とある1日の二人

sino

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閑話 友人との邂逅

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「それで、その後はどうだったんだ?」
缶コーヒー片手に彼はそう切り出した。
どうやらこの前の出来事が噂になって彼の耳に入ったようである。
「特にないさ。向こうの家まで送って、傘は翌日に返した。」
私がそう切り返すと彼は「当てが外れた」と言って顔をしかめた。
「それだけ?相合傘までしたんだろ?」
「ああ。」
彼はため息をついた。
「お前は相変わらずだ。中途半端な所で手を引いてしまう。少しは勇気を出してみたらどうだ?臆病者。」
「おいおい随分な言い方じゃないか。紳士と呼んでくれ。」
「紳士は告白の場面を忘れたりはしないと思うがな。」
その物言いに私は何も言い返せなかった。その様子を見てようやく満足したのか、彼は缶コーヒーを手に取り、自前のカップに注ぎ始めた。
彼、もとい私の友人は妙に拘りが強い。
「コーヒーは目で楽しむもの」とまで豪語する彼は、カップに入ってないコーヒーを一滴たりとも飲もうとしないのだ。
「どうした?俺の奢りだぞ。さっさと飲め。」
そう言って、彼はカップに口をつけた。それを見て私もまた缶コーヒーに手をつけた。
放課後の教室には誰もいない。時節、運動部の掛け声が店内BGMのように響き、夕焼けの優美さが私たちに至福の時をもたらす。喫茶店のものにも劣らない優雅な雰囲気に私は時を忘れて酔いしれた。

「まずいな、この缶コーヒー。」
台無しである。
「無粋な奴め。それは君が無糖を買ったからだろう。何故わざわざそっちを買った?」
「お前の惚れっ気が聞けると思ったんだがな。とんだ期待はずれだった。」
彼は相変わらず弱い所を的確についてきた。
「…次は善処するよ。」
臆病者は赤面した。
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