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 その後、マリアの結婚は破談になったらしい。元々、アルフレッドは我が家のお金が目当てだったのだ。アルフレッドの家は事業で大きな損失ができてしまったらしい。
 私がいた家はお祖父さまの支援がある事業やお母様の残した商会のおかげで裕福だった。アルフレッドは多額の持参金や我が家の援助が得られれば私でもマリアでもどちらでも良かったのだ。できれば平民の母を持つ私より、異母妹のマリアの方が良かったのかもしれない。 
 そんな存在なのだからお金がなくなった家には用はないらしい。しかも、あの家はラッセル公爵とヘルムート様に睨まれている。普通の貴族なら関わり合いになりたくないだろう。
 私はお祖父さまの養子になった。お祖父さまとは血のつながりはあるし、隣国の公爵との縁組みも決まっている。公爵家にとっても利があるため、周囲には反対する者はいなかった。
 アルフレッドは私がお祖父さまの養子になると知った途端、再度婚約を持ちかけてきた。
 もちろん、断固お断りだし、お祖父さまが一蹴した。お金を持ってきてくれる相手を一生懸命探しているらしい。あんな人と結婚にならなくて本当に良かった。
 婚約者を妹に取り替えたのに、その妹にお金がないとわかると破談。姉にお金の匂いを嗅ぎつけると捨てた姉に再び婚約をせまる。そんな恥知らずな行いにアルフレッドはずいぶん評判を落としているようだ。
 
 お祖父さまの支援がなくなり、商会がなくなったあの家はすでに傾きかけているようだ。
 お母様の実家は平民だが、元々その辺の貴族より裕福な家だ。母方の親戚に縁を切られるとかなりのダメージがある。母や私への仕打ちなどから、元々、縁を切るタイミングを計っていたらしい。母方の親戚たちは皆、今回のことを喜んでくれた。
 あの家はもう貴族として維持していくのは難しいだろう。あれだけ平民の娘と私を馬鹿にしていた義母たちは平民になるしかない。
 父は何度か助けを求めにきたが断った。心が揺れなかったわけではない。それでもこれまでのことを思えば簡単に許すことはできなかった。


 だからあの時言ったのに。この家のためになるようにしてほしいと。母は父をとても愛していたし、あの家を守りたがっていたから……。母の残した日記には父との思い出がたくさん書かれていた。母が最期に残した言葉も『お父様の助けになって。私の分まで愛してあげて』だった。こんな人のどこが良かったのか私にはわからないが、母にとってはとても大切な人だったのだろう。
 我が家に多額の援助があったのもお祖父さまが母を大切に思っていたから。商会がうまくいっていたのも母や母の実家のおかげ。服飾関係で流行を作っていたのは私。でももう遅いです。私は幸せになります。
 でも、元家族には少しだけ感謝していますよ。特にマリアには。マリアのおかげでこの人と出会えたのだから。
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