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第8章
1話 【白✖️黒の闘い】
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ー先人は知恵を集めて、子孫が行く末を誤らぬよう、ことわざを残したー
[禍福はあざなえる縄のごとし]
"ソウル・ドナー"たちの祈りもあり、充実した中学生活を送っていた"正義のヒーロー・イマワノキワ"である、希和の幸せを脅かすように、その事件は起きた。
総選挙が行われた翌朝、希和が登校し下駄箱で靴を脱いでいると、教室から希和の姿を見かけたみゆきが、慌ててやって来た。
「希和ちゃん、大変! 大変!」
みゆきの尋常ではない様子に、希和が急いで教室へ走ると、
「あっ!」
と言って、希和はあとに続く言葉を失った。
留美の机の上に飾られていた花瓶が床に落ちて、ガラス製の花瓶は粉々になり、花は萎れていたからだ。
「いったい、誰がこんなことを?」
希和は、粉々になった破片を、丁寧にひとつひとつ拾いながら、冷静になれと自分自身に言い聞かせ、事態を考えた。
『花が萎れているから、倒れたのは今朝じゃない。昨日、私たちが家へ帰ったあとということになる……。でも、誰かがやったとは言い切れない。偶然、何かの拍子で花瓶が倒れたということもありえるし……』
希和は心の中で葛藤しながら、人のせいにしないよう、気持ちを強く持とうとした。
その日は、担任が、校庭の花壇にまだ残って咲いていた菊の花を摘み、職員室にあったジャムの空き瓶に活けて、留美の机に置いてくれた。
そんな、留美の花を巡る一連の騒動を、面白おかしげな表情で観察している、意地悪な目があった。片側の口角を上げながら、ニヤリと満足気に笑っている。
やはりその者は、転校生の、黒弧族の末裔である黒柳だった。
黒柳は、自分の心を希和に悟られないようガードしながら、
『忌野希和、お前は、その正義感の強さと純粋さが武器だが、逆にそれは欠点でもある。その事実に苦しむがいい!』
と、一人ほくそ笑んでいた。
[禍福はあざなえる縄のごとし]
"ソウル・ドナー"たちの祈りもあり、充実した中学生活を送っていた"正義のヒーロー・イマワノキワ"である、希和の幸せを脅かすように、その事件は起きた。
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「あっ!」
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留美の机の上に飾られていた花瓶が床に落ちて、ガラス製の花瓶は粉々になり、花は萎れていたからだ。
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『花が萎れているから、倒れたのは今朝じゃない。昨日、私たちが家へ帰ったあとということになる……。でも、誰かがやったとは言い切れない。偶然、何かの拍子で花瓶が倒れたということもありえるし……』
希和は心の中で葛藤しながら、人のせいにしないよう、気持ちを強く持とうとした。
その日は、担任が、校庭の花壇にまだ残って咲いていた菊の花を摘み、職員室にあったジャムの空き瓶に活けて、留美の机に置いてくれた。
そんな、留美の花を巡る一連の騒動を、面白おかしげな表情で観察している、意地悪な目があった。片側の口角を上げながら、ニヤリと満足気に笑っている。
やはりその者は、転校生の、黒弧族の末裔である黒柳だった。
黒柳は、自分の心を希和に悟られないようガードしながら、
『忌野希和、お前は、その正義感の強さと純粋さが武器だが、逆にそれは欠点でもある。その事実に苦しむがいい!』
と、一人ほくそ笑んでいた。
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