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本編
Module_016
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その日、いつものように食料の調達がてら森の中を探索していたセロは、ふと発動した探索術式に魔物や野生動物とは異なる存在が引っかかった。
「……うん? この反応はもしかして……」
気になって反応のした方へと進むと、セロの視線の先には一頭の牛の魔物と戦闘を繰り広げる人たちの姿があった。魔物と戦う人間は、総勢五名。それぞれが剣に短剣、斧に杖を持ち、連携して対処している。
だが――
「……あっ、危ないっ!」
セロが思わず声を漏らした直後、興奮して突進した牛の鋭い角が斧使いの腹に突き刺さったのだ。
◆◇◆
遠くから自分たちを見つめる者がいることなど全く気付かないその集団は、目の前で暴れる牛の魔物の討伐にその意識を集中させていた。
魔物と対峙する五名からなるパーティー。そのパーティーは名を「ホワイトナイツ」といい、このスタイプスの森から南下した位置にある自治都市「グリム」の自治組織に所属するクラン(同じ志や教義、価値観を有する者たちの集まり)の一つであった。
ギルドに所属する者たちは、皆「冒険者」という職業に分類される。彼らまたは彼女らは、ギルドに寄せられた依頼を受けて魔物の討伐や薬草・鉱石などの採取を行い、その依頼達成の対価として支払われる報酬を日々の糧とする職業である。
クラン「ホワイトナイツ」の構成員たる五名は、女性がニ、男性が三のメンバーからなり、それぞれ「戦士」「剣士」「術師」「盗賊」を担当している(なお、攻撃の主役たる剣士は二名。うち一人がリーダー)。
先ほど魔物の攻撃を受けた斧使いは、相手の攻撃を受けつつ強烈な一撃を叩き込む「戦士」を務める大柄で屈強なグランという男性である。彼の他には長剣を手に攻撃を仕掛ける前衛を務める短髪の青年キールに、同じく長剣を手に全体の指揮を執るリーダーを担う、キールと同年代の青年のカラクがいる。
一方、女性陣は後方から支援する術師役のアルバ、斥候や罠解除を得意とする盗賊担当のミランがいる。
既に何度も攻撃を仕掛けたことが奏功したからか、対峙する魔物の身体にはいくつもの切り傷が生まれている。数の面から見ても、状況は武装した人間たちに有利だ。
だが、もう少しで仕留めきれる――その油断が彼らを新たな危機へと誘う。
魔物を討伐しようと剣や斧を持つホワイトナイツの面々。手負いの魔物だからと仲間たちとの距離をわずかに開けた一瞬を突くように、魔物は最期の突進攻撃を仕掛けた。
「――ぐうっ!?」
隙を見て突っ込んだ牛の魔物は、その進路を斧使いの屈強なグランに阻まれる。その重量と突進のスピードを乗せた攻撃で彼の腹に顔の両側から突き出た角を食い込ませることには成功したものの、横から仕掛けたキールの剣に斬られてその命を終えてしまう。
しかし、命を賭けた攻撃ともあって、仲間の盾となって傷を負ったグランの腹からは、少なくない量の血が滲んでいた。
「チイッ、思ったより傷が深い……回復はどうだ!」
パーティーのリーダーたるカラクが杖を持つアルバに声を掛けるも、相手は力なくその首を横に振った。
「無理よ。もう私の杖は使い物にならない。精霊結晶の色がほとんど失われている。小さな傷ならまだしも、これじゃあ重傷者の回復は無理よ」
「おいおい! どーすんだよ! さっきの戦闘で手持ちの回復系のポーションは全部使い切っちまったんだぞ!」
回復が出来ない異常事態に、魔物を仕留め終えたキールが苛立ちを混ぜた声を上げる。その間にもグランの顔色はみるみる青ざめたものに変化し、その腹から出る血は止まる気配を見せない。
(まいったな。自力でここから立ち去ることができたのならまだ対処のしようがあるのだが……)
