留めおきたい思い

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いつか梅の実が熟す頃

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母一人子一人で暮らす
我が家に難敵があらわれた
その名もーー成長期。

無駄をとことん排除した生活
余分にかける費用などないのに
伸びる身長、でかくなる手足

さんざっぱら切り詰めても足りなくて
合わなくなった制服の新調とか以ての外で

「んー、ちょっと短いわねぇ」
糸をほどいて布を伸ばしても
届かぬ寸法……短足を望む事があるとは

"お父さんさえ生きていれば"
言わずとも顔に書いてある

辛そうなその面持ちが
僅かに残る迷いを打ち消す

「母さん、大丈夫。俺働くから」
中退すれば、もう制服はいらない

連日仕事を複数掛け持ち
働き過ぎの荒れた両手を見つめて言った

(ささくれ、どんどん酷くなってる)
あかぎれとか、余所に認めた事なんて無い

まだ頼りないかもしれないけど
中卒だって選ばなければ職はある

「出来れば今すぐ学校辞めたい」
頑張ってるのは自分の為と分かってるから、窺うような言い方にした

仕事見つけて二人で稼げば楽になるはず
(本当は高校自体通うつもりは無かったのに)

ーーただ、母さんがいつも言うから
「後悔しないよう学びなさい。若い時代は取り戻せないのよ」
それを聞けば俺の決心が、少しは揺らぐだろうと思って……

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