イマワノキワ -その時に私を呼んでー

たまひめ

文字の大きさ
上 下
48 / 57
第8章

10話【白✖️黒の闘い】

しおりを挟む
 黒柳は、担任と生徒たちから集めた憎しみや恨みなどの、未だ残っていた負のエネルギーを、再び希和に送ってきた。
 その負のエネルギーは、なんとも言えないほどドス黒く気味の悪い"気"で、希和の心へと強制的に送られてきた。
 それらは、担任を優しい良き先生と慕い、クラスメートたちを、朗らかで元気な仲間と信じてきた希和の思いが、ことごとく覆されるような真実だった。
 皆、悩み苦しみ、よく言えば人間味に溢れていた。
 希和は、そうした身近な人間の過ちを、非難しそうになったことを恥じた。非難すべきは自分の狭い心であると、気付いたのだった。
 その悩みや苦しみと日々葛藤し、一生懸命生きている姿を透視し、希和は胸が苦しくなった。
 大粒の涙が希和の頰をつたっていった時、一瞬、希和に後光が差した。
 それと同時に、担任と生徒たちの、憎しみや恨みといった負のエネルギーが砕け散って、スゥーッと消えていった。
 希和のシロのシャーマンとしての力と新たな悟りにより、負のエネルギーが浄化されたのだった。

 希和を打ちのめし、国を意のままに動かそうとした、クロのシャーマンである黒柳は、その企みが失敗に終わり、父親から折檻を受けていた。
「この無能者めが! あんな小娘一人、倒すこともできないのか!」
 黒柳の父親である、ひと回りも大きな真っ黒い狐の、銀色な目が怒りで光ると、
「ギャーーーッ!」
 と、黒柳は痛みで大声を上げた。
 ー失敗した者は制裁を受けるー
 これが、黒弧族の掟だった。
 希和やトヨのように、お互いに肉親をいたわり思いやる白妙族とは、まるで対照的だった。
 
 翌日、黒柳は学校を欠席した。体調が悪いからと、父親から連絡が入ったらしい。
 希和は、昨日の出来事を知っているだけに、思いは複雑だった。心根が優しい希和は、敵ではあるが、本人が望んだわけではないのに、そういう境遇に生まれてきた黒柳に同情した。
 トヨのように、様々な体験を重ねて、「悪いものは悪い」と、ドライに切り捨てることが出来るようになるには、もう少し年月が必要だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件

石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」 隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。 紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。 「ねえ、もっと凄いことしようよ」 そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。 表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...