グリムの精霊魔巧師

幾威空

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本編

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 ――廃墟となった高層ビル。辺りに漂う鉄錆の匂いと身体に叩きつける砂埃が舞う中、その屋上には一人の青年が狙撃銃を構えてじっと息を殺していた。

「――あと三つ……」

 照準器スコープ越しに見えるのは、十字に切られたほんのわずかな視野しかない世界だ。そのわずかな世界の外側を、これまでの経験と事前に叩き込んだ地形情報が青年の脳内で補完され、立体的な情報へと組み上げられている。ここに来てからどれだけの時間が経過したのかは、静かに銃を構える彼自身も覚えていない。

 ただ彼の頭にあるのは、照準器の中心、縦と横の線が交錯した点を標的ターゲットが通過するその度に、静かに引き金を引くのみだ。一瞬のタイミングを逃さない集中力と、その極度の集中状態を長時間維持する忍耐力が要求される過酷な環境にあるのだが、青年の表情にはまるで疲れた様子は見られなかった。

 引き金を引くと同時に、パシュッとどこか気の抜けた音が消音器サイレンサーを取り付けた銃口から漏れる。次いで薬莢の甲高い落下音が耳に届いた。

「――あと……二つ……」
 青年は足元に落ちた薬莢には目もくれず、ただ残りの標的数をカウントダウンする。照準器を通して頭を撃ち抜かれた標的が、だらしなく崩れ落ちるのを確認した青年の口からポツリと言葉が漏れる。

 しかしながら、紡がれたその短い言葉からは青年の抱いている感情は読み取れなかった。発せられたその声は、一切の感情を削ぎ落した、血の通った生物としての自分を殺した酷く冷たいものであった。

 そしてまた彼は引き金を引く。

「――あと一つ……」
 ただ標的を撃ち抜くために、引き金を引く――その行為自体に青年は一切の思考を挟まない。ただ照準器を通して見える標的の動き。それだけに注力し、タイミングを逃さず銃弾を撃ち込む。さながら、その淀みない一連の動作は機械と同じだ。

 ――残る標的はあと一つ。

 その最後の標的が照準器の中心を通過した瞬間――何故か視界が突如として黒く塗り潰された。

「……うぁ? 俺は――寝てた……のか」

 黒く塗り潰された視界が再び光を取り戻した時、目の前に煌々と光を放つPCの画面と、机の上に並ぶ栄養ドリンクの墓標が現実を静かに教えてくれた。

◆◇◆

「あぁ……俺の人生、どこで間違えたんだろ?」
 時計の針が日付の変わることを静かに告げる頃、本宮もとみや数馬かずまは大都会の真ん中で一人オフィスの外に出ていた。胸元のポケットから取り出した煙草を咥え、だらしなく開けた口から紫煙を吐き出す。夜の闇に漂う煙の行く先をぼんやりと眺めながら、気づけば誰に聞かせるわけもなく心の中に突如として湧いた疑問をそのまま呟いた。

 言葉と共に口から吐き出された煙がゆらゆらと漂っては吸い込まれるように夜の闇の中に消えていく。
 闇に溶けるように消えていく煙をぼんやりと目で追いかけることで、心の中に巣食う虚無感が幾らか薄まるのではないか……などと考えながら。

(ったく……何言ってんだか。エナジードリンクでも飲み過ぎて、思考回路がおかしくなってんのかな?)

 感傷に浸る自分を軽く嘲りつつ、数馬は再び紫煙を吐き出した。

 こうして真夜中に煙草を吹かしては何の気なしにバカなことを零すのも、納品間近のシステムにトラブルが生じ、数日前から会社にカンヅメになっているからだと数馬は自嘲気味に自身を分析する。
 かれこれ十数時間もの間PCの画面とにらめっこをしてはデバック作業をしている彼の頭は、いい具合にとろけ切っている。

 ふと吐き出した彼の疑問に答える人間はおらず、代わりに真冬の寒さが彼の肌をチクチクと刺す。

「……仕事、戻るか」
 備え付けの灰皿に吸殻を落とした数馬は、一度大きく身を震わせると背を丸めてオフィスに戻っていった。
 その日、既に真っ暗なオフィスの片隅にある数馬の机の上は明け方まで煌々とモニターから漏れる光で照らし出されていた。

「野間さん! 渡辺が机に突っ伏して気を失ってます!」
「あぁ!? んなもん水でもブッかけて叩き起こせ!」
「鈴木の机の上に辞表が……」
「何だと? もう納期まで時間がねぇってのにか!」

 数馬が勤めるのは、都内にある小さなソフトウェア会社である。その会社では、各プロジェクトリーダーが部下から上がる報告に日がな錐揉みしながら、時に叫び、時に発破をかけては慌ただしく業務をこなしている。

 特に納期間近のプロジェクトともなれば、それこそ毎日が修羅場である。「スケジュールがタイトになってきているなぁ」などと感じるのはまだいい方……いや、天国とも言える状態だ。

 納期間近に平然と仕様の追加変更や膨大なソースのバグ検証、そして燃え尽きた戦士(同僚)たちの骸が栄養ドリンクという墓標の名の下に晒されている光景、チームを取り巻く修羅場展開についていけずに「退職届」というリタイアを突き付ける仲間、そして失った仲間の皺寄せを受けて発狂寸前まで追い込まれるメンバー……そんな一見して地獄とも呼べる状況も、数馬にとっては日常の一コマとなってしまっている。

 もちろん、このような状況は入社当時の数馬もドン引きした光景なのだが、人間とは摩訶不思議な生き物で、半年も経たずにこの光景に慣れてしまった。いや、感覚が麻痺したと呼べばいいのか。
 原因はどうであれ、修羅場展開に直面した同僚の叫びや上司の怒号など、今の数馬にとっては単なるBGMでしかない。

「ぐうぅっ……! 時間が無い、人手も足らない。一体どうしろってんだよ……」
 次々と上がる社員の報告に、彼らを率いるリーダーである野間のま慎二しんじは頭をガリガリと掻きながら呻いた。

 元々は野間率いる開発チームは再三にわたって営業部隊の社員に「期間が足らないから」と依頼主クライアントとスケジュールを調整するよう申し出ていた。
 しかし、営業は野間たちの要請を聞き流し、あろうことか依頼主からの要望をそのまま安請け合いして開発チームに投げ寄越してくる始末だった。

 営業は契約を取ることがその使命だから、そんなことは普通だとも思うだろう。もちろん、今回のケースもそんな「普通の出来事」、「業界あるある」が引き起こした悲劇の一つに過ぎない。

 ――けれども、そんな無茶なスケジュールの責任を取らされるのは、いつも現場だ。 

 かくいう野間自身も危機感を覚えていたのだが、あれよあれよという間に想定以上の悲惨な現状を迎えてしまったことに頭を抱えるほかなかった。

「あのぅ、すみません……」
「あ゛ぁ!? 何だよこのクソ忙しい時に!」
 耳に入る部下からの報告に頭を抱えたプロジェクトリーダーである野間に、するりと数馬は近づいてぽつりと告げる。

「あー、野間さん? 良かったらヘルプ入りますよ」
「本宮……お前……」
 福音たるその声に、ガバリと面を上げた野間は、「本当か!?」と目を輝かせながら訊ねる。
「だ、だがよ……お前の方もいくつか案件抱えてただろ?」
「はい。ですが、俺の方も手持ちの案件についてはほぼ終わりが見えてますし、あとは俺抜きでもなんとか大丈夫そうなんで」
 数馬の言葉に目を潤ませた野間は、急速に声を張り上げる。

「おぉ、そうか! なら話は早い。早速だが手伝ってくれ!」
「分かりました。それじゃあ状況を確認したいんで、進捗管理を見せてもらってもいいですか?」
「おう、任せろ」
 モチベーションの戻った野間は、席に戻っていく数馬に大きく頷きながら進捗管理のあるフォルダパスを連絡する。

「えぇっと……ここのモジュールのコーディングが遅れてるのか。んで、先方からの仕様追加、と。う~ん……これはちょっと他のモジュールも修正が必要かなぁ」
 画面にいくつもの画面を開き、手早くファイルを開きながらプログラムの概要を叩き込んだ数馬は、手慣れた様子で次々と指示を出していく。

「野間さん、ここの遅れてるモジュールは一括で俺の方で引き受けますんで、仕様追加の件について先方にOKの返事を連絡しておいてください。ただし、これ以上の追加は流石にスケジュール的に厳しいので、その点も併せて先方から了解を得てください。必ずですよ!」
「おうよ! 分かった。連絡しておく!」
「それから水野さん、仕様変更にあたっては君の担当してるモジュールのコーディングを若干変更しなきゃならない。該当箇所と変更するソースコードはあとで連絡するから、チェックと修正頼むね。菊池さんは私が組んだプログラムのチェックとテストをお願いします。夜以降から時間がタイトになるから、渡辺さんと田所くんは今のうちに少し休んで。二人には夕方から順次他のプログラムとの接続テストと検証をメインにしてもらうから」
「「「は、はい!」」」
 テキパキと周囲の若手社員へ指示を出す数馬に、それまで炎上していた現場が鎮まり、各自の作業に戻っていく。それまで暗いトンネルの中にいた者たちが、数馬の言葉で終わりへ向けて足並みを揃えた。

