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34.幸運のお守り
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きらきらと光る綺麗な雨が周囲に降り注ぐ。火が消えると、雨もすぐに止んだ。火が消えると暗くなるはずだが、周囲は光のおかげか暗くない。不思議で神秘的な現象に周囲にいた人は呆気にとられている。
わたしはそんな人たちを放っておいてクリストファー様を探すことにした。
他にも気を取り直した人たちはいつ光が消えても困らないように明かりを用意し始めた。
わたしは制止する声を無視して、鎮火した小屋のがれきを必死にかき分けた。色んなところを引っかけてしまい、服が破れ小さな傷が出来ていく。
重たい。力仕事は得意ではないし、普段のわたしなら動かすことはできないと思う。それなのに、自分でも不思議なくらい力を出すことができた。
きっと、クリストファー様は無事だ。そんな予感がする。
こんな不思議なことが起きたのだ。きっと精霊がクリストファー様を守ってくれている。
気がつけば、わたしの周囲にはクリストファー様を探す人が増えていた。消火活動から解放されたからだろう。
人知を超えた現象に奇跡が起きていると、救助活動する人の中に希望が広がり始めていた。
「クリストファー様! ご無事ですか?」
わたしは必死にクリストファー様に呼びかける。声を出せる状態なら声を出して欲しい……。
「フィオナ様、無理はなさらないでください。怪我があっては大変です。こちらも人手が増やせるようになりました。クリストファー様は絶対に見つけます」
これまでの数々の不思議な出来事に、フランツ様も『もしかすると……』と期待しているようだ。先ほどとは打って変わり、表情には精気が戻り、声にも力強さが戻っている。
「大丈夫です。なんとなくですけど、見つけられる気がするんです」
「わかりました。でも、本当に危ないことは止めてください。クリストファー様がこのことを知ればどうなることか……」
フランツ様の言葉にわたしは「そうですね」と苦笑して返すしかなかった。きっと、この状況を知ったら怒ってしまうだろうから。
わかっていても止めることはできない。わたしは絶対に諦めない。
わたしたちが捕らわれていた小屋はそこそこの大きさだったようだ。なかなか、クリストファー様をみつけることができない。
クリストファー様は怪我もしているし、火事で弱っているはずだ。早く見つけなければ、さっきの雨でさらに体力を奪われてしまう。生きていても危険な状態に気持ちが焦ってくる。
一体どこに……。冷静にならなければ。
ふと、胸元のペンダントに何かを感じた。ほんのり温かい。もしかして……。
「クリストファー様はきっと無事です」
「フィオナ様、胸のあたりが光っています」
鎮火され、一気に暗くなったところにわたしのペンダントの光が目立つようだ。
「えぇ、何か呼ばれています」
このペンダントには子どもの頃にお城で植物たちにもらった花びらが入っている。幸運のお守りだと言っていた。
わたしはペンダントの光が導くところに向かう。どんどん反応が強くなっている。
光がみえる。がれきの隙間からわずかに光が漏れていた。わたしが近づくと漏れている光も強くなっていく。
きっとあそこに……。
「きっとあそこにいます! 力を貸してください!」
近くにいた人たちの力を借りて、クリストファー様を助け出す。
危ないのと慎重に救出作業を行いたいからと一歩引くようにお願いされたのでわたしは見守ることに専念する。
クリストファー様の上にはたくさんのがれきが覆い被さっていた。なかなか助け出すのは困難で、普通なら諦める状況だ。
しかし、慎重にがれきをどかしていくと少しずつ光が強くなっているのがわかる。不思議な力を実感し、わたしたちは皆、クリストファー様の無事を確信した。
「いらっしゃったぞ! ご無事だ!」
周囲から歓声が上がる。
本当によかった……。
驚いたことに、あれだけの雨が降ったにもかかわらずクリストファー様は濡れていなかった。本当に不思議な雨だ。体力が奪われないことに少し安心する。
クリストファー様はすぐにがれきの無いところに運ばれた。
わたしは横たわるクリストファー様の横に座り、煤で汚れた顔を拭った。見たところ、大きな外傷はない。
クリストファー様がピクリと反応する。意識を取り戻したようだ。
目を覚ましたクリストファー様がわたしの頬に手を伸ばす。わたしはそのままクリストファー様の手を支えた。
温かい。クリストファー様が生きている。本当に良かった……。
「……きみが……ここにいるということは駄目だったのか……」
クリストファー様が苦しそうに、悔しそうにつぶやいた。こんな時まで自分のことよりわたしのことが心配らしい。心配するのはわたしの方なのに……。
「違います! わたしもクリストファー様も無事です!」
