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第2章
4話 【新たな出会いと別れ】
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それは、留美の四十九日の早朝に起きた。
『希和ちゃん……』
希和を呼ぶ、留美の声がした。
留美という大事な親友を亡くした悲しみから、寝ている時には留美のことを考えまいとしていた希和だったので、夢かな? と思った。
しかし、再び、
『希和ちゃん……、希和ちゃん』
留美の声が、眠っている希和の頭に確かに聞こえてきた。
『希和ちゃん、生きている時は友達でいてくれてありがとう。希和ちゃん、あの時は本当に怖かった。あたし初恋もまだなのに……。せめて、恋をしたかったなあ……。それと、残された両親が心配で心配で……』
と、留美は訴えてきた。
なおも留美の話は続いたが、その声は悲しみで震えていた。
『父ちゃんも母ちゃんも、毎日家の中に引き籠って、あたしの仏壇の前で泣いてばっかりいる。このままじゃ、父ちゃんも母ちゃんも、衰弱死するか気がおかしくなってしまうよ。最初は復讐に燃えて、それを生きる力にしていたけれど、犯人の精神鑑定次第では、責任が問われないという最近の報道を見て「悔しい!」って。「なんで被害者ばっかり何度も何度も放送して、遺族までも辱しめるのか!」って言って、もうかわいそうで見ていられない!』
留美は、現在の両親の状態を告げた。
その訴えを聞きながら、希和には、娘を失ってからの留美の両親の映像が、ビデオの早送りのように次々に視えた。
『希和ちゃん……』
希和を呼ぶ、留美の声がした。
留美という大事な親友を亡くした悲しみから、寝ている時には留美のことを考えまいとしていた希和だったので、夢かな? と思った。
しかし、再び、
『希和ちゃん……、希和ちゃん』
留美の声が、眠っている希和の頭に確かに聞こえてきた。
『希和ちゃん、生きている時は友達でいてくれてありがとう。希和ちゃん、あの時は本当に怖かった。あたし初恋もまだなのに……。せめて、恋をしたかったなあ……。それと、残された両親が心配で心配で……』
と、留美は訴えてきた。
なおも留美の話は続いたが、その声は悲しみで震えていた。
『父ちゃんも母ちゃんも、毎日家の中に引き籠って、あたしの仏壇の前で泣いてばっかりいる。このままじゃ、父ちゃんも母ちゃんも、衰弱死するか気がおかしくなってしまうよ。最初は復讐に燃えて、それを生きる力にしていたけれど、犯人の精神鑑定次第では、責任が問われないという最近の報道を見て「悔しい!」って。「なんで被害者ばっかり何度も何度も放送して、遺族までも辱しめるのか!」って言って、もうかわいそうで見ていられない!』
留美は、現在の両親の状態を告げた。
その訴えを聞きながら、希和には、娘を失ってからの留美の両親の映像が、ビデオの早送りのように次々に視えた。
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