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第8章
7話 【白✖️黒の闘い】
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その希和の小さな憎しみの種を感知して、黒弧族の末裔の黒柳が、小さくニヤリと笑った。
そして、朝のホームルームのチャイムが鳴り、担任が教室のドアを開けて入ってきた。
希和は、担任の姿を見るなり、我を忘れて走り寄って行った。
「先生、見てください! 留美ちゃんのチューリップが……、留美ちゃんのチューリップが……!」
両手に、花と茎がバラバラになったチューリップを持って訴えた。
希和はとても動揺していて"ソウル・ドナー"たちの良きお手本となっている"正義のヒーロー、イマワノキワ"の姿とは、あまりにもかけ離れていた。
担任は、希和の両手にある、折れてバラバラになったチューリップに、チラッとだけ目をやると、
「あら、ひどいわね。でも時間がないから、忌野さん、席に着いてね」
とだけ、声を掛けた。
「そ……そんな……」
希和は、担任の素っ気ない対応がなぜだかわからず、みゆきとともに首をかしげて、当惑した。希和が合点がいかないながらも、席に着こうとする時、担任の心の声が聞こえてきた。
『ああ、もうムシャクシャする! あのバカ旦那!」
希和は以前、PTAのお母さんたちの間で、「あの先生の旦那さん、他の学校の若い先生と不倫してるんだって」と、噂になっていたことを思い出した。
また、姑にも「あんたが女らしくないから、息子が浮気するんよ」と、舅、姑と夫、三人から責められたとも、噂が流れた。
担任は、頼れる両親は他界し、兄弟もいなかった。
その頃、担任が川原で一人で泣いている姿を、近所の人がよく見かけていた。
だが、その近所の人たちには、姑の友人、知人の者が多く、担任に同情する者は皆無で、嫁ぎ先では孤立無援の状態だった。
こうした大人の事情を理解するには、希和はまだ十二歳と若く、経験も足りなかった。そして、正義感が強く純真な希和には、辛すぎる大人たちの汚い部分でもあった。
それゆえに、希和の弱点は、自分の理解を超えている、人間の汚い部分を知ろうとはせず、無意識にブロックしてしまうことだった。
そして、朝のホームルームのチャイムが鳴り、担任が教室のドアを開けて入ってきた。
希和は、担任の姿を見るなり、我を忘れて走り寄って行った。
「先生、見てください! 留美ちゃんのチューリップが……、留美ちゃんのチューリップが……!」
両手に、花と茎がバラバラになったチューリップを持って訴えた。
希和はとても動揺していて"ソウル・ドナー"たちの良きお手本となっている"正義のヒーロー、イマワノキワ"の姿とは、あまりにもかけ離れていた。
担任は、希和の両手にある、折れてバラバラになったチューリップに、チラッとだけ目をやると、
「あら、ひどいわね。でも時間がないから、忌野さん、席に着いてね」
とだけ、声を掛けた。
「そ……そんな……」
希和は、担任の素っ気ない対応がなぜだかわからず、みゆきとともに首をかしげて、当惑した。希和が合点がいかないながらも、席に着こうとする時、担任の心の声が聞こえてきた。
『ああ、もうムシャクシャする! あのバカ旦那!」
希和は以前、PTAのお母さんたちの間で、「あの先生の旦那さん、他の学校の若い先生と不倫してるんだって」と、噂になっていたことを思い出した。
また、姑にも「あんたが女らしくないから、息子が浮気するんよ」と、舅、姑と夫、三人から責められたとも、噂が流れた。
担任は、頼れる両親は他界し、兄弟もいなかった。
その頃、担任が川原で一人で泣いている姿を、近所の人がよく見かけていた。
だが、その近所の人たちには、姑の友人、知人の者が多く、担任に同情する者は皆無で、嫁ぎ先では孤立無援の状態だった。
こうした大人の事情を理解するには、希和はまだ十二歳と若く、経験も足りなかった。そして、正義感が強く純真な希和には、辛すぎる大人たちの汚い部分でもあった。
それゆえに、希和の弱点は、自分の理解を超えている、人間の汚い部分を知ろうとはせず、無意識にブロックしてしまうことだった。
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