17 / 57
第2章
9話 【新たな出会いと別れ】
しおりを挟む
「希和、学校におくれるよ。早く起きな!」
トヨが朝起きて来ない希和を心配して、大声で叫んだ。
希和には、その日の早朝に起きた一連の出来事が、まるで違う世界でのことのように感じられ、百メートル走を何度も全力疾走したあとのような体のだるさがあった。
そんな状態だったので、希和は鉛のような重さを感じる体を引きずって、ようやく起きてきたのだった。
チュルルン。
テレビの朝のニュース番組中に、速報の音が流れた。
ー寒川町・女子中学生殺人事件の犯人、浪人生Aが、今朝、拘置所にて死亡。詳しい死因は調査中ー
トヨと希和は、その文字をともに目で追ったあと、互いに視線を合わせた。
速報のテロップが出たあと、ニュースキャスターが「死因については心臓マヒとの情報も入ってきておりますが……」と、伝えていた。
希和は内心ドキドキしたが、トヨに悟られないように必死に心を平静に保った。
『大丈夫。あの不思議な女性がばあちゃんに悟られないように、ガードしてくれると言っていた』
希和は、初めて会ったあの不思議な女性の助言を、なぜか信用した。
その数日後、犯人の母親が自分のアパートの一室で、ひっそりと亡くなっているのが発見された。
粗末な布団の中で、まるで眠っているかのように……。
彼女の葬式を執り行った親族によると、彼女は亡くなる一カ月前くらいに突然訪れ、自分に万が一何かあった場合には……と、現金の入った茶封筒を預け、自分が入る墓も夫と同じ墓にしてくれと。頼んでいったという。
希和にとっては、シャーマンの能力を使った初めての"殺人"だった。関係者全員が納得し、誰も傷付かず、逆に喜ぶ人が多かった稀有な例だった。
しかし、課題は残った。
犯人が心臓マヒで獄中死してから数日後、留美の母親の悲痛な声が希和の耳に入ってきた。
『犯人は、留美と同じように苦しんでしんだのだろうか?』
留美の母親は、犯人が心臓マヒであっさり死んだことが、納得できないようだった。
『もし、ただの心臓マヒなら安楽死と同じだ。人一人殺しておいて、なんら償うこともせず、楽にサッサと死ぬなんて、恐怖を味わって死んだ留美がかわいそうだ』と。
母親の気持ちは痛いほどわかったが、犯人が亡くなったあとでは希和にはどうすることもできなかった。
トヨが朝起きて来ない希和を心配して、大声で叫んだ。
希和には、その日の早朝に起きた一連の出来事が、まるで違う世界でのことのように感じられ、百メートル走を何度も全力疾走したあとのような体のだるさがあった。
そんな状態だったので、希和は鉛のような重さを感じる体を引きずって、ようやく起きてきたのだった。
チュルルン。
テレビの朝のニュース番組中に、速報の音が流れた。
ー寒川町・女子中学生殺人事件の犯人、浪人生Aが、今朝、拘置所にて死亡。詳しい死因は調査中ー
トヨと希和は、その文字をともに目で追ったあと、互いに視線を合わせた。
速報のテロップが出たあと、ニュースキャスターが「死因については心臓マヒとの情報も入ってきておりますが……」と、伝えていた。
希和は内心ドキドキしたが、トヨに悟られないように必死に心を平静に保った。
『大丈夫。あの不思議な女性がばあちゃんに悟られないように、ガードしてくれると言っていた』
希和は、初めて会ったあの不思議な女性の助言を、なぜか信用した。
その数日後、犯人の母親が自分のアパートの一室で、ひっそりと亡くなっているのが発見された。
粗末な布団の中で、まるで眠っているかのように……。
彼女の葬式を執り行った親族によると、彼女は亡くなる一カ月前くらいに突然訪れ、自分に万が一何かあった場合には……と、現金の入った茶封筒を預け、自分が入る墓も夫と同じ墓にしてくれと。頼んでいったという。
希和にとっては、シャーマンの能力を使った初めての"殺人"だった。関係者全員が納得し、誰も傷付かず、逆に喜ぶ人が多かった稀有な例だった。
しかし、課題は残った。
犯人が心臓マヒで獄中死してから数日後、留美の母親の悲痛な声が希和の耳に入ってきた。
『犯人は、留美と同じように苦しんでしんだのだろうか?』
留美の母親は、犯人が心臓マヒであっさり死んだことが、納得できないようだった。
『もし、ただの心臓マヒなら安楽死と同じだ。人一人殺しておいて、なんら償うこともせず、楽にサッサと死ぬなんて、恐怖を味わって死んだ留美がかわいそうだ』と。
母親の気持ちは痛いほどわかったが、犯人が亡くなったあとでは希和にはどうすることもできなかった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件
石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」
隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。
紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。
「ねえ、もっと凄いことしようよ」
そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。
表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる