イマワノキワ -その時に私を呼んでー

たまひめ

文字の大きさ
上 下
25 / 57
第4章

3話 【白妙族の秘密】

しおりを挟む
 希和の先祖である、その白妙族しろたえぞくの女性は、追っ手の黒弧族くろこぞくから逃れるために、まだ未開の地である北を目指し流れていった。
 そして、自分たちの存在をシャーマンの力で消し、ひっそりと暮らしながら、白妙族の命を希和の世代まで繋いできたのだった。
 追っ手から逃げる際、逃げる方向を決めかねていた白妙族の女性の手を握り、助けてくれた男性がいた。
「こちらへ!」
 助けてくれた男性は、追っ手の手の届かない所まで白妙族の女性を導いてくれたのだった。
『キワチャン、ソレ、ボクノ ゼンセダヨ』
 聞き覚えのある声と、動物のシルエットが、希和の頭の中に入ってきた。
『ブゥちゃん? ブゥちゃんなの?』
 希和は驚いて聞いた。
『ウン、ソノトキハ、ボクノゼンセハ、タヌキダヨ。ケガヲシテ、モリノナカデ、ウズクマッテイルトコロヲ、キワチャンノ、センゾガ、タスケテクレタンダ』
 と、ブゥちゃんは教えてくれた。
『ダカラ、イツカ、オンガエシヲ、シタクテ、アノトキ、ニンゲンノ、ダンセイニ、バケタンダ』
 前世がタヌキだったというブゥちゃんの説明を聞いて、希和は吹き出しそうになった。
 たしかに、今生こんじょうのブゥちゃんは、全身の毛がフサフサとし、尾もモッサリとしていて、猫というより、タヌキに近いフォルムをしている。
 希和は、そんな双方の姿を想像しながら、"前世はタヌキだった"という、ブゥちゃんの説明に納得した。
 そして、何度もの生まれ変わりののち、今生で猫に生まれ変わっても、なお自分たち白妙族を守ってくれるブゥちゃんに感動して、心が震えてくるのだった。
『ブゥちゃんは、いつもいつも守ってくれていたんだね。ブゥちゃんは騎士ナイトだね』
 希和が素直に褒めると、
『イヤァ、テレルニャア』
 ブゥちゃんは照れて、顔を両手で隠す仕草をした。
 古代の様子を見せられた希和は、希和の先祖がこの北の地に流れてきた訳を理解した。
 そして、イヨの言っていた、
"国を任せる"
"卑弥呼の再来"
"黒弧族"
 これらの言葉を頭の中でリフレインしながら、希和は自分たち白妙族の存在の意義を考えると、小さく身震いした。
『それにしても……』
 と、希和は自分の答案用紙の隅に、"卑弥呼"という字を書きながら、
『卑弥呼の卑って、卑屈の卑とか、卑しいとかの卑だよね? どう考えても、日本の最初の女王様に対して、この字は失礼じゃないかなあ』
 と、素直に感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件

石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」 隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。 紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。 「ねえ、もっと凄いことしようよ」 そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。 表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...