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その後、リズベットさんが学園を去る前、話す機会を得ることができました。
正直、嫌がらせをされなければわたくしはリズベットさんが羨ましかったのです。
リズベットさんはわたくしを睨んでいます。
「エステラ様はどこまでもわたしの邪魔をするんですね。エステラ様のせいで王太子妃、未来の王妃になることができなかったわ」
「邪魔をしたことはなかったと思うのですが」
「ほら、そうやって傲慢な態度。自分は何も悪くないですって?」
「何が悪かったのか言っていただかなくてはわかりません。わたくしはリズベットさんと特に接点はありませんでしたし」
「恵まれた家に生まれて、レオン様の婚約者。それなのに、自分は下々には興味が無いと上から目線。利を配ろうともしない。それに、あなたのせいでレオン様は王族ではなくなってしまうのよ」
確かに元婚約者にはあまり興味はありませんでしたが……。それに利を配れと言われましてもわたくしには何の力もありません。わたくしが元婚約者の廃嫡を願ったわけでもありません。
「確かにわたくしは家族に恵まれ、家も裕福と言えるかもしれません。その代わり色々なことに縛られてます。婚約だってその一つです。わたくしに選択権はありません。産まれた時から自由はありませんでした。身につけるものも、付き合う周囲の人間も全て回りが決めてしまいます。利を配れと言われましても、わたくしには何の力もないのです」
「裕福な家に生まれる方が良いじゃない。レオン様の婚約者だなんて誰もが憧れる立場だわ」
「わたくしは代わってもらえるなら誰かに代わって欲しかったです。結婚は仕方がないにしても恋愛くらいはしてみたかったんですよ。ですから、わたくしはリズベットさんを羨ましく思っていました」
「わたしが羨ましい……?」
「えぇ。わたくしから見て、いつもお二人は楽しそうに過ごしていました。わたくしもお二人のようにスゴしてみたかったのです。昔からわたくしがどんなに頑張ってもリズベットさんのように接してはくれませんでしたから。それどころか婚約者に悪役に仕立て上げ退学、婚約破棄をされました」
「それは……」
そういう風に仕向けたのはリズベットさんだからか少し気まずそうな顔をしています。
「好きな進路を選ぶことも出来ず、仕事に就くことも許されません。本当は研究者になりたかったんです」
「…………」
「ですから、自由をくれたリズベットさんには感謝しています」
「えっ、感謝?」
「えぇ、おかげで留学が許され、結果的に婚約解消もできました。義務とはいえ、愛のない結婚はつらいと思いますから。わたくしにできることはなにもありませんが、リズベットさんには幸せになって欲しいと思っています。わたくしからは学園や両親にリズベットさんを罰して欲しいと言うようなことはありません」
「どうして?」
「それほどまでにレオン様と結婚したかったのでしょう? もう少し穏便に話を進めていただければ良かったとは思いますが。レオン様の暴走もあったのでしょうね」
元婚約者とは長年の付き合いなのでなんとなく想像できます。
***
あれから、元婚約者とリズベットさんは退学になり、取り巻きたちも停学処分となりました。
リズベットさんからは別の学園に入ったと手紙が届きました。どうか頑張ってやり直して欲しいと思います。
元婚約者は廃嫡され、城から出されたそうです。一代限りの爵位を与えられるそうですが、領地もないので今までのように生活するのは難しいでしょう。
婚約破棄の賠償に関してはお父様たちで話し合うことになりました。
元々、親同士が決めた結婚でわたくしには特に希望はありませんから。
国王陛下からはレオン様の代わりに第二王子、今はレオン様が廃嫡されたので第一王子と婚約しないかと打診がありました。ただ、少し年下なのと、レオン様のことがあったので強くは言えないそうです。
もう一人、留学先で婚約の打診がありましたが、こちらも保留しています。せっかくなのでもう少し自由を満喫したいのです。周囲は国外に出て欲しくないと渋っています。
研究者になるのは難しいと思いますが、それでも学びにいけることが楽しみで仕方ありません。
留学先では憧れの恋愛もできるかしら。自分で自由にお友達もつくってみたいわ。
わたくしにはやってみたいことがたくさんあります。これから先の人生がとても楽しみです。
正直、嫌がらせをされなければわたくしはリズベットさんが羨ましかったのです。
リズベットさんはわたくしを睨んでいます。
「エステラ様はどこまでもわたしの邪魔をするんですね。エステラ様のせいで王太子妃、未来の王妃になることができなかったわ」
「邪魔をしたことはなかったと思うのですが」
「ほら、そうやって傲慢な態度。自分は何も悪くないですって?」
「何が悪かったのか言っていただかなくてはわかりません。わたくしはリズベットさんと特に接点はありませんでしたし」
「恵まれた家に生まれて、レオン様の婚約者。それなのに、自分は下々には興味が無いと上から目線。利を配ろうともしない。それに、あなたのせいでレオン様は王族ではなくなってしまうのよ」
確かに元婚約者にはあまり興味はありませんでしたが……。それに利を配れと言われましてもわたくしには何の力もありません。わたくしが元婚約者の廃嫡を願ったわけでもありません。
「確かにわたくしは家族に恵まれ、家も裕福と言えるかもしれません。その代わり色々なことに縛られてます。婚約だってその一つです。わたくしに選択権はありません。産まれた時から自由はありませんでした。身につけるものも、付き合う周囲の人間も全て回りが決めてしまいます。利を配れと言われましても、わたくしには何の力もないのです」
「裕福な家に生まれる方が良いじゃない。レオン様の婚約者だなんて誰もが憧れる立場だわ」
「わたくしは代わってもらえるなら誰かに代わって欲しかったです。結婚は仕方がないにしても恋愛くらいはしてみたかったんですよ。ですから、わたくしはリズベットさんを羨ましく思っていました」
「わたしが羨ましい……?」
「えぇ。わたくしから見て、いつもお二人は楽しそうに過ごしていました。わたくしもお二人のようにスゴしてみたかったのです。昔からわたくしがどんなに頑張ってもリズベットさんのように接してはくれませんでしたから。それどころか婚約者に悪役に仕立て上げ退学、婚約破棄をされました」
「それは……」
そういう風に仕向けたのはリズベットさんだからか少し気まずそうな顔をしています。
「好きな進路を選ぶことも出来ず、仕事に就くことも許されません。本当は研究者になりたかったんです」
「…………」
「ですから、自由をくれたリズベットさんには感謝しています」
「えっ、感謝?」
「えぇ、おかげで留学が許され、結果的に婚約解消もできました。義務とはいえ、愛のない結婚はつらいと思いますから。わたくしにできることはなにもありませんが、リズベットさんには幸せになって欲しいと思っています。わたくしからは学園や両親にリズベットさんを罰して欲しいと言うようなことはありません」
「どうして?」
「それほどまでにレオン様と結婚したかったのでしょう? もう少し穏便に話を進めていただければ良かったとは思いますが。レオン様の暴走もあったのでしょうね」
元婚約者とは長年の付き合いなのでなんとなく想像できます。
***
あれから、元婚約者とリズベットさんは退学になり、取り巻きたちも停学処分となりました。
リズベットさんからは別の学園に入ったと手紙が届きました。どうか頑張ってやり直して欲しいと思います。
元婚約者は廃嫡され、城から出されたそうです。一代限りの爵位を与えられるそうですが、領地もないので今までのように生活するのは難しいでしょう。
婚約破棄の賠償に関してはお父様たちで話し合うことになりました。
元々、親同士が決めた結婚でわたくしには特に希望はありませんから。
国王陛下からはレオン様の代わりに第二王子、今はレオン様が廃嫡されたので第一王子と婚約しないかと打診がありました。ただ、少し年下なのと、レオン様のことがあったので強くは言えないそうです。
もう一人、留学先で婚約の打診がありましたが、こちらも保留しています。せっかくなのでもう少し自由を満喫したいのです。周囲は国外に出て欲しくないと渋っています。
研究者になるのは難しいと思いますが、それでも学びにいけることが楽しみで仕方ありません。
留学先では憧れの恋愛もできるかしら。自分で自由にお友達もつくってみたいわ。
わたくしにはやってみたいことがたくさんあります。これから先の人生がとても楽しみです。
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