37 / 57
第7章
2話 【ソウル・ドナーとの絆】
しおりを挟む
都会の若者らしき男性は、電車に乗りながら"正義のヒーロー・イマワノキワ"である希和の願いどおり、毎日一分間、善人が報われ悪人が減るよう祈り、いつしか「どうか、この電車に乗っている全員が無事目的地まで辿り着き、帰りも無事家路につくことができますように」と、加えて祈るなど、他人のことまで思いやれるようになったのだった。
また、イジメられていた希和と同年代の男の子は、自分をからかおうとして近づいてきたイジメっ子に対して、勇気を持って対峙し、「僕をイジメると、ただじゃおかないぞ!」と、緊張で足をガクガクさせながらもスゴんで見せて、自分に対するイジメを軽減する努力をしたり、高校生の頃から何年も自分の部屋に引き籠もり、親に心配をかけていた二十代の若者が、我が子の為に、毎日ご飯を作り、子供部屋へ届けてくれる母親に対して、「おいしかった。ありがとう」というメモを、空になった食器の上に、初めて置くのが見えたりもした。
希和は、これらの映像を透視して、とても嬉しかった。皆、自分のようなちっぽけな人間の願いを聞いてくれただけではなく、実行してくれたのだ。その結果、以前「死にたい」とまで言っていた人たちが、生きる希望を見出したり、自分以外の人を思いやれるようになったり、感謝の気持ちを持てるようになったのである。
そんな善き行いをする"ソウル・ドナー"の数は、日本の人口の比率でいえば、ごくわずかに過ぎなかったが、それでも確実に、日本全体を覆う"気"は変わりつつあった。
希和と同じシャーマンの血が流れるトヨは、その変化にいち早く気付いた一人だった。
「希和、なんだか最近、少しだけ大気が清浄になったような気がするべ。まだ、日本を善くしようとする人もおるようじゃ。じゃから、この先ある選挙も、大どんでん返しは確実だべ」
と、トヨは感心して言った。
"正義のヒーロー・イマワノキワ"である希和の活躍を、あの不思議な女性がトヨに知られないようガードしていたので、トヨは、まさか自分の孫娘が、この状況をリードしているとは思わないのだった。
また、イジメられていた希和と同年代の男の子は、自分をからかおうとして近づいてきたイジメっ子に対して、勇気を持って対峙し、「僕をイジメると、ただじゃおかないぞ!」と、緊張で足をガクガクさせながらもスゴんで見せて、自分に対するイジメを軽減する努力をしたり、高校生の頃から何年も自分の部屋に引き籠もり、親に心配をかけていた二十代の若者が、我が子の為に、毎日ご飯を作り、子供部屋へ届けてくれる母親に対して、「おいしかった。ありがとう」というメモを、空になった食器の上に、初めて置くのが見えたりもした。
希和は、これらの映像を透視して、とても嬉しかった。皆、自分のようなちっぽけな人間の願いを聞いてくれただけではなく、実行してくれたのだ。その結果、以前「死にたい」とまで言っていた人たちが、生きる希望を見出したり、自分以外の人を思いやれるようになったり、感謝の気持ちを持てるようになったのである。
そんな善き行いをする"ソウル・ドナー"の数は、日本の人口の比率でいえば、ごくわずかに過ぎなかったが、それでも確実に、日本全体を覆う"気"は変わりつつあった。
希和と同じシャーマンの血が流れるトヨは、その変化にいち早く気付いた一人だった。
「希和、なんだか最近、少しだけ大気が清浄になったような気がするべ。まだ、日本を善くしようとする人もおるようじゃ。じゃから、この先ある選挙も、大どんでん返しは確実だべ」
と、トヨは感心して言った。
"正義のヒーロー・イマワノキワ"である希和の活躍を、あの不思議な女性がトヨに知られないようガードしていたので、トヨは、まさか自分の孫娘が、この状況をリードしているとは思わないのだった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件
石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」
隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。
紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。
「ねえ、もっと凄いことしようよ」
そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。
表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
神楽鈴の巫女
ゆずさくら
ライト文芸
ある日、知世のクラスに転校生がやってくる。その転校生は、知世が昨日見た夢に出てきた巫女そっくりだった。気が動転した知世は、直後のある出来事によって転校生と一緒に保健室に運ばれてしまう。転校生は、見かけはいたって普通の女子高校生だが、実は悪と戦う巫女戦士だったのだ……
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
大陰史記〜出雲国譲りの真相〜
桜小径
歴史・時代
古事記、日本書紀、各国風土記などに遺された神話と魏志倭人伝などの中国史書の記述をもとに邪馬台国、古代出雲、古代倭(ヤマト)の国譲りを描く。予定。序章からお読みくださいませ
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる