせる。
マリーベルは私の言うことを本当によくきいてくれる。もっと無理をさせよう。ちょっと甘い言葉をささやけば喜んで何でも言うことをきく、とても可愛い女だ。マリーベルが駄目になったとしてもスペアも見つかった。
フィオナはクリストファー殿下と結婚する前にこちらに招待すれば良い。聖女同士交流してはどうかと?
クリストファー殿下がどこの土地を与えられるのかはわからないが、きっとフィオナは契約して聖女になるのだろう。
これから聖女になるなら、先に聖女となったマリーベルとの交流はきっと有意義だと。私は中古より新品が良い。
そして、不幸な事故にあってもらう。
素晴らしい計画だ。
あぁ、気分が良い。
今日はマリーベルがいる。
マリーベルに相手でもさせるか。私のために頑張っているご褒美をやらないとな。
クリストファー殿下は視察中に賊に襲われたが地震と火事によって危機を脱したそうだ。
私の計画は失敗したらしい。クリストファー殿下を消すどころか、地震と火事で私の駒が失われてしまった。
生き残った人間はいない。遺体は損傷がひどかったためすでに全部火葬したらしく、その人数も合っていた。
殿下をかばって何人もの部下を失ったと書かれていたので、本当に惜しかった。
「使えないやつらだな……。まぁ、証拠を消す手間が省けたか」
私はグラスの中の酒を一気に飲み干した。今回、失敗したやつらは手下としてはあまり質がよくない。後先考えずに奪いすぎてしまうのだ。いずれ処分するつもりではあったが、本当に忌々しい。
再びグラスの中に酒を注ぐ。いくら飲んでも飲み足りない。
しかし、思った以上にあの周辺の土地は回復したらしい。想定外に土地を回復させることができたと知らせがあった。別のルートからも同様の報告が上がってきている。
よほどのことがあったのだろう。後ほど計算して請求するとあるのがまた忌々しいが。
これは嬉しい誤算だ。回復は間に合わないかと思ったがこれで希望が見えてきた。
それにしても、宰相が手配した癒やしの力を持つ、フィオナという女性は相当な力の持ち主のようだ。
もっと土地を回らせてから襲撃させればよかったな。惜しいことをした。
「宰相め。そんなに力の強い人間を隠しておくなんて……。話を聞く限りマリーベルより力が強いのでは? マリーベルや無能なリリアーナではなく、その娘を寄越せば良いものを……」
思わず本音が口からこぼれる。
私の手の者の報告には「聖女なのでは?」とあった。土地と契約しなくてもそれほどまでに強い力を示すなんて……。そんなに力が強いなら私が欲しい。
国王陛下が言っていた、クリストファー殿下の妻候補なのかもしれない。しかも、見た目も良いとか。ますます欲しい。
今回の計画で手に入るはずだったのに……。失敗してしまったのは本当に悔やまれる。
なんとかして、その聖女を手に入れることはできないだろうか。クリストファー殿下が消えればなんとかなるか?
いや、国王陛下に釘を刺されている以上、クリストファー殿下がいなくなったとしてもフィオナを私の妻にすることは難しいか……。
なら、やはり正妻はマリーベルだな。フィオナは存在を隠して言うことを聞かせる。
私はペンを取り、クリストファー殿下に手紙を書く。小屋は勝手に使われてしまった、管理不足で申し訳ない、こちらも多くの被害を受けており困っているという内容だ。
実際に計画の直前まであの小屋は使わせていない。別の拠点を使っていた。仮に国王陛下たちが私を疑い、事前に調査をしていたとしてもあの小屋からは何も出てこなかったはずだ。駒が捕まっていなければばれるはずがない。
クリストファー殿下はもう王都に戻ってしまう。これからは警備が厳しくなるだろう。国王陛下からの命令を達成し、廃領の話をなかったことにすることが先決だ。
幸い、こちらにはマリーベルがいる。マリーベルを上手く使えば、なんとか国王陛下との約束は果たせるはずだ。聖女になれば効率よく土地も癒やせる。
マリーベルは私の言うことを本当によくきいてくれる。もっと無理をさせよう。ちょっと甘い言葉をささやけば喜んで何でも言うことをきく、とても可愛い女だ。マリーベルが駄目になったとしてもスペアも見つかった。
フィオナはクリストファー殿下と結婚する前にこちらに招待すれば良い。聖女同士交流してはどうかと?
クリストファー殿下がどこの土地を与えられるのかはわからないが、きっとフィオナは契約して聖女になるのだろう。
これから聖女になるなら、先に聖女となったマリーベルとの交流はきっと有意義だと。私は中古より新品が良い。
そして、不幸な事故にあってもらう。
素晴らしい計画だ。
あぁ、気分が良い。
今日はマリーベルがいる。
マリーベルに相手でもさせるか。私のために頑張っているご褒美をやらないとな。
52
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います
かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。
現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。
一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。
【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。
癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。
レイナの目標は自立する事なのだが……。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる