19 / 57
第3章
2話 【待たれたヒーローの誕生】
しおりを挟む
希和に次の依頼が届くのに、そんなに時間はかからなかった。
それは「三田ケ谷マンション殺人事件」に関するものだった。
事件は、今から九年前、高校を中退して遊び歩いていた当時十七歳だった金持ちの家の少年が、同じ高級マンションに住んでいた若妻を性の餌食としたうえ殺害。さらに傍らにいた生後七カ月の赤ちゃんを、泣き声がウルサイからと、布団を被せたまま放置し、窒息死させてしまったという、これまた残忍な犯行だった。
遺族は当然のごとく"極刑"を望んだが、反省の見られない犯人が供述をクルクルと変え、その内容は、いかにも弁護士に知恵をつけられたような話が多かった。
たしかに、犯人の少年には、金持ちだからこそ依頼できるであろう剛腕弁護士が付いていた。
希和にとって、この事件はある意味、難しい取り扱いを要する案件だった。
なぜなら、被害者の遺族は当たり前のように犯人の反省と極刑を望んでいるが、加害者本人は反省の心など微塵もなく、何より"生きること"に異常に執着していたからだ。
「被害者の方々の苦しみ、遺族の方々の悲しみを思い知りなさい!」
希和は依頼されてから毎晩、犯人の少年に向かって犯行時の被害者の気持ちと声を、音と映像で再現して送信した。
遺族の方々の嘆きや苦しみも、併せて送信することも忘れなかった。
これは、留美の時の失敗から学んだことだった。
この事件に関しては、検察側の死刑の求刑が却下され、一審・二審で"無期懲役"の判決がくだされた。この結果は、加害者側に大金で雇われた剛腕弁護士が付いたお陰だという噂が流れ、国民の間に司法に対する不満が静かに広がっていったのだった。
それは「三田ケ谷マンション殺人事件」に関するものだった。
事件は、今から九年前、高校を中退して遊び歩いていた当時十七歳だった金持ちの家の少年が、同じ高級マンションに住んでいた若妻を性の餌食としたうえ殺害。さらに傍らにいた生後七カ月の赤ちゃんを、泣き声がウルサイからと、布団を被せたまま放置し、窒息死させてしまったという、これまた残忍な犯行だった。
遺族は当然のごとく"極刑"を望んだが、反省の見られない犯人が供述をクルクルと変え、その内容は、いかにも弁護士に知恵をつけられたような話が多かった。
たしかに、犯人の少年には、金持ちだからこそ依頼できるであろう剛腕弁護士が付いていた。
希和にとって、この事件はある意味、難しい取り扱いを要する案件だった。
なぜなら、被害者の遺族は当たり前のように犯人の反省と極刑を望んでいるが、加害者本人は反省の心など微塵もなく、何より"生きること"に異常に執着していたからだ。
「被害者の方々の苦しみ、遺族の方々の悲しみを思い知りなさい!」
希和は依頼されてから毎晩、犯人の少年に向かって犯行時の被害者の気持ちと声を、音と映像で再現して送信した。
遺族の方々の嘆きや苦しみも、併せて送信することも忘れなかった。
これは、留美の時の失敗から学んだことだった。
この事件に関しては、検察側の死刑の求刑が却下され、一審・二審で"無期懲役"の判決がくだされた。この結果は、加害者側に大金で雇われた剛腕弁護士が付いたお陰だという噂が流れ、国民の間に司法に対する不満が静かに広がっていったのだった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件
石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」
隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。
紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。
「ねえ、もっと凄いことしようよ」
そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。
表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる