22 / 42
22.ジルベルトの主張②
しおりを挟む
国王陛下からの慰謝料についての言及にジルベルトは驚いている。
「当然だろう?」
「ですが、それはリリアーナに力が無かったからで……」
「それとこれは話が別だ。王家が整えた婚約だというのに、それを勝手に破棄したのだ。当然だ。浮気をしてマリーベルに乗り換えたのはジルベルトの方ではないか。普通の婚約でも慰謝料は発生すると思うが?」
「い、いえ。むしろ私たちの方が慰謝料をもらいたいくらいです。契約不履行なのですから」
「ほぅ。では、王家の判断が間違っていたと?」
「め、滅相もありません……。ただ、我が領地はとても苦しい状態です。慰謝料を支払うのはとても……」
「手順を踏めば良かっただけなのではないか? 聞くところによると、以前よりリリアーナは婚約を辞退したいと言っていたそうだ。どちらの言い分が正しいのだ?」
「リ、リリアーナは家族にはそのように言っていたのかもしれませんが、私には父親が婚約を辞退すると申し出ても受け入れないでくれと言っていました。力が発現するまで待っていて欲しいと」
そんなこと言ったことはありませんが……。
そもそも、王命と言ってもいいほどの婚約を勝手に破棄したことが問題だとわからないのかしら。
婚約解消したいならしっかりと根回ししてからすれば良いのに。
ジルベルトは本当に勝手なことを言っている。
「それは本当か?」
「はい。本当のことでございます」
「宰相はリリアーナから何か聞いているか?」
「確かにリリアーナは過去に婚約を辞退したいと言っておりました。ジルベルト殿にも婚約継続の意思を確認したこともあります。が、リリアーナの本心まではわかりません」
「ふむ。これでは、リリアーナの言い分も聞かないと判断できないな」
「特に聞く必要はないと思いますよ? 自分に都合の良いように言うでしょうから。それに、婚約が家同士の話なら、リリアーナとは婚約解消でもマリーベルと結婚するなら問題ないではありませんか」
ジルベルトはニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべている。
自分の都合の良いように言っているのは自分じゃない!
「それはお前が決めることではない!」
国王陛下はピシャリとジルベルトの言葉を遮った。
「も、申し訳ありません」
「この件については保留としよう。しかし、王家への謝罪がないのは問題だ。これについては別途協議し、処罰を通告する。とにかくジルベルトは領地の問題を解決しなさい。以上だ」
やはり、自ら領主の座を降りることはなかった。それどころか勝手な言い分を述べていた。
しかし、これで国王陛下からジルベルトに期限が決められた。これでジルベルトたちは急いで領地を癒やし始め、マリーベルとの結婚と契約を急ぐだろう。
それにしても本当にひどい人たちだ。領地が荒れているのは全部わたしのせいらしい。一度目の人生でもわたしがジルベルトの領地に行く前にはすでにひどく枯れていた。
今だってここ数年で枯れたものではない。自分たちがしっかりと管理してこなかったからだというのに……。
わたしに力が無いから癒やせないというなら、微力でも領主一族で癒やす努力をしてくれば良かったのだ。
それに、そもそもわたしは婚約者の座にしがみついてなどいない。ずっと円満に婚約破棄されるように心を砕いてきた。
何度も自分では力が無いから婚約を解消して欲しいとお願いしてきた。それでも、聖女としての力が発現することを期待して婚約を解消しなかったのはジルベルトだ。どうしてあんなに頑なに婚約解消を拒んだのかはわからない。
「リリアーナ嬢、本当に申し訳なかった。あのような男を領主にしているのは私たちの落ち度だ。そんな男との結婚を強いるような真似をしていたとは……」
国王陛下に謝られてしまった。
思うところがないわけではないけれど、あの領地をなんとかしようとはしていたのよね……。
領主一族を代えるのは簡単なことではないもの。
強い力を持った人を大量に動かすのは難しい。
思えば、協力者もなしにジルベルトから領地を奪うなんて無謀だったわ。
「い、いえ。このようにご協力いただけて感謝しております」
