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これから
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アルルが泣き止んだ頃、薪に火を付け直してもう一度辺りを照らした。
アルルは泣きすぎて、目が赤くなっていた。
「アルルに話しておくことがある、君のお父さんとお母さんについてだ」
思い切って切り出した。
「父上と母上ですか……?」
アルルは少し動揺した。
「俺が眠ってる時、アルルの母親が俺に対してテレパシーで会話をしてきたんだ」
「それはありえませんよ……だって、父上と母上は地震の崩落で湖に落ちたんですから……」
「でも、死んだかは確認してないんでしょ?」
俺がそう言うと、アルルは困った顔をした。
「アルルの父親の名前は、ジオ・リンス・フィルネリア、俺と同じ人間界から来た人。母親の名前はフィオネ・リンス・フィルネリア、そうじゃない?」
アルルは驚いて目を見開いていた。
「なんで父上と母上のことを知ってるんですか?!ドトールおじさんにも話したことないはずなのに?!」
「夢の中で、ジオさんとフィオネさんが教えてくれたんだ。2人は間一髪のところで、死なずに助かったけど、直後にバグネリアの人に囚われたらしい」
「じゃあ、父上と、母上は今もどこかで生きてる……?!」
今度は悲しみの涙ではなく、嬉し涙でアルルは泣いた。
俺は、アルルの側まで近寄って、頭を撫でてあげた。
「やっぱり、アルルの5年間は無駄じゃなかったんだよ」
「はい……!!」
アルルは泣きながら、初めて俺の前で笑ってくれた。
彼女の笑った顔はとても魅力的で、俺はこの子の笑顔を守りたいと思った。
「それでさ、俺はまだ5年前の話を知らないから、掻い摘んで教えてくれないかな? 今後の参考にするためにも」
アルルは一瞬迷ったそぶりを見せたが、俺の目をしっかりと見て頷いてくれた。
俺はアルルから、長い話を聞いた。
フィルネリアは昔、花に覆われた国だったこと。
魔法は使えないけど、国民は皆手を取り合って生活していたこと。
そして、突然の大地震による崩落。
それに乗じて、外界から攻めてきたバグネリアの4人。
それは、俺が予想していた事態より、もっと深刻なものだった。
「多分だけど、城を乗っ取ったならバグネリアの人たちはまだ、フィルネリアにいると思うんだ。わざわざ城を乗っ取ってから移動する必要もなからね」
「私もそう思います!」
「本当なら、今すぐにでもフィルネリアに向かいたいところだけど、俺はまだ能力が発現してないんだ」
そう言って俺は少し暗い表情になった。
アルルは、頭にはてなマークを浮かべている。
「能力の発現ってなんですか?」
「ジオさんに聞いた話なんだけど、召喚魔法で呼び出された人は、現実世界で馴染みの深いものや、自分の思いが一つだけ能力として具現化するらしいんだ」
「父上がそんなことを……でも、魔法書にはそんなこと書いてありませんでしたよ?」
「きっと、最強のしもべっていうのは、能力が発現した人のことを指すと思うんだ」
これは完全に俺の憶測だ。しかし、それしか思い当たる節が無かった。
アルルは、あまり納得していない表情をしていたが、気にせずに話を続けた。
「だから、今のまま旅に出ても危険すぎるから、俺の能力が分かるまでもう少しだけ待ってくれないかな?」
「わかりました! では、コタローさんの能力が分かるまで、私なりに出来ることを探してみます!」
迷わずに、アルルはそう言ってくれた。
「ありがとう、アルル。じゃあとりあえずドトールさんの家に戻ろうか!」
そう言って俺は立ち上がった。
「まだ暗いですし、ここで朝まで待ったほうがよくないですか?」
「大丈夫だよ、これがあるから」
そう言って取り出したのは、さっきのスマートフォンだ。
アルルは不思議な目をしていたが、スマートフォンを起動させて、懐中電灯モードにすると、地面が明るく照らされた。
「わー! すごいです!!」
アルルは、目をキラキラさせてスマートフォンを見ていた。
このスマートフォンは、太陽光で充電されるため、充電が切れても安心だ。
アルルは立ち上がり、川の水で焚き火を消してから、すぐ俺の隣まで走ってきた。
地面は小石ばかりで、足元がおぼついていなかったから、俺はアルルの右手を握ってあげた。
アルルは、ビックリして顔を赤らめたが、すぐに俺の左手を握り返してくれた。
それから俺たちは、2人で手を繋いでドトールさんの家に帰っていった。
アルルは泣きすぎて、目が赤くなっていた。
「アルルに話しておくことがある、君のお父さんとお母さんについてだ」
思い切って切り出した。
「父上と母上ですか……?」
アルルは少し動揺した。
「俺が眠ってる時、アルルの母親が俺に対してテレパシーで会話をしてきたんだ」
「それはありえませんよ……だって、父上と母上は地震の崩落で湖に落ちたんですから……」
「でも、死んだかは確認してないんでしょ?」
俺がそう言うと、アルルは困った顔をした。
「アルルの父親の名前は、ジオ・リンス・フィルネリア、俺と同じ人間界から来た人。母親の名前はフィオネ・リンス・フィルネリア、そうじゃない?」
アルルは驚いて目を見開いていた。
「なんで父上と母上のことを知ってるんですか?!ドトールおじさんにも話したことないはずなのに?!」
「夢の中で、ジオさんとフィオネさんが教えてくれたんだ。2人は間一髪のところで、死なずに助かったけど、直後にバグネリアの人に囚われたらしい」
「じゃあ、父上と、母上は今もどこかで生きてる……?!」
今度は悲しみの涙ではなく、嬉し涙でアルルは泣いた。
俺は、アルルの側まで近寄って、頭を撫でてあげた。
「やっぱり、アルルの5年間は無駄じゃなかったんだよ」
「はい……!!」
アルルは泣きながら、初めて俺の前で笑ってくれた。
彼女の笑った顔はとても魅力的で、俺はこの子の笑顔を守りたいと思った。
「それでさ、俺はまだ5年前の話を知らないから、掻い摘んで教えてくれないかな? 今後の参考にするためにも」
アルルは一瞬迷ったそぶりを見せたが、俺の目をしっかりと見て頷いてくれた。
俺はアルルから、長い話を聞いた。
フィルネリアは昔、花に覆われた国だったこと。
魔法は使えないけど、国民は皆手を取り合って生活していたこと。
そして、突然の大地震による崩落。
それに乗じて、外界から攻めてきたバグネリアの4人。
それは、俺が予想していた事態より、もっと深刻なものだった。
「多分だけど、城を乗っ取ったならバグネリアの人たちはまだ、フィルネリアにいると思うんだ。わざわざ城を乗っ取ってから移動する必要もなからね」
「私もそう思います!」
「本当なら、今すぐにでもフィルネリアに向かいたいところだけど、俺はまだ能力が発現してないんだ」
そう言って俺は少し暗い表情になった。
アルルは、頭にはてなマークを浮かべている。
「能力の発現ってなんですか?」
「ジオさんに聞いた話なんだけど、召喚魔法で呼び出された人は、現実世界で馴染みの深いものや、自分の思いが一つだけ能力として具現化するらしいんだ」
「父上がそんなことを……でも、魔法書にはそんなこと書いてありませんでしたよ?」
「きっと、最強のしもべっていうのは、能力が発現した人のことを指すと思うんだ」
これは完全に俺の憶測だ。しかし、それしか思い当たる節が無かった。
アルルは、あまり納得していない表情をしていたが、気にせずに話を続けた。
「だから、今のまま旅に出ても危険すぎるから、俺の能力が分かるまでもう少しだけ待ってくれないかな?」
「わかりました! では、コタローさんの能力が分かるまで、私なりに出来ることを探してみます!」
迷わずに、アルルはそう言ってくれた。
「ありがとう、アルル。じゃあとりあえずドトールさんの家に戻ろうか!」
そう言って俺は立ち上がった。
「まだ暗いですし、ここで朝まで待ったほうがよくないですか?」
「大丈夫だよ、これがあるから」
そう言って取り出したのは、さっきのスマートフォンだ。
アルルは不思議な目をしていたが、スマートフォンを起動させて、懐中電灯モードにすると、地面が明るく照らされた。
「わー! すごいです!!」
アルルは、目をキラキラさせてスマートフォンを見ていた。
このスマートフォンは、太陽光で充電されるため、充電が切れても安心だ。
アルルは立ち上がり、川の水で焚き火を消してから、すぐ俺の隣まで走ってきた。
地面は小石ばかりで、足元がおぼついていなかったから、俺はアルルの右手を握ってあげた。
アルルは、ビックリして顔を赤らめたが、すぐに俺の左手を握り返してくれた。
それから俺たちは、2人で手を繋いでドトールさんの家に帰っていった。
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