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本編
Module_006
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セロが一人魔法の研究に勤しみつつも、彼の気づかぬうちに身の毛もよだつ楽園での人体実験が密かに進行する中、対する楽園の外では一つの大きな動きが水面下で起きていた。
セロが再び目を覚ましたこの楽園があるのは、シュタイナー大陸の南東に位置する「ブレルデン公国」、その端に位置する場所である。
そこから北上した先に位置するブレルデン公国の首都、アミュイア。多くの人が行き交い、日々賑わいを見せるその都市にある、とある豪奢な屋敷。一目でどこぞの貴族の邸宅だとわかるその屋敷では、既に陽がとっぷりと暮れた頃を見計るように、一台また一台と四頭引きの馬車がゆっくりと敷地内に入っていった。
次々と門を潜り敷地内に入る馬車から姿を現したのは、総勢十名ほどの老若男女であった。彼らは夜陰に紛れるように辺りを警戒しつつ静かに屋敷の中に入っていく。
屋敷の中に入っていく者たちは、いずれも上品な服を纏ういわゆる「上流階層」に位置する者たちである。彼らは黙したまま屋敷の中に足を踏み入れると、屋敷のメイドたちの挨拶もそこそこに真っ直ぐに屋敷内のある一室へと向かっていった。
「……全員揃ったようだな」
最後のメンバーが室内に入ったのを確認すると、部屋の中央に設置されたソファに腰掛けていた屋敷の主――レイナルド=ミュルゼ侯爵が居並ぶ面々を前に口を開いた。
「……では始めよう。諸君、わざわざ集まってもらったのは他でもない。今日話し合うのは、我らが『ブレルデン公国』に巣食う悪――『楽園』と称される機関についての対応だ」
屋敷の主であるミュルゼ侯爵が進行役となり、話を進める。この場に集まった者たちは、その身なりからも推察できるようにブレルデン公国の中枢を担う貴族たちであった。彼らは事あるごとに非公式で集まってはこうして今後の国家運営の方策を話し合っていた。
そして、この日の議題に上ったのが「楽園」に関することである。
「あのぅ、すみません……楽園というのは?」
「あぁ、クロッグ=アルスベルト男爵殿か。確か……お主は最近代替わりしてのだったな?」
ミュルゼ侯爵の話に割り込むように、スッと手を挙げた青年――アルスベルト子爵が口を挟む。その問いかけに侯爵の傍に立っていた老人が長い顎鬚を擦りながら確認するように呟く。
「えぇ、その通りですアギレス=ヨーグ子爵殿」
「なら分からんのも無理はない。侯爵殿の言う『楽園』とは、先々代の国王陛下の時に設立された『研究機関』のことじゃよ」
「研究機関、ですか……ちなみに、楽園ではどのような研究を?」
老人の答えに、今度は若い女性の声が室内に響く。彼女はレイナ=フォルナといい、アギレスと同じ子爵の位に就いている。
「それは、今はもう失われたとされる技法――魔法に関しての研究じゃよ」
「――っ!? ま、魔法ですって? しかも、先々代の国王陛下がご存命の時から!?」
アギレスが返した答えに、レイナは一瞬息を詰まらせながら再び訊ねた。
「……そうだ。もともとは我がブレルデン公国のさらなる発展のため、今は無き先々代の国王陛下が主導され、続けられし研究。それが古の技法とされる『魔法』に関する研究だ。他国からの介入を防ぐため、先々代の国王陛下からの密命により楽園という機関が設置されたと聞いている。知らぬのも無理はなかろう。そして……楽園ではこの現代に魔法を復活させるための方策を探る研究が今なお続けられている」
頷きながら呟くミュルゼ侯爵の言葉に、先ほど質問したクロッグが再び訊ねた。
