恋まで0センチメートル

高羽流生

文字の大きさ
上 下
8 / 32

8

しおりを挟む
 言われたとおりに横になる。

「もうちょい奥行って」

「あ、ああ、うん」

 伊織がベッドに膝をついた。重みでベッドぎしりと撓む。身体をずらして奥へと移動した。雄大の横に伊織が寝そべる。

「ったく……、何でこんな……」

 ぼそぼそと言った伊織が身体を反転させる。覆いかぶさってきた伊織に、「何?」と聞いてみたが、返事はない。

(なんか、いつもと違って見える)

 見上げているからだろうか。見慣れているはずの伊織が、違う人みたいに見えた。

「雄大、無理になったら止めろよ」

 確認するみたいに伊織が言う。

 やったことがないことに興味もあるし、試してみたいとは思っている。けれど実際にしてみたら無理かもしれない。大丈夫だとは言えなくて、雄大は「わかった」と伊織に答えた。

 伊織の顔が下がってくる。瞼を閉じたら、唇が重なった。

 柔らかく押し当てられた唇が、チュッと音を立てて離れていく。もう一度唇が近づいてきたとき、雄大は軽く唇を開いた。

「ん……」

 隙間から、伊織の舌が入ってくる。雄大の舌に絡みついてきた舌が、くるりと一周する。引かれた舌を追いかけて舌を伸ばしたら、ぢぅっと舌先を吸われた。唾液の絡む音が頭に響く。

(うん。やっぱ気持ちいい)

 上あごを舌先で撫でられる。はじめて伊織とキスしたときと同じ変化が、身体に現れだした。直接屹立を触られているわけでもないのに、下腹あたりにじんわりと熱を集まっていく。

「っ、ぁ……」

(勃ちそう……)

 見知った感覚にもぞもぞと腰が動いた。

 パンツの上に伊織の手が当たった。膨らみはじめている屹立を布越しに撫でた伊織の唇が離れる。

「んっ……、ぁ……」

 刺激に思わず腰を引いたからだろう。慌てた様子で伊織がさっと手を引いた。

「っ、悪い……。平気か?」

(……? 伊織?)

 女とは経験があるのだ。伊織に触られたのははじめてだけれど、そんなに心配してもらうようなことではない。別に痛いことをされているわけではないし、そもそもやってみたいと言い出したのは雄大だ。

「平気……、伊織のも」

 身体を起こし、手を伸ばした。伊織のベルトを掴もうとしたら、今度は伊織が腰を引いた。

「ちょっ……、俺はいい……」

「なんで? 一緒にやりたい」

 伊織が雄大の手を掴んでくる。伊織の手を引きはがして、ベルトをグイと引っ張る。パンツのボタンを外して、ファスナーを下ろした。

(え? マジ?)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

若旦那からの甘い誘惑

すいかちゃん
BL
使用人として、大きな屋敷で長年奉公してきた忠志。ある日、若旦那が1人で淫らな事をしているのを見てしまう。おまけに、その口からは自身の名が・・・。やがて、若旦那の縁談がまとまる。婚礼前夜。雨宿りをした納屋で、忠志は若旦那から1度だけでいいと甘く誘惑される。いけないとわかっていながら、忠志はその柔肌に指を・・・。 身分差で、誘い受けの話です。 第二話「雨宿りの秘密」 新婚の誠一郎は、妻に隠れて使用人の忠志と関係を続ける。 雨の夜だけの関係。だが、忠志は次第に独占欲に駆られ・・・。 冒頭は、誠一郎の妻の視点から始まります。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集

あかさたな!
BL
全話独立したお話です。 溺愛前提のラブラブ感と ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。 いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を! 【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】 ------------------ 【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。 同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集] 等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。 ありがとうございました。 引き続き応援いただけると幸いです。】

処理中です...