「それじゃ……ちゃっちゃとやりますか」
 数馬の指示により活力を戻していくメンバーを見やった彼は、ぐいっと腕まくりをしてキーボードに両手を置く。そんな臨戦態勢とも呼べる数馬に、向かいの席に座る山田という壮年の男性が声をかけた。
「おぅ、そこのモジュールは結構頻繁に仕様変更があって前の担当者も相当苦戦してた代物だぞ? それを一手に引き受けるたぁ気前がいいな」
「ハハッ、何言ってるんですか、山田さん。俺は日頃からヘルプばっかりですからねぇ……これぐらいの炎上はいつものことですよ。それに……これぐらい骨のある方が、逆に燃えるってもんですよ」
 苦笑いを浮かべて画面上にエディターを立ち上げた数馬は、その言葉を最後に猛烈な速さでキーを叩き始めた。画面上に幾つものウィンドウが開かれては閉じられる。また、キーボード上を踊る指に倣うように、画面上に表示されたコードが濁流のように上から下へと流れていく。

「やれやれ。俺も負けてらんねぇな……」

 作業に没頭する数馬の姿に感化され、山田はそんな言葉を呟きながら自らの仕事に打ち込んでいった。

◆◇◆

 数馬のヘルプにより瀕死間際から急速に息を吹き返した野間のチームは、それまでの遅れを取り戻し、無事に期日までに製品を納品することができた。
「よっし! 無事に納品終了だ。お疲れ様」
 クライアントとの連絡を終えた野間は、受話器を置くとニヤリと口角を吊り上げて部下たちの苦労を労った。

「本宮もお疲れ様だったな。どうだ? 納品も終わったし、今日は早く帰れるだろ? どうだ、一杯」
 くいっと杯を傾ける仕草を見せながら誘う野間に、数馬は「いやぁ……」と歯切れの悪い口調で言葉を返した。
「流石にここんとこ会社に泊まり込みが多かったんで、そろそろ家に戻りたいんですよ」
「そうか。悪かったな」
「いえ。でも今度行く時は奢ってくださいね?」
「懐が痛まない程度ならな」
 数馬の提案に野間は微笑を浮かべて他のメンバーの席へと移っていく。

(……さて、と。俺も帰るか)

 端末の電源を落とした数馬は、ここ連日の徹夜でふらふらになった身体を引きずるようにオフィスを後にした。

「本宮さんって凄いですよね……」
 数馬が去った後、入り口を見つめていた女性社員がポロリと言葉を漏らした。彼女は数馬が横で作業する様子を眺めていた一人である。

「確かにそれは言えてるかもね。流石『最終兵器』って呼ばれるだけはあよね……」
 彼女が零した言葉に、缶コーヒーを飲んでいた別の女性社員が言葉を返した。
「あ~それは分るかもです。この前、先方のあるプログラムの改修作業をしてたんですけど、一部のソースコードが見たことも無いような古いプログラム言語だったんですよ。見慣れないコードで、全く知識が無いから読めないしで、どうしようかと思ってたんですけど、その時焦る私を見ていた本宮さんがサクッと解析して教えてくれたんですよね……あの人、ほんと何者なんですか? 今日日、そんな古い言語使うことないのにチラッと見ただけでどんなプログラムなのか把握してましたし」

 数馬の話を聞きつけた別の社員が、当時の事を思い返しながら言葉を発する。本人のいないところで盛り上がる様子に、その話を聞きつけた山田が小さく笑いながらその質問に答える。

「まぁそう思うのも無理はねぇわな。アイツは今回のプロジェクトよりも遥かにヤバい案件に携わってきたんだ。そこで鍛えられたスキルは伊達じゃねぇ。今じゃあ化石みてぇな古い言語はもとより、書店で並ぶような有名どころの言語は大抵扱えるからな」
 山田の発言を受け、納得顔で頷く女性社員たちに今度は山田の席の隣にいた男性社員が話に加わる。
「それにあの人の書いたソースコード……他の人のより分かり易くて読みやすいんですよねぇ……」
「そうそう! そうなんですよ! 私も今回初めて本宮さんのヘルプを受けたんですけど、あの人から受け取ったプログラムのソースが分かり易くて作業が捗りましたもん。大抵の場合は、コメントが打ってあっても実際の処理内容とは違ってたりしてさらにドツボに嵌るのに。あの人の書くコードはなんていうか……痒い所に手が届く、みたいな?」
「あー、それは分かるかも。『こんなやり方があったんだ』ってタメになることも多いしねぇ~」
 するりと山田の耳に届いた他の社員たちの言葉に、「それは俺のことをディスってんのか?」と軽く突っ込みを入れてその談笑は幕を閉じた。

◆◇◆

(そう言えば、俺ってどれぐらい家に帰ってなかったっけか……?)

