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3.アイドルになるために頑張ります
3-11.
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それからは本当に怒濤の日々だった。
化粧品の店を早くオープンしたい気持ちはわたしよりお母様の方が強かった。それに引っ張られるように話がどんどん進んでいく。
スタッフの教育も徹底的に行った。お店では実際に美容部員にカウンセリングとメイクしてもらえるようにする。プロの手で化粧品の力を実感してもらいたい。
この世界にはない習慣だ。これだけでも他店とは十分に差別化できるだろう。
お母様とリネットと一緒に試作した宝石石けんも、もちろん商品として売り出す。宝石石けんはお母様がお友達に紹介して貴族の間ではちょっとしたブームになっているのだ。
予想以上に反応が良かった。お店でもきっと売れるはずだ。
きっとどこの世界でもキラキラしたものは好まれるのだと思う。
平民向けのものは工程を簡素化、サイズも小さくして価格を抑えた。作る際に出た小さな宝石石けんは、透明な石けんに入れて再利用している。再利用品でもかなりきれいだと思う。
今回はこれを小さな型で作ってオープン記念のノベルティにした。まずは商品の良さを知って欲しいし、珍しいもので購買意欲を刺激したい。
新しい店ができても入りづらいだろうからプレオープンで内覧会を行う予定だ。
内覧会では商品を売らない。商品と値段を見せるだけ。事前にどのような商品があってどれくらいの価格なのかわかれば、お店にも入りやすいだろう。
もちろん内覧会ではノベルティの石けんも紹介する。貴族の間で流行っている品だと。
わたしたちは入念に準備を行ってきた。きっとこの店は成功するはずだ。
売り上げも大事だけれど、わたしとしてはお化粧の楽しさを広めたい。
やっぱりきれいになったり、可愛くなるのは楽しいから。
そうして迎えたオープンの日。
今日のわたしは髪の色も瞳の色も変えて店に立っている。瞳の色はカラーコンタクトレンズのようなものを開発済みだ。これならレティシアとはばれないだろう。きれいになるための商品を売る店なのにぶさいくな化粧のままで店に立つわけにはいかない。
まぁ、子供のわたしが実際に接客するわけにはいかないのでこっそり見ているだけなんだけどね。
お父様もお母様も後で様子を見に来るそうだ。
内覧会は宣伝の甲斐もあってかなり多くの人が来ていた。反応も良かったと思う。人を集めてその場で希望者を募り、商品を使ったメイクをして見せたりもした。希望者がいなかったときのために用意した仕込みも不要なくらいだったし、デモンストレーションが終わった後にはどの商品を使ったのかメモを取っている人もいた。
それでもちゃんとお客様が来て購入してくれるかはわからない。
不安で昨日はあまり眠れなかった。
「お嬢様、大変です」
「どうしたの?」
わたしの正体を知っている店の責任者が慌てて駆け寄って来た。
何かトラブルだろうか。
「お店の外にお客様が……」
「まさか一人もいないの?」
「いえ、その逆で……。かなり大勢の人が並んでいるそうです」
「え?」
「このままではお店の中が大変なことになってしまいます」
丁寧な接客やカウンセリングを売りにしたいのに、人が多すぎて接客が雑なものになっては困る。
「まずは並んでいる人の列整理をお願い。近隣に迷惑をかけるわけにはいかないわ。その後は並んでいる人にカウンセリング希望か確認して。一人三十分で案内ね。予約制にして指定した時間に来てもらうようにしましょう。今日が駄目な場合は別な日を案内してね。お客様に怪我があっては大変だからお店の中に入れる人数を制限して。そうね。整理券があると良いわ。この時間に来てくださいという券を作ってお渡しして」
「はい」
「それでも入りきらない場合は別の日をご案内して。その人たちがゆったりお買い物できるように他の日のオープン時間を変更して対応してください。お待たせするお客様に失礼のないようにね」
店の責任者はわたしが出した指示を一生懸命メモを取っている。
「お釣りが足りなくなるかもしれないわ。追加で用意して。お会計できる場所も増やしましょう。もう少し人手があった方が良いわよね。……侯爵家でお手伝いできそうな人をだしてもらいましょう。リネット、お願いできる?」
「かしこまりました」
「手伝ってもらう人には主に人員整理などを行ってもらいます。皆さんは接客に集中してください。何か困ったことがあればすぐに報告・相談を」