わたしはジルベルトに対して怒りを通り越して呆れてしまったが、この場にいる人間は怒り心頭のようだ。わたしは一度目の人生ですでにジルベルトたちのクズっぷりを嫌というほど見たのでそんなものかと思えた。
だが、他の人は違う。ジルベルトたちがここまでとは思わなかったらしい。期限を設けずさっさと領主から降ろしてしまえばいいとの意見もあったが、徹底的にやってしまえと意見はまとまった。
「国のためとはいえあんな男と一度でも結婚させた自分が許せない。今回ももっと早く婚約破棄させておけばよかった……。やつらには最上級の苦しみを……」
お父様が激しく後悔している。
「いえ、今回はまだ結婚していないのですが……」
「そういう問題ではない! すでに一度経験しているではないか。リリアーナは前から婚約解消したいと言っていたというのに……」
「リリアーナは何も悪くないからね。リリアーナに保険をかけていたのはジルベルトのほうだろうに……。婚約解消する前からマリーベルと親密になっていただろう? 自分の浮気は棚に上げて、慰謝料の支払いまで渋ろうとする。本当にクズだな……」
二人とも感情がだだ漏れである。いろいろと怖いことを言っている。この二人なら徹底的にやるだろう。わたしにはもう止められない。
その後、焦ったジルベルトは一日でも早く癒やしを行おうとマリーベルを呼び寄せた。契約はまだでも近場から癒やしを行わせるつもりらしい。
マリーベルは嬉しそうに家から出て行った。お母様もマリーベルを助けるためについて行っている。マリーベルが癒やしを行っている最中に結婚式の準備を進めるらしい。どれだけマリーベルがかわいいのか……。
きっと、わたしにはしてくれないだろうな……。実際に一度目の人生ではしてもらえなかった。
そう思うと少しさみしい気持ちはあるが、こちらとしては好都合だ。二人がいない間に色々な準備が進められる。わたしもクリストファー様との結婚準備を進めなくてはならない。
不正のネタもしっかり集めているようだ。
ジルベルトたちから領地を奪う準備は進んでいる。
「当然だろう?」
「ですが、それはリリアーナに力が無かったからで……」
「それとこれは話が別だ。王家が整えた婚約だというのに、それを勝手に破棄したのだ。当然だ。浮気をしてマリーベルに乗り換えたのはジルベルトの方ではないか。普通の婚約でも慰謝料は発生すると思うが?」
「い、いえ。むしろ私たちの方が慰謝料をもらいたいくらいです。契約不履行なのですから」
「ほぅ。では、王家の判断が間違っていたと?」
「め、滅相もありません……。ただ、我が領地はとても苦しい状態です。慰謝料を支払うのはとても……」
「手順を踏めば良かっただけなのではないか? 聞くところによると、以前よりリリアーナは婚約を辞退したいと言っていたそうだ。どちらの言い分が正しいのだ?」
「リ、リリアーナは家族にはそのように言っていたのかもしれませんが、私には父親が婚約を辞退すると申し出ても受け入れないでくれと言っていました。力が発現するまで待っていて欲しいと」
そんなこと言ったことはありませんが……。
そもそも、王命と言ってもいいほどの婚約を勝手に破棄したことが問題だとわからないのかしら。
婚約解消したいならしっかりと根回ししてからすれば良いのに。
ジルベルトは本当に勝手なことを言っている。
「それは本当か?」
「はい。本当のことでございます」
「宰相はリリアーナから何か聞いているか?」
「確かにリリアーナは過去に婚約を辞退したいと言っておりました。ジルベルト殿にも婚約継続の意思を確認したこともあります。が、リリアーナの本心まではわかりません」
「ふむ。これでは、リリアーナの言い分も聞かないと判断できないな」
「特に聞く必要はないと思いますよ? 自分に都合の良いように言うでしょうから。それに、婚約が家同士の話なら、リリアーナとは婚約解消でもマリーベルと結婚するなら問題ないではありませんか」
ジルベルトはニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべている。
自分の都合の良いように言っているのは自分じゃない!
