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灰汁・1 少年後日談
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あの少年の事も、最早少年とは呼べず青年に成った。暗い小学校生活に成ったことは、確かなのだが中高は良い友が出来、充実した生活を送っていると言っても過言ではなかった。地元の奴らにしか知られていなかったことも功を奏したのであろう。少年は地元の中高には行かず、親戚の家に住まわせて貰い。少し離れた学校へ通った。
少年が青年へと成り、元来の気質を取り戻していた。周りから来る視線の違い、接し方の違いが影響していることはきっと青年も分かっていたし、青年は周りへの感謝を忘れたりはしなかった。
青年が性格的な元来の気質を取り戻したのなら、願望的な(性的)元来の気質を取り戻しても可笑しくはなかった。否、寧ろ戻らなくては、可笑しいのである。青年が君子だったのなら兎も角、男子高校生なのである。
しかし、野球部に入り、部活動に全力投球している彼は周りからの信頼も厚く、性的な思考にはしることはなかった。自分自身で教訓を得たのかも知れないが、彼はそんな事はなかったと後にこう語っている。
「俺が中高で変われたのは、確かに教訓を得たからかも知れない。けど、きっとそうじゃないんだ。性的なことに奔っちまう奴や怠惰に過ごしている奴らには、ないものを得たからなんだ。教訓よりも、もっと自分自身を変えられるものがあるのさ。」
そんな事があるのだろうか。彼はこう続けた。
「恐怖心さ。恐怖心より人を変えちまうモノはないって、気付いたんだ。今でも思い出すんだ。女子に囲まれて罵声を浴びせられるのが、周りの奴らに距離を置かれたり、弄られたりするのが。」
彼は悲痛な面持ちで語っていた。
「分かっているつもりだぜ。自分が悪いことをしたって、だから余計に怖いのさ。あの行動は悪いことか、この行動をしても良いのかって。いつもいつも怖くてたまらないんだ。性的な事を考える事すら、周りの奴に伝わっているんじゃないのか。そして、また虐められるんじゃないかって」
こんな話をしたのは、二十歳に成った時であった。その時の彼は、明るくもあったが其れ以上に照っている頭は若くして苦労した者の証のようであった。
今年彼が三十歳になるはずだが、結婚の連絡は未だにこない。合同コンパと云うのに誘うのだが、女性と話すときに未だに顔色を窺いながら、脂汗を流しながら話す姿を見るのは少しばかり気の毒に感じる。
三十歳になり、あの日起きたことは少年もきっと忘れ去った過去の事。唯、悲しきかな。意識の底には眠っている。
少年が青年へと成り、元来の気質を取り戻していた。周りから来る視線の違い、接し方の違いが影響していることはきっと青年も分かっていたし、青年は周りへの感謝を忘れたりはしなかった。
青年が性格的な元来の気質を取り戻したのなら、願望的な(性的)元来の気質を取り戻しても可笑しくはなかった。否、寧ろ戻らなくては、可笑しいのである。青年が君子だったのなら兎も角、男子高校生なのである。
しかし、野球部に入り、部活動に全力投球している彼は周りからの信頼も厚く、性的な思考にはしることはなかった。自分自身で教訓を得たのかも知れないが、彼はそんな事はなかったと後にこう語っている。
「俺が中高で変われたのは、確かに教訓を得たからかも知れない。けど、きっとそうじゃないんだ。性的なことに奔っちまう奴や怠惰に過ごしている奴らには、ないものを得たからなんだ。教訓よりも、もっと自分自身を変えられるものがあるのさ。」
そんな事があるのだろうか。彼はこう続けた。
「恐怖心さ。恐怖心より人を変えちまうモノはないって、気付いたんだ。今でも思い出すんだ。女子に囲まれて罵声を浴びせられるのが、周りの奴らに距離を置かれたり、弄られたりするのが。」
彼は悲痛な面持ちで語っていた。
「分かっているつもりだぜ。自分が悪いことをしたって、だから余計に怖いのさ。あの行動は悪いことか、この行動をしても良いのかって。いつもいつも怖くてたまらないんだ。性的な事を考える事すら、周りの奴に伝わっているんじゃないのか。そして、また虐められるんじゃないかって」
こんな話をしたのは、二十歳に成った時であった。その時の彼は、明るくもあったが其れ以上に照っている頭は若くして苦労した者の証のようであった。
今年彼が三十歳になるはずだが、結婚の連絡は未だにこない。合同コンパと云うのに誘うのだが、女性と話すときに未だに顔色を窺いながら、脂汗を流しながら話す姿を見るのは少しばかり気の毒に感じる。
三十歳になり、あの日起きたことは少年もきっと忘れ去った過去の事。唯、悲しきかな。意識の底には眠っている。
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