まさか、こんなに人が集まるなんて……。
かなりの盛況でオープン初日を終えたことにわたしたちは驚くしかなかった。
化粧品の店を早くオープンしたい気持ちはわたしよりお母様の方が強かった。それに引っ張られるように話がどんどん進んでいく。
スタッフの教育も徹底的に行った。お店では実際に美容部員にカウンセリングとメイクしてもらえるようにする。プロの手で化粧品の力を実感してもらいたい。
この世界にはない習慣だ。これだけでも他店とは十分に差別化できるだろう。
お母様とリネットと一緒に試作した宝石石けんも、もちろん商品として売り出す。宝石石けんはお母様がお友達に紹介して貴族の間ではちょっとしたブームになっているのだ。
予想以上に反応が良かった。お店でもきっと売れるはずだ。
きっとどこの世界でもキラキラしたものは好まれるのだと思う。
平民向けのものは工程を簡素化、サイズも小さくして価格を抑えた。作る際に出た小さな宝石石けんは、透明な石けんに入れて再利用している。再利用品でもかなりきれいだと思う。
今回はこれを小さな型で作ってオープン記念のノベルティにした。まずは商品の良さを知って欲しいし、珍しいもので購買意欲を刺激したい。
新しい店ができても入りづらいだろうからプレオープンで内覧会を行う予定だ。
内覧会では商品を売らない。商品と値段を見せるだけ。事前にどのような商品があってどれくらいの価格なのかわかれば、お店にも入りやすいだろう。
もちろん内覧会ではノベルティの石けんも紹介する。貴族の間で流行っている品だと。
わたしたちは入念に準備を行ってきた。きっとこの店は成功するはずだ。
売り上げも大事だけれど、わたしとしてはお化粧の楽しさを広めたい。
やっぱりきれいになったり、可愛くなるのは楽しいから。
そうして迎えたオープンの日。
今日のわたしは髪の色も瞳の色も変えて店に立っている。瞳の色はカラーコンタクトレンズのようなものを開発済みだ。これならレティシアとはばれないだろう。きれいになるための商品を売る店なのにぶさいくな化粧のままで店に立つわけにはいかない。
まぁ、子供のわたしが実際に接客するわけにはいかないのでこっそり見ているだけなんだけどね。
お父様もお母様も後で様子を見に来るそうだ。
内覧会は宣伝の甲斐もあってかなり多くの人が来ていた。反応も良かったと思う。人を集めてその場で希望者を募り、商品を使ったメイクをして見せたりもした。希望者がいなかったときのために用意した仕込みも不要なくらいだったし、デモンストレーションが終わった後にはどの商品を使ったのかメモを取っている人もいた。
それでもちゃんとお客様が来て購入してくれるかはわからない。
不安で昨日はあまり眠れなかった。
「お嬢様、大変です」
「どうしたの?」
わたしの正体を知っている店の責任者が慌てて駆け寄って来た。
何かトラブルだろうか。
「お店の外にお客様が……」
「まさか一人もいないの?」
「いえ、その逆で……。かなり大勢の人が並んでいるそうです」
「え?」
「このままではお店の中が大変なことになってしまいます」
丁寧な接客やカウンセリングを売りにしたいのに、人が多すぎて接客が雑なものになっては困る。
「まずは並んでいる人の列整理をお願い。近隣に迷惑をかけるわけにはいかないわ。その後は並んでいる人にカウンセリング希望か確認して。一人三十分で案内ね。予約制にして指定した時間に来てもらうようにしましょう。今日が駄目な場合は別な日を案内してね。お客様に怪我があっては大変だからお店の中に入れる人数を制限して。そうね。整理券があると良いわ。この時間に来てくださいという券を作ってお渡しして」
「はい」
「それでも入りきらない場合は別の日をご案内して。その人たちがゆったりお買い物できるように他の日のオープン時間を変更して対応してください。お待たせするお客様に失礼のないようにね」
店の責任者はわたしが出した指示を一生懸命メモを取っている。
「お釣りが足りなくなるかもしれないわ。追加で用意して。お会計できる場所も増やしましょう。もう少し人手があった方が良いわよね。……侯爵家でお手伝いできそうな人をだしてもらいましょう。リネット、お願いできる?」
「かしこまりました」
「手伝ってもらう人には主に人員整理などを行ってもらいます。皆さんは接客に集中してください。何か困ったことがあればすぐに報告・相談を」
まさか、こんなに人が集まるなんて……。
かなりの盛況でオープン初日を終えたことにわたしたちは驚くしかなかった。
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