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第8章
3話 【白✖️黒の闘い】
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この日、希和は家に帰ってから自分の部屋に引き籠もった。
畑に出る気力も体力もなく、制服を着たまま、すぐに眠りについた。
トヨは、そんな孫娘の普通ではない状態を感じて、学校での出来事を透視し、生徒たちが留美の花をイタズラしている傍らで、意地悪そうにニヤニヤ笑っている黒柳の姿を見て、黒幕は黒柳だと直感した。
『黒弧族の若造め、汚い手を使いおって! じゃが、うちの希和はそんな卑怯な手に屈するような娘じゃないっぺ!』
トヨは心から、シロとして最強のシャーマンである希和の力を信じて疑わなかった。
そして、トヨは裁縫箱を取り出し、何やら作業を始めた。
翌朝、寝すぎて腫れぼったい目をした希和に、トヨは優しく「おはよう」と声を掛け、
「ほらっ、これっ」
と、ぶっきら棒だが少し照れ臭そうに、希和に差し出した。
トヨの黒くて皺だらけの手には、かわいいチューリップの造花が数本、握られていた。
「かわいい! 綺麗! 何これ?」
希和は、季節外れのチューリップの花束とトヨの顔を見比べながら、驚嘆の声を上げた。
「若い頃、町内会の手芸教室で習ったことがあってな。下手だけど、留美ちゃんの為に持っていきな」
と、トヨは説明した。
そのチューリップの花は、昨夜、トヨが多くの時間を費やして手作りした物だった。
作り方は、ウズラの卵大に丸めた綿を、同様な大きさに縫ったカラフルな布の中に、チューリップの花のように包み、それを割り箸に差して、緑色の布で割り箸をグルグル巻いて、茎のようにした。
本来なら、茎の部分には太い針金を使い、花との境界を覆うように、糊の付いた専用のフローラルテープで巻くのだが、トヨはそんなシャレた物は持っていなかったので、割り箸で代用して布を巻いたのだった。
希和は、トヨの心のこもった、そのチューリップを両手でギュッと握りしめ、
「ばあちゃん、ありがとう……ありがとう……」
と、何度もお礼を言った。
「それから、これも」
トヨは、空き缶を希和に渡した。
「瓶だと割れるからね。缶ならおちても割れることはないっぺさ」
と言って、トヨは笑った。
畑に出る気力も体力もなく、制服を着たまま、すぐに眠りについた。
トヨは、そんな孫娘の普通ではない状態を感じて、学校での出来事を透視し、生徒たちが留美の花をイタズラしている傍らで、意地悪そうにニヤニヤ笑っている黒柳の姿を見て、黒幕は黒柳だと直感した。
『黒弧族の若造め、汚い手を使いおって! じゃが、うちの希和はそんな卑怯な手に屈するような娘じゃないっぺ!』
トヨは心から、シロとして最強のシャーマンである希和の力を信じて疑わなかった。
そして、トヨは裁縫箱を取り出し、何やら作業を始めた。
翌朝、寝すぎて腫れぼったい目をした希和に、トヨは優しく「おはよう」と声を掛け、
「ほらっ、これっ」
と、ぶっきら棒だが少し照れ臭そうに、希和に差し出した。
トヨの黒くて皺だらけの手には、かわいいチューリップの造花が数本、握られていた。
「かわいい! 綺麗! 何これ?」
希和は、季節外れのチューリップの花束とトヨの顔を見比べながら、驚嘆の声を上げた。
「若い頃、町内会の手芸教室で習ったことがあってな。下手だけど、留美ちゃんの為に持っていきな」
と、トヨは説明した。
そのチューリップの花は、昨夜、トヨが多くの時間を費やして手作りした物だった。
作り方は、ウズラの卵大に丸めた綿を、同様な大きさに縫ったカラフルな布の中に、チューリップの花のように包み、それを割り箸に差して、緑色の布で割り箸をグルグル巻いて、茎のようにした。
本来なら、茎の部分には太い針金を使い、花との境界を覆うように、糊の付いた専用のフローラルテープで巻くのだが、トヨはそんなシャレた物は持っていなかったので、割り箸で代用して布を巻いたのだった。
希和は、トヨの心のこもった、そのチューリップを両手でギュッと握りしめ、
「ばあちゃん、ありがとう……ありがとう……」
と、何度もお礼を言った。
「それから、これも」
トヨは、空き缶を希和に渡した。
「瓶だと割れるからね。缶ならおちても割れることはないっぺさ」
と言って、トヨは笑った。
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