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もっとはっきり言わないとわからないのかしら。
「国王陛下に決められた結婚なのです。わたくしには嫉妬する必要がありません。黙っていれば自動的に結婚するのですから」
「なんと傲慢な」
そんなことを言われましても……。文句があるなら国王陛下に仰ってください。わたくしが望んだ結婚ではございません。
そもそも、そちらももう少し婚約者に歩み寄る努力が必要なのでは?
わたくしは色々と努力してきましたよ。そのたびに煙たがられましたけど。
わたくしは色々な言葉を飲み込んで話を続けます。
「結婚するまではある程度の火遊びも許容するつもりでした。色々な重圧もあるでしょうし、結婚後は国民の模範となるようにとさらに自由がなくなってしまいますから。ですが、これ以上は無駄のようですね。さらに申し上げますと、わたくしと殿下はすでに婚約解消の話が進んでおります。ご安心下さい」
「そ、そうか。わかっているなら良いんだ。お前のような女はいくら身分が高かろうがそう簡単には結婚相手は決まらないだろうな」
「そうですね。わたくしの結婚相手はしばらく決まらないと思います」
婚約解消の手続きが進んでいるという話に振り上げた拳の行き場がないという様子の元婚約者。
次の婚約者が簡単には決まらないだろうと言うわたくしの返答に満足そうですね。決まらないのはわたくしがリズベットさんをいじめる悪役令嬢だからではなく、色々な政治的なしがらみがあるからなのですが。
けれど、これだけは言っておきたい。
「わたくしとしても殿下から婚約破棄を仰っていただけて嬉しく思っています。わたくしの方からは解消を申し出ることができませんから」
「負け惜しみを……」
「あと、ついでに一言申し上げると、退学処分を決める権限は殿下にございません」
「なんだと!」
「権限があるのは学園長、もしくは理事の方々でしょうね」
「なら問題ないだろう」
「? 殿下は関係ありませんよね?」
「私は王族だぞ」
「存じております。それが何か?」
「この学園は国が始めたもの。父上は理事のメンバーだ」
「でしたら、理事長はわたくしの父ですが。殿下に権限があるというのなら、わたくしにも同じような権限があるということになりますね。それに陛下はこのことをご存知なのですか?」
国王陛下ならこのようなことを仰ったりはしないはず。それにしても、どうして一生徒に退学の決定権があると思えるのかしら。
「私は次期国王だぞ!」
「……はぁ」
「なんだその態度は!」
「そもそも、この学園は身分関係なく、この国の貴族、一国民として必要なこと学ぶ場です。そのように身分をひけらかしたり、威圧的になるものではありません」
「なっ……生意気だぞ!」
どうしてこのような方に育ってしまったの。わたくしにもいけないところがあったのかしら。でも、もうこれでわたくしの役目も終わり。殿下の方から婚約破棄を宣言してくれたのだもの。
わたくしはできるものなら婚約解消したかった。我慢の限界でお願いしたけれど、殿下の方から望まない限りはできないと言われてしまいました。代わりにせめてもの慰めとして一つだけ許されたことがあるのです。
「ですが、退学処分に関係なくわたくしは近々この学園を去ることになっております。こちらもご安心下さい」
「……ああ。これでこの学園も平和になるな」
勢いよく怒ったりしぼんだり忙しい人だわ。
でも、これで学園は平和になるでしょうね。殿下の態度は色々と問題でしたもの。
「そうですわね。殿下もこの学園を去ることになるので平和で静かになりますね」
「……なんだと?」
わたくしの元婚約者は不思議そうな顔をします。相変わらず、本当に鈍い方。
「国王陛下に決められた結婚なのです。わたくしには嫉妬する必要がありません。黙っていれば自動的に結婚するのですから」
「なんと傲慢な」
そんなことを言われましても……。文句があるなら国王陛下に仰ってください。わたくしが望んだ結婚ではございません。
そもそも、そちらももう少し婚約者に歩み寄る努力が必要なのでは?
わたくしは色々と努力してきましたよ。そのたびに煙たがられましたけど。
わたくしは色々な言葉を飲み込んで話を続けます。
「結婚するまではある程度の火遊びも許容するつもりでした。色々な重圧もあるでしょうし、結婚後は国民の模範となるようにとさらに自由がなくなってしまいますから。ですが、これ以上は無駄のようですね。さらに申し上げますと、わたくしと殿下はすでに婚約解消の話が進んでおります。ご安心下さい」
「そ、そうか。わかっているなら良いんだ。お前のような女はいくら身分が高かろうがそう簡単には結婚相手は決まらないだろうな」
「そうですね。わたくしの結婚相手はしばらく決まらないと思います」
婚約解消の手続きが進んでいるという話に振り上げた拳の行き場がないという様子の元婚約者。
次の婚約者が簡単には決まらないだろうと言うわたくしの返答に満足そうですね。決まらないのはわたくしがリズベットさんをいじめる悪役令嬢だからではなく、色々な政治的なしがらみがあるからなのですが。
けれど、これだけは言っておきたい。
「わたくしとしても殿下から婚約破棄を仰っていただけて嬉しく思っています。わたくしの方からは解消を申し出ることができませんから」
「負け惜しみを……」
「あと、ついでに一言申し上げると、退学処分を決める権限は殿下にございません」
「なんだと!」
「権限があるのは学園長、もしくは理事の方々でしょうね」
「なら問題ないだろう」
「? 殿下は関係ありませんよね?」
「私は王族だぞ」
「存じております。それが何か?」
「この学園は国が始めたもの。父上は理事のメンバーだ」
「でしたら、理事長はわたくしの父ですが。殿下に権限があるというのなら、わたくしにも同じような権限があるということになりますね。それに陛下はこのことをご存知なのですか?」
国王陛下ならこのようなことを仰ったりはしないはず。それにしても、どうして一生徒に退学の決定権があると思えるのかしら。
「私は次期国王だぞ!」
「……はぁ」
「なんだその態度は!」
「そもそも、この学園は身分関係なく、この国の貴族、一国民として必要なこと学ぶ場です。そのように身分をひけらかしたり、威圧的になるものではありません」
「なっ……生意気だぞ!」
どうしてこのような方に育ってしまったの。わたくしにもいけないところがあったのかしら。でも、もうこれでわたくしの役目も終わり。殿下の方から婚約破棄を宣言してくれたのだもの。
わたくしはできるものなら婚約解消したかった。我慢の限界でお願いしたけれど、殿下の方から望まない限りはできないと言われてしまいました。代わりにせめてもの慰めとして一つだけ許されたことがあるのです。
「ですが、退学処分に関係なくわたくしは近々この学園を去ることになっております。こちらもご安心下さい」
「……ああ。これでこの学園も平和になるな」
勢いよく怒ったりしぼんだり忙しい人だわ。
でも、これで学園は平和になるでしょうね。殿下の態度は色々と問題でしたもの。
「そうですわね。殿下もこの学園を去ることになるので平和で静かになりますね」
「……なんだと?」
わたくしの元婚約者は不思議そうな顔をします。相変わらず、本当に鈍い方。
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