イマワノキワ -その時に私を呼んでー

たまひめ

文字の大きさ
上 下
28 / 57
第5章

3話 【黒弧族】

しおりを挟む
 二学期に入って数日後の、理科の授業の時間だった。担当の教師が、
「よーし、今日は天気がいいから、外へ出て植物の観察をするぞ。それぞれ班に分かれて、学校の周りの植物を調べるように」
 と言って、いっせいに生徒たちを外へ出した。
 ひとつの班は、男女が三人ずつの、計六人で構成されていた。
 希和の班は、女子は希和とみゆき、それに留美の三人だったが、亡くなった留美の代わりに転校生の黒柳が入り、女子二人・男子四人での計六人の班だった。
 当然、希和はみゆきと二人で行動した。
 男子四人は、後ろを歩いていた子が、前を歩いている子のワイシャツの首の後ろに抜いた雑草を入れたりして、ふざけ合っていた。
 時々、教師に叱られたりしながら、天気の良い、野外での授業を満喫していた。
 希和が見るところ、転校生の黒柳は、すっかりクラスの男子となじんでいるように見えた。女子と違って、グループを作ったりしない、男子の無邪気さが良かったのかもしれない。
 この頃になると、黒柳は皆と同じように、新調した詰襟を着ていた。
 一瞬、陽がかげり、冷たい風が吹いた。
 希和とみゆきが校庭の脇の草むらに腰掛けて、観察した草花をノートに描いていると、そこへ黒柳がやって来て、
「小川さん。あっちで、先生が呼んでるよ」
 と、みゆきに声を掛けた。
「えっ? あたし? 何かなあ」
 と、みゆきは言いながら、黒柳が指し示すほうへ小走りで行った。
 一人になった希和に、黒柳は片方の口角を上げてニヤリとしながら、
「やっと、見つけた」
 と、意味不明な言葉をつぶやいた。
 その時だった。
 突然、希和の畑仕事への行き来に、お供をしてくれる猫のブゥちゃんが、どこからともなく現れ、黒柳に向かって、
「シャーッ、ハァーッ」
 と、全身総毛立てて、牙をむいた。
「ブゥちゃん……?」
 普段は大人しい猫の尋常ではない様子に、希和はビックリして状況が掴めないでいた。すぐに、陽を隠していた雲が去り太陽が顔を出すと、希和は、
「あっ!」
 と、両手を口に当てながら、小さな驚きの声を上げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件

石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」 隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。 紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。 「ねえ、もっと凄いことしようよ」 そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。 表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

神楽鈴の巫女

ゆずさくら
ライト文芸
ある日、知世のクラスに転校生がやってくる。その転校生は、知世が昨日見た夢に出てきた巫女そっくりだった。気が動転した知世は、直後のある出来事によって転校生と一緒に保健室に運ばれてしまう。転校生は、見かけはいたって普通の女子高校生だが、実は悪と戦う巫女戦士だったのだ……

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

ある雪の日に…

こひな
ライト文芸
あの日……貴方がいなくなったあの日に、私は自分の道を歩き始めたのかもしれない…

大陰史記〜出雲国譲りの真相〜

桜小径
歴史・時代
古事記、日本書紀、各国風土記などに遺された神話と魏志倭人伝などの中国史書の記述をもとに邪馬台国、古代出雲、古代倭(ヤマト)の国譲りを描く。予定。序章からお読みくださいませ

処理中です...