「それはお前が決めることではない!」
国王陛下はピシャリとジルベルトの言葉を遮った。
「も、申し訳ありません」
「この件については保留としよう。しかし、王家への謝罪がないのは問題だ。これについては別途協議し、処罰を通告する。とにかくジルベルトは領地の問題を解決しなさい。以上だ」
やはり、自ら領主の座を降りることはなかった。それどころか勝手な言い分を述べていた。
しかし、これで国王陛下からジルベルトに期限が決められた。これでジルベルトたちは急いで領地を癒やし始め、マリーベルとの結婚と契約を急ぐだろう。
それにしても本当にひどい人たちだ。領地が荒れているのは全部わたしのせいらしい。一度目の人生でもわたしがジルベルトの領地に行く前にはすでにひどく枯れていた。
今だってここ数年で枯れたものではない。自分たちがしっかりと管理してこなかったからだというのに……。
わたしに力が無いから癒やせないというなら、微力でも領主一族で癒やす努力をしてくれば良かったのだ。
それに、そもそもわたしは婚約者の座にしがみついてなどいない。ずっと円満に婚約破棄されるように心を砕いてきた。
何度も自分では力が無いから婚約を解消して欲しいとお願いしてきた。それでも、聖女としての力が発現することを期待して婚約を解消しなかったのはジルベルトだ。どうしてあんなに頑なに婚約解消を拒んだのかはわからない。
「リリアーナ嬢、本当に申し訳なかった。あのような男を領主にしているのは私たちの落ち度だ。そんな男との結婚を強いるような真似をしていたとは……」
国王陛下に謝られてしまった。
思うところがないわけではないけれど、あの領地をなんとかしようとはしていたのよね……。
領主一族を代えるのは簡単なことではないもの。
強い力を持った人を大量に動かすのは難しい。
思えば、協力者もなしにジルベルトから領地を奪うなんて無謀だったわ。
「い、いえ。このようにご協力いただけて感謝しております」
わたしはジルベルトに対して怒りを通り越して呆れてしまったが、この場にいる人間は怒り心頭のようだ。わたしは一度目の人生ですでにジルベルトたちのクズっぷりを嫌というほど見たのでそんなものかと思えた。
だが、他の人は違う。ジルベルトたちがここまでとは思わなかったらしい。期限を設けずさっさと領主から降ろしてしまえばいいとの意見もあったが、徹底的にやってしまえと意見はまとまった。
「国のためとはいえあんな男と一度でも結婚させた自分が許せない。今回ももっと早く婚約破棄させておけばよかった……。やつらには最上級の苦しみを……」
お父様が激しく後悔している。
「いえ、今回はまだ結婚していないのですが……」
「そういう問題ではない! すでに一度経験しているではないか。リリアーナは前から婚約解消したいと言っていたというのに……」
「リリアーナは何も悪くないからね。リリアーナに保険をかけていたのはジルベルトのほうだろうに……。婚約解消する前からマリーベルと親密になっていただろう? 自分の浮気は棚に上げて、慰謝料の支払いまで渋ろうとする。本当にクズだな……」
二人とも感情がだだ漏れである。いろいろと怖いことを言っている。この二人なら徹底的にやるだろう。わたしにはもう止められない。
その後、焦ったジルベルトは一日でも早く癒やしを行おうとマリーベルを呼び寄せた。契約はまだでも近場から癒やしを行わせるつもりらしい。
マリーベルは嬉しそうに家から出て行った。お母様もマリーベルを助けるためについて行っている。マリーベルが癒やしを行っている最中に結婚式の準備を進めるらしい。どれだけマリーベルがかわいいのか……。
きっと、わたしにはしてくれないだろうな……。実際に一度目の人生ではしてもらえなかった。
そう思うと少しさみしい気持ちはあるが、こちらとしては好都合だ。二人がいない間に色々な準備が進められる。わたしもクリストファー様との結婚準備を進めなくてはならない。
不正のネタもしっかり集めているようだ。
ジルベルトたちから領地を奪う準備は進んでいる。
65
お気に入りに追加
816
あなたにおすすめの小説
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる