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第2章

9話 【新たな出会いと別れ】

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「希和、学校におくれるよ。早く起きな!」
 トヨが朝起きて来ない希和を心配して、大声で叫んだ。
 希和には、その日の早朝に起きた一連の出来事が、まるで違う世界でのことのように感じられ、百メートル走を何度も全力疾走したあとのような体のだるさがあった。
 そんな状態だったので、希和は鉛のような重さを感じる体を引きずって、ようやく起きてきたのだった。
 チュルルン。
 テレビの朝のニュース番組中に、速報の音が流れた。
 ー寒川町・女子中学生殺人事件の犯人、浪人生Aが、今朝、拘置所にて死亡。詳しい死因は調査中ー
 トヨと希和は、その文字をともに目で追ったあと、互いに視線を合わせた。
 速報のテロップが出たあと、ニュースキャスターが「死因については心臓マヒとの情報も入ってきておりますが……」と、伝えていた。
 希和は内心ドキドキしたが、トヨに悟られないように必死に心を平静に保った。
『大丈夫。あの不思議な女性がばあちゃんに悟られないように、ガードしてくれると言っていた』
 希和は、初めて会ったあの不思議な女性の助言を、なぜか信用した。
 その数日後、犯人の母親が自分のアパートの一室で、ひっそりと亡くなっているのが発見された。
 粗末な布団の中で、まるで眠っているかのように……。
 彼女の葬式を執り行った親族によると、彼女は亡くなる一カ月前くらいに突然訪れ、自分に万が一何かあった場合には……と、現金の入った茶封筒を預け、自分が入る墓も夫と同じ墓にしてくれと。頼んでいったという。
 希和にとっては、シャーマンの能力を使った初めての"殺人"だった。関係者全員が納得し、誰も傷付かず、逆に喜ぶ人が多かった稀有な例だった。
 しかし、課題は残った。
 犯人が心臓マヒで獄中死してから数日後、留美の母親の悲痛な声が希和の耳に入ってきた。
『犯人は、留美と同じように苦しんでしんだのだろうか?』
 留美の母親は、犯人が心臓マヒであっさり死んだことが、納得できないようだった。
『もし、ただの心臓マヒなら安楽死と同じだ。人一人殺しておいて、なんら償うこともせず、楽にサッサと死ぬなんて、恐怖を味わって死んだ留美がかわいそうだ』と。
 母親の気持ちは痛いほどわかったが、犯人が亡くなったあとでは希和にはどうすることもできなかった。
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