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28.不思議な現象
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この場所に来てからなんだか呼ばれている気がして、早く力を使いたい気持ちになった。
早くこの土地と繋がりたい。不思議とそんな気持ちだ。
わたしを呼んでいるわ。
「フィオナ、待つんだ!」
遠くでクリストファー様が何か言っているような気がする。けれど、そんなことはどうでも良かった。
わたしが一度目の人生で命を落とした場所だ。悲しいような懐かしいような不思議な感情がわたしの中で膨らんでいく。
わたしは地面に手を当て力を流し始める。土地と繋がる感覚がした。繋がったと思った瞬間からずるりと身体から力が抜けていく。
「フィオナ!」
力がわたしから流れていき、土地に移動していくのがわかる。
意識がどんどん遠くなってきた。
懐かしい感覚だわ。あぁ、もしかして、今回も失敗してしまったのかしら。
……胸元がなんだか温かい。そう思った瞬間にわたしの中の力が強くなる。これまでに感じたことのない力の流れを感じ、自分の身体から力が溢れてきた。
「フィオナ、フィオナ! 大丈夫か?」
クリストファー様がわたしの身体を必死に揺らしている。
「クリストファー様?」
目の前にはほっとした表情のクリストファー様だ。
「良かった。気がついたんだね」
「わたし……どうかしていましたか?」
「どうしたも何も私の声が全く聞こえていないようだったよ。止めたのにも関わらず癒やし始めてしまうし……。しかも、思い切り力を流していただろう?」
「あ、あぁ、はい。なんだか早く力を流して繋がらないといけないような気がして……」
「意識を失ったかと思ったらものすごい光に包まれていたよ」
「光に?」
「あぁ、こんなことになるとは思わなかった。どこかおかしなところはない?」
おかしなところはない。むしろこれまでにないくらい身体に力が満ちているような気がする。
「おかしいところはなく、むしろ調子が良いくらいです。何というか力が強くなったような……」
「動けるようであれば、一旦馬車に戻ろう」
そう言ってクリストファー様はわたしを抱き上げた。
「ま、待ってください。自分で歩けます」
「却下だ」
は、恥ずかしすぎる……!
抵抗もむなしくわたしはお姫様だっこの状態で馬車まで運ばれてしまった。
もちろん、わたしは必死に抵抗したけれど、受け入れてもらうことはできなかった。
クリストファー様は今も心配そうな顔をしてわたしの手を握っている。
「わたしは何ともありません。大丈夫です。それよりも土地がどうなったか心配なのですが……」
「本当に? 土地は回復しているようだから安心して。リリアーナが癒やしを始めて私も慌てて力を流したんだが、不思議なことに私も力が満ちている感じだ。力を消費したはずなのに回復している。なのにちゃんと土地は回復しているし、こんなことは初めてだよ」
クリストファー様も何か力を感じているらしい。
「わたしもこんなことは初めてです。力を戻されたような感じで、なんだかわたしの器も大きくなったような……」
「話は良いから休んで。今日はもう戻ろう。土地もじゅうぶん回復したようだしね。何よりリリアーナが心配だ」
「わたしは大丈夫なのですが……」
「いや、普通じゃないよ」
「そんなことは……」
反論しようとしたが、身体からふわっと力が抜けていく。
***
「……あれ……?」
どうやら、わたしは意識を失っていたらしい。気がつくと滞在している家のベッドに横たわっていた。
「リリアーナ、目が覚めたんだね」
「クリス様?」
「心配したよ。何か食べられそうかい? スープを用意させてあるよ」
「今はちょっと……」
「では、飲み物だけでも飲んで欲しい」
「わかりました」
クリストファー様が心配するのでわたしはジュースを飲むことにした。オレンジを搾ったものでさっぱりとして飲みやすい。全身に染み渡る感じだ。
体は水分を欲してらしく、あっという間に飲み干してしまった。生き返った心地だ。そんなわたしの様子を見てクリストファー様がほっとした顔をする。
「ありがとうございます。おいしかったです。わたし、寝てしまっていたんですね」
「本当に無事で良かったよ」
「そんなに心配するようなことはないと思うのですが……」
「心配するさ! 君、自覚はないかもしれないが、ずっと光っていたんだよ? 戻ってきてもしばらくほんのり光っていたんだ。神秘的てとても綺麗だったけれど、どう考えても普通じゃない。他の皆も心配している」
「え? わたし、発光していたってことですか?」
光に包まれていた自覚はある。けれど、ずっと自分自身が発光していたなんて……。
普通の人間は発光しないわ。
「でも、身体に悪い影響はなさそうです。むしろ、今までよりも強い力が使えると思います。クリス様もですよね? 以前と違う力をほんのり感じます」
「あぁ、私もリリアーナほどではないが光に包まれたようだ。力を流すのを止めたらすぐに収まったけどね」
もしかして、精霊の力なの? 一度目の人生でわたしの力を奪いすぎてしまったと言っていた。返してくれそうとしたのかもしれないわ。もしくは広く土地を癒やすために力を貸してくれたのかも。