カラクは目の前で倒れる仲間のグランの容体を目にしつつ、この危機を乗り越えるにはどうすべきか、と思い悩む。この場ですぐに回復させられない以上、現状では深手を負った仲間を抱えて街に戻るのが最善の方法だろう。
しかし、グランほどの体躯を支え、街まで戻るのはそれなりに時間がかかる。下手をすれば数日は野宿することも覚悟しなければならないだろう。加えて、負傷者がいるこの状況では、魔物に襲われた挙句、クランが全滅するリスクさえ高い。
最悪の選択を取らざるを得ないか……ふと、カラクの脳裏にそんな考えがよぎった時、近くの茂みが音を立てて揺れた。
「――っ!」
不意に自分たちに近づく物音に、その場にいた全員の警戒心が跳ね上がる。互いに目配せを交わしながら、緊張を貼りつけた顔を音のした方へと向ける。
だが、その茂みの奥から姿を見せたのは――
「あれっ? こんなところに……子ども?」
彼らの予想に反し、姿を見せたのは、自分たちよりも幼い子どもであった。魔物を警戒していたホワイトナイツのメンバーの間に安堵が広がり、メンバーの一人であるミランの声が辺りに響く。
ミランの声を端緒にメンバーの視線を集めたセロは、雪のような白髪を揺らして真紅の瞳をホワイトナイツの面々に向ける。茂みから現れたセロは、その視線を倒れるグランに移し、声を上げたミランに対して静かに問いかけた。
「ったく……ほらっ、ぼうっとしてていいのか? そこに倒れてる人、回復させないとマズイいんだろ?」
不意に現れた子どもの言葉にハッとした面々は、今度は倒れているグランの容態を改めて確認する。仰向けになり、仲間から介抱される彼は、大量の血を失い、息も絶え絶えといった状態であった。その容体は、もはや一刻の猶予もない状態であろうことは容易に想像できる。
「あぁ、君に言われなくとも分かっているさ。ただ……我々にはもう彼を回復させる手段は残されていない」
セロの指摘にメンバーを代表したカラクが苦い表情を浮かべながら答える。その表情からは「もう諦めることしか出来ないのか……」といった暗い影が差し込み、自身の不甲斐なさと悔しさがありありと見て取れた。
(そんなコトだろうと思ったよ。う~ん、どうしようか。俺も「回復薬はもっていないから」と言ってさっさとこの場から立ち去るのは簡単だけど、あの倒れてる人を見捨てるようで気が引けるしなぁ……。それに、俺が見捨てたことが原因で死んでしまうのも寝覚めが悪いし)
目の前のカラクの表情を捉えたセロは、思案した挙句、無言のままスッと倒れるグランの側に歩み寄り、倒れる彼の口にポーチから取り出したポーションを流し込んだ。
「おい! お前……一体何……を」
「いいから、黙って見てろ」
近づいた子どもにホワイトナイツの剣士であるキールがやや鋭い口調で話かけるも、そのキツイ口調はすぐさまトーンダウンする。
それもそのはず。何故なら、あれほど酷かったグランの容態が、流し込んだポーション一つで傷が塞がり、絶え絶えであった息も落ち着いたうえ、顔に赤味が戻ったからである。
「君は一体……」
症状が劇的に改善したグランに安堵しつつも、カラクは突如自分たちの目の前に現れた子どもに問いかける。
「俺の名はセロ。この森で暮らしている。狩りの途中で偶然あんたらを見かけたんだが、余計な世話だったか? 倒れているこのオッサンに手をこまねいていたようだったから、もしかしたら回復させることができないんじゃないかと思って来たんだ。どうやら手持ちのポーションで一命を取り留めることができたみたいだけどな」
「い、いや……私たちのポーションはもう無かったんだ。仲間を助けてくれて感謝する」
その見かけからは想像もできないほどに大人びた口調ですらすらと説明するセロに、メンバーを代表してカラクがやや言葉を詰まらせつつも感謝の言葉を告げる。
