聖女じゃないからと婚約破棄されましたが計画通りです。これからあなたの領地をいただきにいきますね。

和泉 凪紗

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23.ジルベルトの誤算と企み(ジルベルト視点)

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 急に国王陛下に呼び出しを受けた。マリーベルとの婚約のことだろうか。リリアーナとの婚約は元々前国王陛下の口添えがあってのものだった。確かに勝手にリリアーナとの婚約を破棄して、マリーベルと婚約したのはまずかったかもしれない。
 マリーベルは母親は大賛成で父親も納得していると言っていたから問題ないと思っていた。マリーベルもこちらの家のことは任せてと言っていたというのに。
 領地を立て直すための婚約だったのだからリリアーナとの婚約はいずれ解消になっていたはずだ。問題ない。
 そう自分に言い聞かせていてもどうしてか不安がよぎる。

「婚約破棄のことは置いておいても、領地のことについては何か言われるだろうな……。また、書類の準備を命じておかないと。せっかくの謁見の機会だ。ただ叱責を受けるだけではもったいない。しっかりと窮状を訴えて追加の支援を嘆願するか」



***

「支援に対する返済も含めてジルベルトは領主の役目を果たしなさい。駄目だった場合はクリストファーが新領主だ。枯れた土地の領主となるのは大変だがそれも王族の役目だ。クリストファーもよいな」

 嫌な予感は的中した。せっかくルーンの娘と結婚するというのに、領主を降ろされる期限を切られてしまった。追加の支援を嘆願するどころではなかった。

  くそっ! どうしてこんなことになったんだ。
 よりによってクリストファー殿下が新領主だって? 冗談じゃない。せっかく領主になったんだ。ようやく、自分の思うようにやれるようになってきたというのに。この地位を奪われてたまるか。
 父上の年齢的にはまだ領主を交代する必要はなかった。だが、カレンベルク家は聖女を迎える必要がある。宰相の娘のなら聖女になれるだろうし、力の強さも期待出来る。その為、年齢的に釣り合う私が早めに領主になったのだ。まぁ、両親共に力が強くなかったのもあるのだが……。
 それにしてもリリアーナは本当に期待外れだった。おかげで計画が台無しだ。
 ルーンの娘を二人確保する。それが私の計画だった。
 予定ではリリアーナが聖女になり領地を回復させる。その間に私の好みである方のマリーベルに周辺の土地を癒やさせながら跡継ぎを作る。
 マリーベルは昔から私に夢中だ。リリアーナも土地と契約してしまえばそう簡単に離婚はしないだろう。リリアーナに子どもができた場合は力の強い方を跡継ぎにすれば良い。力を持った人間が増えるのは大歓迎だ。何故かカレンベルク家では力がどんどん失われていってしまっている。
 それなのにリリアーナは無能力者だった。まぁ、まだマリーベルがいるから問題はないが……。マリーベルは力を発現させていはいるものの、期待するほどではない。数でカバーしたいと思っていた。

 それにしても宰相も宰相だ。私が娘と結婚するというのにもっと充分な支援をしても良いではないか。リリアーナが無能力者であった責任を取ってもらいたいくらいなのに。
 しかも、慰謝料を支払えだと? あんな女に支払う金はない。

 それにしても、クリストファー殿下に領地に来られるのは困る。色々と知られてしまっては困ることがたくさんあるのだ。それに、万が一、領地を奪われてしまったら? 聖女が必要だとマリーベルも奪われてしまう可能性もある。
 仮に領主の座を降ろされた場合、マリーベルがいなくては別の土地であっても返り咲くのは難しくなるだろう。期待した力でないといっても色々と使い道はあるのだ。領主でなくてもマリーベルがいればそれなりの地位に就けるはずだ。
 だが、なんとしてでも領主の座を降ろされる訳にはいかない。せっかく築き上げてきた我が家の財産も没収されてしまう。


 待てよ? もし、不慮の事故でクリストファー殿下が命を落としてしまったら? 我が領地は『偶然にも』色々なトラブルにまみれている。視察中に不幸な事故が起こってしまうこともあるだろう。不慮の事故なら仕方がない。クリストファー殿下がいなくなれば新しい領主などすぐに用意はできないはずだ。
 なんなら、ついでにクリストファー殿下に同行する宰相が用意した人物を捕獲してもいい。宰相が推薦する人物なら一定以上の癒やしの力を持っているはずだ。上手く使えば土地を回復させるのに役立つかもしれない。
 加えて、クリストファー殿下たちが癒やしの力を使ったとしても消えてしまえば支払いもうやむやになるだろう。荒れた土地を放置するこなんてできないはずだから丁度良い。


 王族だからと私の領地を奪って良いはずがない。ただ、王族として生まれただけの人間だ。
 クリストファー殿下は視察の途中で不幸な事故にあってしまう。不幸は平等に訪れるのだ。
 我ながら素晴らしいアイディアではないか。

「ははは……ふははは……」

 私は笑いをこらえることができなかった。
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