「……この土地の精霊の力かもしれません」
「そう考える方が自然だろうね……」
早くこの土地と繋がりたい。不思議とそんな気持ちだ。
わたしを呼んでいるわ。
「フィオナ、待つんだ!」
遠くでクリストファー様が何か言っているような気がする。けれど、そんなことはどうでも良かった。
わたしが一度目の人生で命を落とした場所だ。悲しいような懐かしいような不思議な感情がわたしの中で膨らんでいく。
わたしは地面に手を当て力を流し始める。土地と繋がる感覚がした。繋がったと思った瞬間からずるりと身体から力が抜けていく。
「フィオナ!」
力がわたしから流れていき、土地に移動していくのがわかる。
意識がどんどん遠くなってきた。
懐かしい感覚だわ。あぁ、もしかして、今回も失敗してしまったのかしら。
……胸元がなんだか温かい。そう思った瞬間にわたしの中の力が強くなる。これまでに感じたことのない力の流れを感じ、自分の身体から力が溢れてきた。
「フィオナ、フィオナ! 大丈夫か?」
クリストファー様がわたしの身体を必死に揺らしている。
「クリストファー様?」
目の前にはほっとした表情のクリストファー様だ。
「良かった。気がついたんだね」
「わたし……どうかしていましたか?」
「どうしたも何も私の声が全く聞こえていないようだったよ。止めたのにも関わらず癒やし始めてしまうし……。しかも、思い切り力を流していただろう?」
「あ、あぁ、はい。なんだか早く力を流して繋がらないといけないような気がして……」
「意識を失ったかと思ったらものすごい光に包まれていたよ」
「光に?」
「あぁ、こんなことになるとは思わなかった。どこかおかしなところはない?」
おかしなところはない。むしろこれまでにないくらい身体に力が満ちているような気がする。
「おかしいところはなく、むしろ調子が良いくらいです。何というか力が強くなったような……」
「動けるようであれば、一旦馬車に戻ろう」
そう言ってクリストファー様はわたしを抱き上げた。
「ま、待ってください。自分で歩けます」
「却下だ」
は、恥ずかしすぎる……!
抵抗もむなしくわたしはお姫様だっこの状態で馬車まで運ばれてしまった。
もちろん、わたしは必死に抵抗したけれど、受け入れてもらうことはできなかった。
クリストファー様は今も心配そうな顔をしてわたしの手を握っている。
「わたしは何ともありません。大丈夫です。それよりも土地がどうなったか心配なのですが……」
「本当に? 土地は回復しているようだから安心して。リリアーナが癒やしを始めて私も慌てて力を流したんだが、不思議なことに私も力が満ちている感じだ。力を消費したはずなのに回復している。なのにちゃんと土地は回復しているし、こんなことは初めてだよ」
クリストファー様も何か力を感じているらしい。
「わたしもこんなことは初めてです。力を戻されたような感じで、なんだかわたしの器も大きくなったような……」
「話は良いから休んで。今日はもう戻ろう。土地もじゅうぶん回復したようだしね。何よりリリアーナが心配だ」
「わたしは大丈夫なのですが……」
「いや、普通じゃないよ」
「そんなことは……」
反論しようとしたが、身体からふわっと力が抜けていく。
***
「……あれ……?」
どうやら、わたしは意識を失っていたらしい。気がつくと滞在している家のベッドに横たわっていた。
「リリアーナ、目が覚めたんだね」
「クリス様?」
「心配したよ。何か食べられそうかい? スープを用意させてあるよ」
「今はちょっと……」
「では、飲み物だけでも飲んで欲しい」
「わかりました」
クリストファー様が心配するのでわたしはジュースを飲むことにした。オレンジを搾ったものでさっぱりとして飲みやすい。全身に染み渡る感じだ。
体は水分を欲してらしく、あっという間に飲み干してしまった。生き返った心地だ。そんなわたしの様子を見てクリストファー様がほっとした顔をする。
「ありがとうございます。おいしかったです。わたし、寝てしまっていたんですね」
「本当に無事で良かったよ」
「そんなに心配するようなことはないと思うのですが……」
「心配するさ! 君、自覚はないかもしれないが、ずっと光っていたんだよ? 戻ってきてもしばらくほんのり光っていたんだ。神秘的てとても綺麗だったけれど、どう考えても普通じゃない。他の皆も心配している」
「え? わたし、発光していたってことですか?」
光に包まれていた自覚はある。けれど、ずっと自分自身が発光していたなんて……。
普通の人間は発光しないわ。
「でも、身体に悪い影響はなさそうです。むしろ、今までよりも強い力が使えると思います。クリス様もですよね? 以前と違う力をほんのり感じます」
「あぁ、私もリリアーナほどではないが光に包まれたようだ。力を流すのを止めたらすぐに収まったけどね」
もしかして、精霊の力なの? 一度目の人生でわたしの力を奪いすぎてしまったと言っていた。返してくれそうとしたのかもしれないわ。もしくは広く土地を癒やすために力を貸してくれたのかも。
「……この土地の精霊の力かもしれません」
「そう考える方が自然だろうね……」
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