「礼はいい。困った時はお互い様というからな。ただ、ポーションで回復はできたようだが、これだけの傷だ。しばらくは安静が必要だろう。とは言え、ここはまだ危ない。夜になれば夜行性の魔物も徘徊するしな。それなら……近くに俺の家があるけれど……どうする?」
ガランの処置を終えたセロは、リーダーであるカラクの顔を見ながら問いかける。
その彼の言葉に、カラクをはじめ、パーティーの全員が頷くのだった。
◆◇◆
「まぁ、ちょっと散らかっているけど、どうぞ」
「……」
道中に自己紹介を済ませたホワイトナイツの面々は、案内するセロに率いられ森の中心へと進む。やがて無骨な土の箱らしき建物の前で立ち止まったセロは、わずかばかりの謝罪を述べつつ、セロはホワイトナイツのメンバーを土箱の家の中へ招き入れた。招かれたメンバーたちは、その中に入って唖然とする。
何故なら、その見た目の無骨さからは到底想像も出来ない、快適な空間が広がっていたからだ。
「大丈夫か? だいぶ疲れているようだけど……もし疲れが溜まっているなら、これでも飲んでおくといい」
そう言ってセロが人数分のポーションをカラクたちに差し出す。ホワイトナイツのメンバーは、計五名。その全員に気前よくポーションを渡したセロに、カラクは目を見開きながら「いいのか?」と訊ねる。
「うん? ……どうしてだ?」
「どうしてって、そりゃあポーション一つとっても、それなりに値が張る代物だろう? 一番効果の低い下級のポーションだって、そんな気軽に使うもんでもないだろうに」
首をわずかに傾げて問ひ返すセロに、剣士のキールが呆れ口調で答える。その返答に、セロは「へぇ……そうなんだ」とどこか他人事のような相槌を打ちながら、
「ポーション自体の相場が分からないけど、こっちとしては全然問題ないさ。ポーションぐらいなら、材料さえあれば簡単に自作できるし」
などと平然と言い切る。そのセロの言葉に、今度はキールが口をポカンと開けながら、その目を横にいるカラクに向けた。
「す、すまない、セロ……君。今、君は『自作できる』と言ったね。君は薬師か何かなのかい?」
「いや、俺は薬師じゃない。そもそも誰かに師事したことはないしな」
「なら、どうやってこのポーションを……?」
カラクは手にしたポーションの瓶を見つめながらセロに訊ねる。彼も冒険者という職業柄、何度もポーションの世話になった経験がある。その彼の目からすれば、今目の前にあるポーションは、下級のものとは言え、その品質は中級のそれに迫るものと判断できる。
それほどまでの高品質なポーションを惜しげも無く、人数分手渡せるセロの存在が、カラクの興味を引いた。
「うーん……まぁ、口外しないと約束できるなら」
「……分かった。ホワイトナイツの名にかけて、製法のことは口外しないと約束しよう」
腕を組み逡巡した挙句、セロは条件付きでカラクの疑問に答えることに了承する。そして、一度奥へと引っ込んだセロは、一抱えある箱を携えて再びカラクたちの前に現れる。
「……これは?」
「名前は付けてないけど……強いて言うなら『メイキングボックス』ってトコかな」
セロはポケットから取り出した銀色の手のひらサイズのカードを置いた箱のスリットに差し込み、ドーム型の蓋を開ける。
「メイキングボックス……? 具体的にどんな仕掛けになっているんだい?」
さらに訊ねるカラクに、セロは「なら、実演しようか?」と持ちかける。頷いたカラクに、セロは部屋の隅に置いていた薬草と魔物から採取した魔核、そして近くの川から汲んで来た水を箱の上部に取り付けられた小箱の中にそれぞれ投入する。
「瓶の材料になる砂はまだ十分あるから、これで準備は完了だな。あとはスイッチを入れれば、この箱の中で自動的に薬が出来上がる」
「えっ!? そ、そんな簡単に?」
セロの説明に、短剣を腰に吊った女性が声を上げる。
「いや、ミラン。材料を入れてスイッチを押すだけで薬が出来るなど、私も聞いたことが無い」
