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第1章
2話 【イマワノキワ 不思議な女子中学生】
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希和の母方の家系は、代々シャーマンの血を引いていた。
古を辿ると、あの邪馬台国の女王・卑弥呼に繋がるらしい。
弥生時代、日本国のはるか前身である「倭国」に、”神の声を聞き、民を治める”「卑弥呼」という巫女がいた。
卑弥呼亡きあと、男性王が君臨するが国が乱れ、卑弥呼の一族である「イヨ」という、わずか十三歳の少女を女王に立てると、国がようやく鎮まったという。
希和の先祖は、このイヨという若き女王を補佐する数少ない重臣の一人で、「白妙族」出身のシャーマンだった。
白妙族は、通称”シロ”と呼ばれていたという。
希和の家系は、不思議と男の子が授からない、何代も続く女系一族だった。
しかし、シャーマンの能力は、ただ一人の選ばれた女の子にだけ受け継がれていった。
トヨも、希和の母と希和も、そんな選ばれた一人だった。
希和の先祖は、元々もっと日本の南の方に住んでいたらしいことを、以前、トヨが言っていた。その後、北へ北へと流れてきたと……。
詳しいことは、希和がもっと大人になったら必ず話すからと、トヨは説明した。
毎回、朝食前と夕食前にトヨと希和は、全ての自然と生物に対しての感謝と幸せを願い、白妙族に代々伝わる神棚の前で、長い長い祈りを捧げるのであった。
代々のシャーマンの中でも、希和は心が真っ白で純粋さが際立っていた。
そんな心のきれいな希和は、森の精霊や動物たち、自然や虫たちにまで愛されていた。
さっき、希和の頭に止まっていたモンシロチョウの「シロちゃん」も、その一人(一羽?)だった。
不思議は、希和が生まれた時から始まっていた。
夜半から猛吹雪となっていた天候が雨に変わり、やがて希和が生まれる直前にピタリとおさまり、雲が割れ、そこから陽の光が差し込み、太陽と同じ高さに光の輪が見える”幻日環”というとてもめずらしい現象が起きたという。
成長してからは、一人で外出すると、暑い日には希和の周りだけ風がソヨソヨと吹き、寒い日には希和の周りだけ陽が注がれ、雨も、希和が家に辿り着くのを待っていたかのように、ようやく降り出すのだった。
こんなこともあった。たまたま帰りが遅くなり家路が怖くなった時、どこからともなく大型の犬が現れて、希和の自転車にズーッと寄り添いながら付いて来たのだ。その様子は傍目には、飼われている犬が、飼い主と一緒にジョギンングをしているように見えた。犬は、希和が無事玄関に着くと、すぐに向きを変え、引き返して行ったのだった。
『この子は、代々のシャーマンの中でも、万物に愛され、守られている……』
同じシャーマンであるトヨでさえ、認めざるをえなかった。
ただ、トヨには希和の性格について、一点だけ危惧することがあった。
それは、希和の”生真面目さ”であり、具体的にいうと、”正義感が強すぎる”ことだった。
古を辿ると、あの邪馬台国の女王・卑弥呼に繋がるらしい。
弥生時代、日本国のはるか前身である「倭国」に、”神の声を聞き、民を治める”「卑弥呼」という巫女がいた。
卑弥呼亡きあと、男性王が君臨するが国が乱れ、卑弥呼の一族である「イヨ」という、わずか十三歳の少女を女王に立てると、国がようやく鎮まったという。
希和の先祖は、このイヨという若き女王を補佐する数少ない重臣の一人で、「白妙族」出身のシャーマンだった。
白妙族は、通称”シロ”と呼ばれていたという。
希和の家系は、不思議と男の子が授からない、何代も続く女系一族だった。
しかし、シャーマンの能力は、ただ一人の選ばれた女の子にだけ受け継がれていった。
トヨも、希和の母と希和も、そんな選ばれた一人だった。
希和の先祖は、元々もっと日本の南の方に住んでいたらしいことを、以前、トヨが言っていた。その後、北へ北へと流れてきたと……。
詳しいことは、希和がもっと大人になったら必ず話すからと、トヨは説明した。
毎回、朝食前と夕食前にトヨと希和は、全ての自然と生物に対しての感謝と幸せを願い、白妙族に代々伝わる神棚の前で、長い長い祈りを捧げるのであった。
代々のシャーマンの中でも、希和は心が真っ白で純粋さが際立っていた。
そんな心のきれいな希和は、森の精霊や動物たち、自然や虫たちにまで愛されていた。
さっき、希和の頭に止まっていたモンシロチョウの「シロちゃん」も、その一人(一羽?)だった。
不思議は、希和が生まれた時から始まっていた。
夜半から猛吹雪となっていた天候が雨に変わり、やがて希和が生まれる直前にピタリとおさまり、雲が割れ、そこから陽の光が差し込み、太陽と同じ高さに光の輪が見える”幻日環”というとてもめずらしい現象が起きたという。
成長してからは、一人で外出すると、暑い日には希和の周りだけ風がソヨソヨと吹き、寒い日には希和の周りだけ陽が注がれ、雨も、希和が家に辿り着くのを待っていたかのように、ようやく降り出すのだった。
こんなこともあった。たまたま帰りが遅くなり家路が怖くなった時、どこからともなく大型の犬が現れて、希和の自転車にズーッと寄り添いながら付いて来たのだ。その様子は傍目には、飼われている犬が、飼い主と一緒にジョギンングをしているように見えた。犬は、希和が無事玄関に着くと、すぐに向きを変え、引き返して行ったのだった。
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ただ、トヨには希和の性格について、一点だけ危惧することがあった。
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