 コートで身を包み、寒空の下で家の最寄り駅のホームに到着した数馬は、ホームの端を歩きながらふと心の内にそんな言葉を呟いた。記憶を辿れば、かれこれ一週間以上も家に帰らず会社で寝泊まりする日々が続いていたことに気づく。

 会社を出て一時間半ほど電車に揺られて辿り着いた最寄り駅。その駅にはまだホームドアが未整備で、改札へと歩く数馬の耳に、来月よりホームドアを設置いたします、との案内放送が流れてくる。
「――間もなく快速列車が参ります。列車が通過いたしますので、電車をお待ちの方はご注意ください」

(……やれやれ。これじゃあ腕も鈍るわけだ。家に帰って軽く寝たら、久しぶりにログインしてみようかな)
 耳に届くアナウンスを聞き流しつつ、数馬は小さくため息をついた。ホームの端を歩く今の彼の脳裏には、仕事で長らく手をつけられていないネットゲームのとある風景が描かれている。
 毎日多忙を極め、日がなPCの画面を前にプログラムを組む数馬の唯一といって言い趣味。それがネットゲームであった。

 特にファーストパーソン・シューターFPSと呼ばれる、主人公の本人視点でゲーム中の世界・空間を任意で移動し、武器などを用いて戦うアクションまたはシューティングゲームでは、見ている者を思わず引き付けるほどの腕前を持つ。数馬の基本的な戦闘スタイルは、両手に二丁の拳銃を装備して撃ち合うスタイルだ。

 そして、次々と敵が襲い来る中、まるで精密機械のように正確にヘッドショットを決める戦い方が彼の基本的なスタイルである。しかし、場所によっては遠距離から標的を静かに撃ち抜く狙撃もこなす。

 要するに、銃器であればハンドガンから狙撃銃まで何でもござれの器用さを数馬は有していた。標的から数キロ離れたブラインドポジションから狙撃銃を手にヘッドショットを決める……なんてプロでも難しいと評することも、彼のテクニックならば可能となる。そんな数馬は、その手のネットゲームの中では知る人ぞ知る有名人であった。

 ただ、最近は仕事が忙しく、たまにログインしてもどこかもどかしく思えるほど腕が鈍り始めていると自分でも認識しているのが懸念材料であるのだが。

(まぁ何にせよ、まずは帰って寝ることが第一優先だな。流石に疲れた……)

 連日の泊まりで溜まった疲労により、数馬の身体は若干足元がおぼつかない状況になっていた。「電車に乗れば、ある程度は眠れる」と淡い期待を抱きながら、ホームの端を歩く彼の前に、体格の良い青年がスマホの画面を見ながら向かってきたのは丁度その時であった。

(危なっかしいなぁ……)

 心の内にそんな事を思いながら、数馬と前から来た青年が交錯する。
 その瞬間――

「あっ……!?」
 青年の肩と数馬が肩に掛けていた鞄がぶつかり、足がもつれた数馬が線路に投げ出された。
 そして、落下する数馬を狙い撃ちにするかのように、スピードの乗った列車がホームに侵入する。

 ――鳴り響く警笛
 ――蒼白した顔で線路に落下していく数馬を見る運転士
 ――軋むブレーキ音

(えっ……? 俺は――死ぬ、のか?)

 コマ送りのようにゆっくりと流れる景色を見つめる数馬の脳裏に、これまで過ごしてきた日々が濁流の如く流れていく。

(あぁ、これが走馬灯ってヤツなのか……)

 流れゆく景色にふと心の中に、数馬はそんな言葉をポツリと呟いた。

 ――特に目的もなく大学に進学し、奨学金の返済という名の脅しに屈し、周りと合わせるかのように就職。
 ――来る日も来る日もPCの画面と向き合ったため、視力は加速度的に下がり、目はボロボロになった。
 ――それでも嘲笑うかのように「仕事」という敵(モンスター)は際限なくリポップし、身体を酷使する自分を追い詰める。
 ――いつしか社の「最終兵器」と呼ばれ、頼られるまでになるが、周囲から期待されるほど逆に自分の心が擦り減っていった。

 正直に言えば、数馬自身ふとした瞬間に「死んだら楽になれるかな」などと思ったこともあった。けれども実際に死が間近に迫ったとき、彼の心の内に浮かんだ思いはそれとは真逆のものであった。

(ふざけんな。俺は……死にたくない。こんな結末受け入れられるかよ。クソッタレが)

 それは彼の内に眠っていた生存本能が呼び起こした衝動であった。

(クソッ! 動け、動け、動けよ! 俺は……まだ死にたくない!)

 浮遊感に身体を包まれながら、必死に状況を打開しようと数馬はもがく。けれども現実は、そんな彼の内なる思いを嘲笑うかの如く、先頭車両が身体に突っ込む。同時に強烈な衝撃と共に数馬の意識は無情にもブラックアウトする。

 ――本宮数馬。享年二十九歳。余りにも若くしてこの世を去った青年の一生は、こうして幕を降ろす……はずだった。
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