わたしの言葉にクリストファー様は安堵した顔をする。
「よ、かった……。あ……の時と同じだ。きみが城で力を使ったときと……。本当に……すごく、きれいだったんだよ。やっぱり、これは幸運のお守りだったね」
「しゃべらないでください。もう大丈夫ですから。準備ができ次第、すぐに安全な場所に移動しますね。今度は絶対に離れませんから」
わたしがクリストファー様の手を強く握ると、クリストファー様は嬉しそうに微笑んだ。
わたしはそんな人たちを放っておいてクリストファー様を探すことにした。
他にも気を取り直した人たちはいつ光が消えても困らないように明かりを用意し始めた。
わたしは制止する声を無視して、鎮火した小屋のがれきを必死にかき分けた。色んなところを引っかけてしまい、服が破れ小さな傷が出来ていく。
重たい。力仕事は得意ではないし、普段のわたしなら動かすことはできないと思う。それなのに、自分でも不思議なくらい力を出すことができた。
きっと、クリストファー様は無事だ。そんな予感がする。
こんな不思議なことが起きたのだ。きっと精霊がクリストファー様を守ってくれている。
気がつけば、わたしの周囲にはクリストファー様を探す人が増えていた。消火活動から解放されたからだろう。
人知を超えた現象に奇跡が起きていると、救助活動する人の中に希望が広がり始めていた。
「クリストファー様! ご無事ですか?」
わたしは必死にクリストファー様に呼びかける。声を出せる状態なら声を出して欲しい……。
「フィオナ様、無理はなさらないでください。怪我があっては大変です。こちらも人手が増やせるようになりました。クリストファー様は絶対に見つけます」
これまでの数々の不思議な出来事に、フランツ様も『もしかすると……』と期待しているようだ。先ほどとは打って変わり、表情には精気が戻り、声にも力強さが戻っている。
「大丈夫です。なんとなくですけど、見つけられる気がするんです」
「わかりました。でも、本当に危ないことは止めてください。クリストファー様がこのことを知ればどうなることか……」
フランツ様の言葉にわたしは「そうですね」と苦笑して返すしかなかった。きっと、この状況を知ったら怒ってしまうだろうから。
わかっていても止めることはできない。わたしは絶対に諦めない。
わたしたちが捕らわれていた小屋はそこそこの大きさだったようだ。なかなか、クリストファー様をみつけることができない。
クリストファー様は怪我もしているし、火事で弱っているはずだ。早く見つけなければ、さっきの雨でさらに体力を奪われてしまう。生きていても危険な状態に気持ちが焦ってくる。
一体どこに……。冷静にならなければ。
ふと、胸元のペンダントに何かを感じた。ほんのり温かい。もしかして……。
「クリストファー様はきっと無事です」
「フィオナ様、胸のあたりが光っています」
鎮火され、一気に暗くなったところにわたしのペンダントの光が目立つようだ。
「えぇ、何か呼ばれています」
このペンダントには子どもの頃にお城で植物たちにもらった花びらが入っている。幸運のお守りだと言っていた。
わたしはペンダントの光が導くところに向かう。どんどん反応が強くなっている。
光がみえる。がれきの隙間からわずかに光が漏れていた。わたしが近づくと漏れている光も強くなっていく。
きっとあそこに……。
「きっとあそこにいます! 力を貸してください!」
近くにいた人たちの力を借りて、クリストファー様を助け出す。
危ないのと慎重に救出作業を行いたいからと一歩引くようにお願いされたのでわたしは見守ることに専念する。
クリストファー様の上にはたくさんのがれきが覆い被さっていた。なかなか助け出すのは困難で、普通なら諦める状況だ。
しかし、慎重にがれきをどかしていくと少しずつ光が強くなっているのがわかる。不思議な力を実感し、わたしたちは皆、クリストファー様の無事を確信した。
「いらっしゃったぞ! ご無事だ!」
周囲から歓声が上がる。
本当によかった……。
驚いたことに、あれだけの雨が降ったにもかかわらずクリストファー様は濡れていなかった。本当に不思議な雨だ。体力が奪われないことに少し安心する。
クリストファー様はすぐにがれきの無いところに運ばれた。
わたしは横たわるクリストファー様の横に座り、煤で汚れた顔を拭った。見たところ、大きな外傷はない。
クリストファー様がピクリと反応する。意識を取り戻したようだ。
目を覚ましたクリストファー様がわたしの頬に手を伸ばす。わたしはそのままクリストファー様の手を支えた。
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「しゃべらないでください。もう大丈夫ですから。準備ができ次第、すぐに安全な場所に移動しますね。今度は絶対に離れませんから」
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