声を上げた女性に対し、カラクが首を横に振りながら答える。一方、セロはそんな彼らの会話を耳にしつつも、持って来た箱を軽く叩きながら説明を続ける。
「ポーションの材料は原料となるリング草、薬効を増幅させる魔核、そして清潔な水の三つ。この箱は、リング草の乾燥と粉砕、魔核の粉砕、そして粉砕し終えたリング薬と魔核、水の混合液を煮沸、蒸留の工程をワンストップで行うことができる。また、出来上がった薬液は、あらかじめセットしておいた瓶に入れて箱から出てくる仕組みだ」
セロの説明が終わると同時に、チンと鳴った箱の側面からカラクが手にしているものと同じポーションが出て来た。流れるような説明を、カラクは呆けた顔で聞き入る。
「これってもしかして……精霊導具なんですか?」
説明に耳を傾けていたメンバーのうち、支援役を担うアルバが問いかける。セロはその質問に、ゆっくりと頷きながら答えた。
「まぁな。この箱の中には火、風、水、土の属性を持つ精霊結晶が内臓されている。リング草や摩核の粉砕及び撹拌には風属性、撹拌後の蒸留には火属性の精霊結晶が作用している。一応、魔核だけを入れるとポーション瓶も作製できる。これは土属性の精霊結晶の作用だけどな」
「……」
つらつらと流れるようなセロの説明に、居合わせたホワイトナイツの面々は今度こそ言葉を失った。稀少な精霊結晶を複数属性つぎ込んだこの『メイキングボックス』の価値もさることながら、それを使いこなし、一つの精霊導具として成立させてしまうセロの技量に、カラクは内心脱帽するほかなかった。
「セロ君。君は……もしかして『機巧師』なのか?」
「機巧師? あぁ……そういや、そんな職業があるんだっけか。う~ん……まぁそれが一番近いだろうが、俺は別にライセンスは取ってない」
「はぁ!? こんな凄いものを作ったのに、機巧師のライセンスを持ってないですって?」
カラクの問いに答えたセロに、ミランが素っ頓狂な声を上げる。
「なら、どうやって精霊導具を作る技術を身につけたんだ?」
「そ、そうですよ! 精霊回路を引けるまでに一年、まともな精霊構文を書けるようになるまで三年、ゼロから精霊導具を作り上げられるようになるまで五年はかかると言われていますが……」
声を荒らげたミランの意見に同調するように、彼女の横にいたキールとアルバが首を傾げながら訊ねる。
「『どうやって』って言われても……独学でとしか言えないな。関連の本を読み漁って覚えた。あとはここで生活する中で、実践して身につけた」
顎に指を当てながら、セロはそうポツリと呟いた。
(うん。嘘は言って無いよな。前世ではもともとエンジニアとして会社に勤めてたケド、それはあくまで下地であって、この世界で精霊構文に出会ったのはあの施設の中だったし)
「ど、独学でって……嘘でしょ……」
彼の言葉に、ミランは愕然とした表情を見せながらうわ言のように呟く。
「その言葉通りなら、驚きしかないですよ。これほどのものを独学で身につけた知識と技術で作り上げるなんて。通常、機巧師になるには専門の教育機関で勉強したのち、難関とされる認定試験に合格しなければならないというのに……」
「はぁ~。いるんだな、天才って」
ミランの言葉に続き、アルバとキールもどこか呆れた調子でセロを見つめる。しかしながら、当の本人はどこか不満気な態度を見せながら、彼らの言い分に異を唱えた。
「えっ……? そんなに凄いか? 俺としてはまだまだ改善の余地があるとしか思えないんだがな。まず精霊結晶を使わないと稼働できないし、一定量の薬液を作り出すのにかかる材料が多過ぎる。せめて精霊石で稼働できるように省力化させる必要があるし、もっと少量の薬草と魔核から薬液を生成できるように、もっと効率化させないと……」
「……」
目の前の精霊導具に、セロは不満気にガリガリと頭を掻きながらつらつらと改善点を指摘する。一方、対するホワイトナイツのメンバーはそれ以上何も言えなかった。
