イマワノキワ -その時に私を呼んでー

たまひめ

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第7章

2話 【ソウル・ドナーとの絆】

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 都会の若者らしき男性は、電車に乗りながら"正義のヒーロー・イマワノキワ"である希和の願いどおり、毎日一分間、善人が報われ悪人が減るよう祈り、いつしか「どうか、この電車に乗っている全員が無事目的地まで辿り着き、帰りも無事家路につくことができますように」と、加えて祈るなど、他人のことまで思いやれるようになったのだった。
 また、イジメられていた希和と同年代の男の子は、自分をからかおうとして近づいてきたイジメっ子に対して、勇気を持って対峙し、「僕をイジメると、ただじゃおかないぞ!」と、緊張で足をガクガクさせながらもスゴんで見せて、自分に対するイジメを軽減する努力をしたり、高校生の頃から何年も自分の部屋に引き籠もり、親に心配をかけていた二十代の若者が、我が子の為に、毎日ご飯を作り、子供部屋へ届けてくれる母親に対して、「おいしかった。ありがとう」というメモを、空になった食器の上に、初めて置くのが見えたりもした。
 希和は、これらの映像を透視して、とても嬉しかった。皆、自分のようなちっぽけな人間の願いを聞いてくれただけではなく、実行してくれたのだ。その結果、以前「死にたい」とまで言っていた人たちが、生きる希望を見出したり、自分以外の人を思いやれるようになったり、感謝の気持ちを持てるようになったのである。
 そんな善き行いをする"ソウル・ドナー"の数は、日本の人口の比率でいえば、ごくわずかに過ぎなかったが、それでも確実に、日本全体を覆う"気"は変わりつつあった。
 希和と同じシャーマンの血が流れるトヨは、その変化にいち早く気付いた一人だった。
「希和、なんだか最近、少しだけ大気が清浄になったような気がするべ。まだ、日本を善くしようとする人もおるようじゃ。じゃから、この先ある選挙も、大どんでん返しは確実だべ」
 と、トヨは感心して言った。
"正義のヒーロー・イマワノキワ"である希和の活躍を、あの不思議な女性がトヨに知られないようガードしていたので、トヨは、まさか自分の孫娘が、この状況をリードしているとは思わないのだった。
 
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