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第5章
4話 【黒弧族】
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黒柳の両足の影の後ろに、大きな大きな動物の尻尾らしき影が見えたのだった。
「えっ? 黒柳くん?」
と、希和は黒柳に、疑問をぶつけるように言った。
そこへ、用事がすんだみゆきが戻ってきた。
「希和ちゃん、おまたせ~。や~だ、せっかく行ったのにさ。先生ってば、あたしのこと呼んでないって言ってた。黒柳くんてば、誰かと間違えたんじゃないのかなあ」
と、息を切らしながら報告した。
そんな、みゆきの説明を聞きながら、さっきまで黒柳がいた場所へ目をやると、すでにいなくなっていた。
猫のブゥちゃんは、少し先の方で希和に向かって、
『キワチャン、アイツハ、ケモノノ、ニオイガスル。クレグレモ、キヲツケテ』
と、希和の頭の中に呼び掛け、
「ニャー」
と一声発すると、希和が無事だったので安心したかのように、どこかへ行ってしまった。
この日の下校中、希和は今日の理科の授業中に起きた黒柳の一件を、トヨに報告した方がいいのか、それとも心配かけないよう黙っていた方がいいのか、思い悩んでいた。
しかし、トヨは全てを見透かしていたかのように、正座をし、怖い顔をして希和の帰りを待っていた。
「希和、そこに座れ」
トヨは、有無を言わせない雰囲気で神棚のある部屋を指し、希和に言った。
希和は制服を着替える間もなく、すぐに神棚のある部屋に正座し、祖母と相対した。
「今朝、祈っていると、禍禍しい者の気配を感じたんじゃ」
と、希和に対して静かに伝えた。
「その者の正体を捉えようとしたが、今朝はなかなかシッポを出さなかった。じゃが、さっき、黒い大きな狐の尾が見えた。禍禍しい者の正体は"黒弧族"じゃ」
祖母は、希和の疑問を一気に払うかのように、説明した。
「えっ? 黒柳くん?」
と、希和は黒柳に、疑問をぶつけるように言った。
そこへ、用事がすんだみゆきが戻ってきた。
「希和ちゃん、おまたせ~。や~だ、せっかく行ったのにさ。先生ってば、あたしのこと呼んでないって言ってた。黒柳くんてば、誰かと間違えたんじゃないのかなあ」
と、息を切らしながら報告した。
そんな、みゆきの説明を聞きながら、さっきまで黒柳がいた場所へ目をやると、すでにいなくなっていた。
猫のブゥちゃんは、少し先の方で希和に向かって、
『キワチャン、アイツハ、ケモノノ、ニオイガスル。クレグレモ、キヲツケテ』
と、希和の頭の中に呼び掛け、
「ニャー」
と一声発すると、希和が無事だったので安心したかのように、どこかへ行ってしまった。
この日の下校中、希和は今日の理科の授業中に起きた黒柳の一件を、トヨに報告した方がいいのか、それとも心配かけないよう黙っていた方がいいのか、思い悩んでいた。
しかし、トヨは全てを見透かしていたかのように、正座をし、怖い顔をして希和の帰りを待っていた。
「希和、そこに座れ」
トヨは、有無を言わせない雰囲気で神棚のある部屋を指し、希和に言った。
希和は制服を着替える間もなく、すぐに神棚のある部屋に正座し、祖母と相対した。
「今朝、祈っていると、禍禍しい者の気配を感じたんじゃ」
と、希和に対して静かに伝えた。
「その者の正体を捉えようとしたが、今朝はなかなかシッポを出さなかった。じゃが、さっき、黒い大きな狐の尾が見えた。禍禍しい者の正体は"黒弧族"じゃ」
祖母は、希和の疑問を一気に払うかのように、説明した。
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