「……うん? この反応はもしかして……」
気になって反応のした方へと進むと、セロの視線の先には一頭の牛の魔物と戦闘を繰り広げる人たちの姿があった。魔物と戦う人間は、総勢五名。それぞれが剣に短剣、斧に杖を持ち、連携して対処している。
だが――
「……あっ、危ないっ!」
セロが思わず声を漏らした直後、興奮して突進した牛の鋭い角が斧使いの腹に突き刺さったのだ。
◆◇◆
遠くから自分たちを見つめる者がいることなど全く気付かないその集団は、目の前で暴れる牛の魔物の討伐にその意識を集中させていた。
魔物と対峙する五名からなるパーティー。そのパーティーは名を「ホワイトナイツ」といい、このスタイプスの森から南下した位置にある自治都市「グリム」の自治組織に所属するクラン(同じ志や教義、価値観を有する者たちの集まり)の一つであった。
ギルドに所属する者たちは、皆「冒険者」という職業に分類される。彼らまたは彼女らは、ギルドに寄せられた依頼を受けて魔物の討伐や薬草・鉱石などの採取を行い、その依頼達成の対価として支払われる報酬を日々の糧とする職業である。
クラン「ホワイトナイツ」の構成員たる五名は、女性がニ、男性が三のメンバーからなり、それぞれ「戦士」「剣士」「術師」「盗賊」を担当している(なお、攻撃の主役たる剣士は二名。うち一人がリーダー)。
先ほど魔物の攻撃を受けた斧使いは、相手の攻撃を受けつつ強烈な一撃を叩き込む「戦士」を務める大柄で屈強なグランという男性である。彼の他には長剣を手に攻撃を仕掛ける前衛を務める短髪の青年キールに、同じく長剣を手に全体の指揮を執るリーダーを担う、キールと同年代の青年のカラクがいる。
一方、女性陣は後方から支援する術師役のアルバ、斥候や罠解除を得意とする盗賊担当のミランがいる。
既に何度も攻撃を仕掛けたことが奏功したからか、対峙する魔物の身体にはいくつもの切り傷が生まれている。数の面から見ても、状況は武装した人間たちに有利だ。
だが、もう少しで仕留めきれる――その油断が彼らを新たな危機へと誘う。
魔物を討伐しようと剣や斧を持つホワイトナイツの面々。手負いの魔物だからと仲間たちとの距離をわずかに開けた一瞬を突くように、魔物は最期の突進攻撃を仕掛けた。
「――ぐうっ!?」
隙を見て突っ込んだ牛の魔物は、その進路を斧使いの屈強なグランに阻まれる。その重量と突進のスピードを乗せた攻撃で彼の腹に顔の両側から突き出た角を食い込ませることには成功したものの、横から仕掛けたキールの剣に斬られてその命を終えてしまう。
しかし、命を賭けた攻撃ともあって、仲間の盾となって傷を負ったグランの腹からは、少なくない量の血が滲んでいた。
「チイッ、思ったより傷が深い……回復はどうだ!」
パーティーのリーダーたるカラクが杖を持つアルバに声を掛けるも、相手は力なくその首を横に振った。
「無理よ。もう私の杖は使い物にならない。精霊結晶の色がほとんど失われている。小さな傷ならまだしも、これじゃあ重傷者の回復は無理よ」
「おいおい! どーすんだよ! さっきの戦闘で手持ちの回復系のポーションは全部使い切っちまったんだぞ!」
回復が出来ない異常事態に、魔物を仕留め終えたキールが苛立ちを混ぜた声を上げる。その間にもグランの顔色はみるみる青ざめたものに変化し、その腹から出る血は止まる気配を見せない。
(まいったな。自力でここから立ち去ることができたのならまだ対処のしようがあるのだが……)
カラクは目の前で倒れる仲間のグランの容体を目にしつつ、この危機を乗り越えるにはどうすべきか、と思い悩む。この場ですぐに回復させられない以上、現状では深手を負った仲間を抱えて街に戻るのが最善の方法だろう。
しかし、グランほどの体躯を支え、街まで戻るのはそれなりに時間がかかる。下手をすれば数日は野宿することも覚悟しなければならないだろう。加えて、負傷者がいるこの状況では、魔物に襲われた挙句、クランが全滅するリスクさえ高い。
最悪の選択を取らざるを得ないか……ふと、カラクの脳裏にそんな考えがよぎった時、近くの茂みが音を立てて揺れた。
「――っ!」
不意に自分たちに近づく物音に、その場にいた全員の警戒心が跳ね上がる。互いに目配せを交わしながら、緊張を貼りつけた顔を音のした方へと向ける。
だが、その茂みの奥から姿を見せたのは――
「あれっ? こんなところに……子ども?」
彼らの予想に反し、姿を見せたのは、自分たちよりも幼い子どもであった。魔物を警戒していたホワイトナイツのメンバーの間に安堵が広がり、メンバーの一人であるミランの声が辺りに響く。
ミランの声を端緒にメンバーの視線を集めたセロは、雪のような白髪を揺らして真紅の瞳をホワイトナイツの面々に向ける。茂みから現れたセロは、その視線を倒れるグランに移し、声を上げたミランに対して静かに問いかけた。
「ったく……ほらっ、ぼうっとしてていいのか? そこに倒れてる人、回復させないとマズイいんだろ?」
不意に現れた子どもの言葉にハッとした面々は、今度は倒れているグランの容態を改めて確認する。仰向けになり、仲間から介抱される彼は、大量の血を失い、息も絶え絶えといった状態であった。その容体は、もはや一刻の猶予もない状態であろうことは容易に想像できる。
「あぁ、君に言われなくとも分かっているさ。ただ……我々にはもう彼を回復させる手段は残されていない」
セロの指摘にメンバーを代表したカラクが苦い表情を浮かべながら答える。その表情からは「もう諦めることしか出来ないのか……」といった暗い影が差し込み、自身の不甲斐なさと悔しさがありありと見て取れた。
(そんなコトだろうと思ったよ。う~ん、どうしようか。俺も「回復薬はもっていないから」と言ってさっさとこの場から立ち去るのは簡単だけど、あの倒れてる人を見捨てるようで気が引けるしなぁ……。それに、俺が見捨てたことが原因で死んでしまうのも寝覚めが悪いし)
目の前のカラクの表情を捉えたセロは、思案した挙句、無言のままスッと倒れるグランの側に歩み寄り、倒れる彼の口にポーチから取り出したポーションを流し込んだ。
「おい! お前……一体何……を」
「いいから、黙って見てろ」
近づいた子どもにホワイトナイツの剣士であるキールがやや鋭い口調で話かけるも、そのキツイ口調はすぐさまトーンダウンする。
それもそのはず。何故なら、あれほど酷かったグランの容態が、流し込んだポーション一つで傷が塞がり、絶え絶えであった息も落ち着いたうえ、顔に赤味が戻ったからである。
「君は一体……」
症状が劇的に改善したグランに安堵しつつも、カラクは突如自分たちの目の前に現れた子どもに問いかける。
「俺の名はセロ。この森で暮らしている。狩りの途中で偶然あんたらを見かけたんだが、余計な世話だったか? 倒れているこのオッサンに手をこまねいていたようだったから、もしかしたら回復させることができないんじゃないかと思って来たんだ。どうやら手持ちのポーションで一命を取り留めることができたみたいだけどな」
「い、いや……私たちのポーションはもう無かったんだ。仲間を助けてくれて感謝する」
その見かけからは想像もできないほどに大人びた口調ですらすらと説明するセロに、メンバーを代表してカラクがやや言葉を詰まらせつつも感謝の言葉を告げる。
「礼はいい。困った時はお互い様というからな。ただ、ポーションで回復はできたようだが、これだけの傷だ。しばらくは安静が必要だろう。とは言え、ここはまだ危ない。夜になれば夜行性の魔物も徘徊するしな。それなら……近くに俺の家があるけれど……どうする?」
ガランの処置を終えたセロは、リーダーであるカラクの顔を見ながら問いかける。
その彼の言葉に、カラクをはじめ、パーティーの全員が頷くのだった。
◆◇◆
「まぁ、ちょっと散らかっているけど、どうぞ」
「……」
道中に自己紹介を済ませたホワイトナイツの面々は、案内するセロに率いられ森の中心へと進む。やがて無骨な土の箱らしき建物の前で立ち止まったセロは、わずかばかりの謝罪を述べつつ、セロはホワイトナイツのメンバーを土箱の家の中へ招き入れた。招かれたメンバーたちは、その中に入って唖然とする。
何故なら、その見た目の無骨さからは到底想像も出来ない、快適な空間が広がっていたからだ。
「大丈夫か? だいぶ疲れているようだけど……もし疲れが溜まっているなら、これでも飲んでおくといい」
そう言ってセロが人数分のポーションをカラクたちに差し出す。ホワイトナイツのメンバーは、計五名。その全員に気前よくポーションを渡したセロに、カラクは目を見開きながら「いいのか?」と訊ねる。
「うん? ……どうしてだ?」
「どうしてって、そりゃあポーション一つとっても、それなりに値が張る代物だろう? 一番効果の低い下級のポーションだって、そんな気軽に使うもんでもないだろうに」
首をわずかに傾げて問ひ返すセロに、剣士のキールが呆れ口調で答える。その返答に、セロは「へぇ……そうなんだ」とどこか他人事のような相槌を打ちながら、
「ポーション自体の相場が分からないけど、こっちとしては全然問題ないさ。ポーションぐらいなら、材料さえあれば簡単に自作できるし」
などと平然と言い切る。そのセロの言葉に、今度はキールが口をポカンと開けながら、その目を横にいるカラクに向けた。
「す、すまない、セロ……君。今、君は『自作できる』と言ったね。君は薬師か何かなのかい?」
「いや、俺は薬師じゃない。そもそも誰かに師事したことはないしな」
「なら、どうやってこのポーションを……?」
カラクは手にしたポーションの瓶を見つめながらセロに訊ねる。彼も冒険者という職業柄、何度もポーションの世話になった経験がある。その彼の目からすれば、今目の前にあるポーションは、下級のものとは言え、その品質は中級のそれに迫るものと判断できる。
それほどまでの高品質なポーションを惜しげも無く、人数分手渡せるセロの存在が、カラクの興味を引いた。
「うーん……まぁ、口外しないと約束できるなら」
「……分かった。ホワイトナイツの名にかけて、製法のことは口外しないと約束しよう」
腕を組み逡巡した挙句、セロは条件付きでカラクの疑問に答えることに了承する。そして、一度奥へと引っ込んだセロは、一抱えある箱を携えて再びカラクたちの前に現れる。
「……これは?」
「名前は付けてないけど……強いて言うなら『メイキングボックス』ってトコかな」
セロはポケットから取り出した銀色の手のひらサイズのカードを置いた箱のスリットに差し込み、ドーム型の蓋を開ける。
「メイキングボックス……? 具体的にどんな仕掛けになっているんだい?」
さらに訊ねるカラクに、セロは「なら、実演しようか?」と持ちかける。頷いたカラクに、セロは部屋の隅に置いていた薬草と魔物から採取した魔核、そして近くの川から汲んで来た水を箱の上部に取り付けられた小箱の中にそれぞれ投入する。
「瓶の材料になる砂はまだ十分あるから、これで準備は完了だな。あとはスイッチを入れれば、この箱の中で自動的に薬が出来上がる」
「えっ!? そ、そんな簡単に?」
セロの説明に、短剣を腰に吊った女性が声を上げる。
「いや、ミラン。材料を入れてスイッチを押すだけで薬が出来るなど、私も聞いたことが無い」
声を上げた女性に対し、カラクが首を横に振りながら答える。一方、セロはそんな彼らの会話を耳にしつつも、持って来た箱を軽く叩きながら説明を続ける。
「ポーションの材料は原料となるリング草、薬効を増幅させる魔核、そして清潔な水の三つ。この箱は、リング草の乾燥と粉砕、魔核の粉砕、そして粉砕し終えたリング薬と魔核、水の混合液を煮沸、蒸留の工程をワンストップで行うことができる。また、出来上がった薬液は、あらかじめセットしておいた瓶に入れて箱から出てくる仕組みだ」
セロの説明が終わると同時に、チンと鳴った箱の側面からカラクが手にしているものと同じポーションが出て来た。流れるような説明を、カラクは呆けた顔で聞き入る。
「これってもしかして……精霊導具なんですか?」
説明に耳を傾けていたメンバーのうち、支援役を担うアルバが問いかける。セロはその質問に、ゆっくりと頷きながら答えた。
「まぁな。この箱の中には火、風、水、土の属性を持つ精霊結晶が内臓されている。リング草や摩核の粉砕及び撹拌には風属性、撹拌後の蒸留には火属性の精霊結晶が作用している。一応、魔核だけを入れるとポーション瓶も作製できる。これは土属性の精霊結晶の作用だけどな」
「……」
つらつらと流れるようなセロの説明に、居合わせたホワイトナイツの面々は今度こそ言葉を失った。稀少な精霊結晶を複数属性つぎ込んだこの『メイキングボックス』の価値もさることながら、それを使いこなし、一つの精霊導具として成立させてしまうセロの技量に、カラクは内心脱帽するほかなかった。
「セロ君。君は……もしかして『機巧師』なのか?」
「機巧師? あぁ……そういや、そんな職業があるんだっけか。う~ん……まぁそれが一番近いだろうが、俺は別にライセンスは取ってない」
「はぁ!? こんな凄いものを作ったのに、機巧師のライセンスを持ってないですって?」
カラクの問いに答えたセロに、ミランが素っ頓狂な声を上げる。
「なら、どうやって精霊導具を作る技術を身につけたんだ?」
「そ、そうですよ! 精霊回路を引けるまでに一年、まともな精霊構文を書けるようになるまで三年、ゼロから精霊導具を作り上げられるようになるまで五年はかかると言われていますが……」
声を荒らげたミランの意見に同調するように、彼女の横にいたキールとアルバが首を傾げながら訊ねる。
「『どうやって』って言われても……独学でとしか言えないな。関連の本を読み漁って覚えた。あとはここで生活する中で、実践して身につけた」
顎に指を当てながら、セロはそうポツリと呟いた。
(うん。嘘は言って無いよな。前世ではもともとエンジニアとして会社に勤めてたケド、それはあくまで下地であって、この世界で精霊構文に出会ったのはあの施設の中だったし)
「ど、独学でって……嘘でしょ……」
彼の言葉に、ミランは愕然とした表情を見せながらうわ言のように呟く。
「その言葉通りなら、驚きしかないですよ。これほどのものを独学で身につけた知識と技術で作り上げるなんて。通常、機巧師になるには専門の教育機関で勉強したのち、難関とされる認定試験に合格しなければならないというのに……」
「はぁ~。いるんだな、天才って」
ミランの言葉に続き、アルバとキールもどこか呆れた調子でセロを見つめる。しかしながら、当の本人はどこか不満気な態度を見せながら、彼らの言い分に異を唱えた。
「えっ……? そんなに凄いか? 俺としてはまだまだ改善の余地があるとしか思えないんだがな。まず精霊結晶を使わないと稼働できないし、一定量の薬液を作り出すのにかかる材料が多過ぎる。せめて精霊石で稼働できるように省力化させる必要があるし、もっと少量の薬草と魔核から薬液を生成できるように、もっと効率化させないと……」
「……」
目の前の精霊導具に、セロは不満気にガリガリと頭を掻きながらつらつらと改善点を指摘する。一方、対するホワイトナイツのメンバーはそれ以上何も言えなかった。
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※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
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