「でも、一体何故それが『悪』だと? 確か、失われた技法である魔法は現代よりも栄えていたとされる過去の文明における基幹技術のはずですよね? それを復活させようとする楽園に、頭ごなしに『悪』だと決めつける根拠はないと思いますが……」
「確かにその目的は素晴らしいものと言えよう。だが――」
一度そこで言葉を切ったミュルゼ侯爵は、居並ぶ面々の顔を眺めた後にハッキリと告げた。
「――その研究とは、人体実験をしてまでも行うべきものなのかね?」
告げられた言葉に、その場にいる者たちは一様に表情を凍り付かせた。
「まさか……」
ミュルゼ侯爵の言葉に、クロッグを始め居合わせた者たちは一様に息を詰まらせた。人体実験――それは人が持つ欲望を極限までに肥大化させた悪魔の如き所業である。戦時下などの危機的状況であるならそれもあり得ることだろうが、現状ではそうした国家間の争いは起きていない。
「人体実験とは穏やかとは言えんのぅ……侯爵殿、その情報は確かか?」
剣呑な面持ちで訊ねるアギレスに、ミュルゼ侯爵は深く頷きながらさらに言葉を重ねる。
「えぇ。確証を得るまでに苦労はしましたが、確かな筋からの情報です。先々代の国王陛下による密命により設置された楽園は、我が国の秘匿機関。そこにいる職員及び資金提供をする出資者には厳しい秘密保持義務が課せられているようですしね。過去に秘密を漏洩しようとした者は、内々に始末されたようですから」
「国の秘匿機関、か……徹底しておるのぅ」
「正しく。そして、どうやらその実験には大勢の年端もいかぬ子どもたちが犠牲になっているようですね。加えて言えば、『楽園』はその出資者たちにその子どもたちをしばしば『売り払って』いる。おそらく、実験の適性が無いと判断された者が出資者たちに『見返り』として売り払われているのでしょう。もっとも、その売り払われていった子どもたちも実験の犠牲者と似たり寄ったりの末路を歩むケースが多いですね……」
「人身売買か……これはまた難儀な。酷いことを――」
続いて告げられた悪い知らせに、訊ねたアギレスは眉間に皺を寄せながら重苦しく呟く。
「どっどど、どうするんですか? 我が国の一研究機関が人体実験など……それにその子どもたちがもし他国からも掻き集められているのなら、余計な火種を生みかねない」
慌てた様子で結論を求めるクロッグに、ミュルゼ侯爵は「分かっている」と返しつつ、落ち着き払った声でさらに言葉を続けた。
「『楽園』で行われている研究――魔法の復活は、研究の観点からすれば有意義なものだっただろう。だが、先々代の国王陛下がご存命であった頃とは違い、今や『精霊革命』により技術は発展し、人々の生活の質は向上している。また、精霊結晶及び精霊構文を用いた多くの機器は一昔前では考えもしなかった利益を生み出している。このような時代に、もはや『楽園』での研究はその大義を失っているといえるだろう」
ミュルゼ侯爵は険しい表情を見せつつ、集まった面々に同意を求めた。
――精霊革命。
彼の告げたこの言葉は、このシュタイナー大陸における技術を大いに飛躍させた技術革新であった。それまで人海戦術で行っていたことが「精霊導具」によって効率化させることが可能になった。
それは人々の生活の質を向上させただけではなく、その土地を治めるミュルゼを始めとした貴族にも経費の削減と新たな需要の創出、産業の活性化という恩恵をもたらしたのだ。
特に産業の活性化は、為政者たる貴族にとってまさに「金のなる木」足り得る。一昔前では見向きもされなかった山から精霊結晶が採掘されれば、それを巡って商取引が行われる。その取引に税をかければ莫大な収益が望めるのだから。
事実、精霊革命以後、結晶の産出地を領地に持つ貴族は急速にその力を伸ばしていた。一部から「新貴族」などと皮肉を込めて呼ばれる彼らは、ミュルゼ侯爵にとっても無視できない勢力となっていた。
精霊革命という技術革新から早十五年。それほどの短い期間しか経過していないものの、今や精霊導具にまつわる数々の利権は多くの貴族が喉から手が出るほど欲しがるものとなっていた。
「そうね。侯爵が仰る通り、精霊革命により生み出された数多の機械が生み出す利益はもはや無視できないほどの規模になっている。各国ではそうした機器を製作する『機巧師』の確保に躍起になっているのが現状ですからね」
ミュルゼ侯爵の言葉に、レイナが頷きながら同調を示す言葉を返す。実際、彼女の指摘通り、多くの国家は精霊導具を生み出すことの出来る「機巧師」を一人でも多く確保するため、学術機関を設けて人材の育成に注力している。
また、多くの国で機巧師はライセンス制となっており、高いスキルを有すると認められた機巧師は多くの面で優遇され、他国への流出を防ぐよう様々な措置が施されているほどだ。
もっとも、中には大した実績も無いのに「機巧師」のライセンスから得られる特権を用いて好き勝手なことをする輩もいるのだが。
「では、どうする? 侯爵殿……楽園を潰すか?」
「えぇ……もはや古い技術に固執し、あまつさえ禁忌とされる人体実験にまで手を染める楽園の存在は、この国の恥部と言っていいでしょう。ですが、単に楽園を潰しただけではそれまで甘い汁を吸っていた連中が他所へ移るだけでしょう」
「なるほど……先ほど侯爵殿が言った『出資者』という者たちか」
ミュルゼ侯爵の言葉を察したアギレスが確認するように呟く。
「えぇ。私の伝手で調べ上げたところ、楽園に出資する者たちはいずれもこの国の中枢を担う有力な貴族たちのようです」
「それほどの力を持つ方々を相手に、たったこれだけの人数で、ですか……? いくら何でもそれは無謀では? 加えてもし彼らを一掃できたとしても、国家運営の中枢を担っていた方々が大勢粛清されたとなれば、現政権への打撃も計り知れませんよ?」
顔を若干青ざめさせながら意見するクロッグに、眉根を寄せたレイナの声が割って入った。
「ならば貴方は今もなお人体実験などという悪魔の所業を行う楽園の存在を、指を咥えて見ていろと? 冗談じゃないわ。事が露見していない間はいいかもしれないけれど、他国がもし楽園の所業に感づいたらどうなるか……貴方だって分かるでしょう?」
「それはそうですが……」
会議の進行役であるミュルゼ侯爵を差し置き、クロッグとレイナは互いの意見をぶつけ合う。その二人を見つめる他の面々は、やや呆れ顔でちらりと侯爵の顔色を窺っていた。
「よさないか、二人とも。互いの言い分はもっともだ」
ため息交じりに二人の論戦をストップさせたミュルゼ侯爵は、沈黙の降りた室内で居並ぶ面々を前に告げる。
「もはや事態は高度に政治的だ。元々が先々代の国王陛下からの勅命なのだからな。こうなれば、私たちの判断でどうこうできる問題ではない」
「ならばどうする?」
間髪入れず呟くアギレスに、ミュルゼ侯爵は再び口を開いた。
「それ相応の判断を下し得る人物に裁可を委ねるだけだ」
アギレスの問いにミュルゼ侯爵は静かに答えを返す。と同時に、扉をノックする音が一同の耳に届いた。
「あぁ、丁度いいタイミングだ……入ってくれ」
ノック音を聞いたミュルゼ侯爵が中へ入るよう促すと、ややあってゆっくりと扉が開く。開かれた扉の向こうに立っていたのは、侯爵付きの執事と――
「――っ!?」
金色の長い髪を腰まで伸ばし、空色のフリル付きドレスを身に纏う少女の二名であった。少女はドレスの色よりもなお濃い青色の目を細めて微笑を浮かべると、執事に付き添う形で部屋の中へと歩みを進める。
一方、ミュルゼ侯爵を除く面々はその少女を目に留めると、一様に息を詰まらせる。
「皆に紹介しよう。此度の『楽園』における数々の情報を提供してくれた人物であり――」
目を見開いて驚く彼らを差し置き、ミュルゼ侯爵は説明を続ける。
「我が『ブレルデン公国』の第一王女であらせられるレカルナ=ブレルデン様だ」
「皆さま、ご機嫌麗しゅう」
彼の説明を耳にしつつ、その金色に輝く長い髪を揺らしながら、レカルナ王女殿下は微笑を湛えて侯爵の横に並び立った。
◆◇◆
「まさか、王女殿下がいらっしゃるとはのぅ……」
アギレスは長い顎鬚をさすりながら「してやられたわい」と非難にも似た目をミュルゼ侯爵に向ける。
「ごめんなさいね、アギレス。楽園に関する情報は王家と一部の貴族しか知らないの。また楽園を利用して自らの欲を満たそうとする輩もいる。ただ、あの忌まわしき組織を潰すためには、私一人の力ではどうすることもできない。少数の、信頼できる仲間が必要だったの」
「そこで王女殿下と親しい私が信頼できる者たちを集めた、というわけだ」
レカルナ王女の言葉を引き継ぐように、侯爵が口を開き説明を続けていく。
「先にも言ったように、もはや『楽園』の研究は大義名分を失っている。だが、今もなおその利権にしがみつく輩がいることは事実。王女様が調べたところによれば、楽園はその権力を肥大化させ、今では王家ですらコントロールできないまでに巨大化している」
「王家という頸木を外れた楽園は、今では利権に群がる貴族を巻き込み暴走を始めています。『人体実験』という人の尊厳を踏みにじる行為にまで及んでいるのがその証左と言えましょう。統制の効かない組織など、国家にとってはもはやリスク以外の何物でもありません。『精霊革命』という技術革新が目覚ましい今日、古の技法である『魔法』に固執する楽園はもはや不要でしょう」
先ほどまで浮かべていた微笑を消し、真剣な面持ちで呟くレカルナ王女の気迫に呑み込まれ、ミュルゼ侯爵を除く者たちはしばしの間彼女の発言に言葉を挟むことができなかった。
「……じゃが、先ほどクロッグの坊主も言っておったが、楽園の出資には多数の有力貴族がおるらしいとのこと。よしんば試みが成功したとしても、それだけの人数を一度に粛清すれば、現政権への痛手にもなりましょう。また少なからず犠牲者が出ることも想定されます。ご決断されれば、もう引き返すことはできません。それでも?」
アギレスはクロッグとレイナの論戦中に出てきた懸念を口にしつつ、王女殿下へ暗に覚悟を問うた。
――そう、クロッグやアギレスの言う通り、楽園という巨大組織を潰すにはそれ相応の痛手を伴う。口で言うのは簡単だが、一度動いてしまえばそれはもう後戻りすることはできない。また、成功するかどうかも確証はできない。
仮に失敗してしまえば、最悪ここにいる全員の首が飛ぶこともあり得るのだ。
「えぇ……アギレスの言う通り、成功するのかどうかも定かではない。けれど、統制を失い、暴走する組織を黙認していたとなれば、それこそ他国につけ入れられる隙を与えてしまうというもの。現在は大きな国家間の戦争が起きていないとはいえ、それはあくまでも表面に出てきていないだけの話です。自浄作用のない国家という印象を他国に与えてしまいかねないこの状況を改善しなければ、いずれ我が国は楽園の情報を嗅ぎ付けた他国の格好の的となってしまう。それだけは絶対に避けねばなりません」
「……確かにこの状況が続けば、やがて王女様が分析した通りの結末となりましょう。ですが、それが実現するのはまだ先のこと。それに貴方は王女様じゃ。王家の一人とはいえ、国王陛下とは異なり実質的な命令を下せる立場にはおらん。国からの通達が無い現状で我らが手を貸すということは、第三者から見れば陛下を裏切ったとも判断される恐れがある。リスクだけを受け入れて従えとは……我らに死ねと言っていることと同義でありますぞ?」
「ちょ、ちょっとアギレス子爵――っ!」
レカルナを責めるアギレスの言葉に、その場にいたクロッグが割って入ろうとする。しかしながら、ギロリと睨む老人とは思えないその鋭い目つきに怯み、彼の言葉は急速にしぼんで消えるのだった。
「――分かっています」
一瞬沈黙の降りた室内に響くレカルナの声。現実を突きつけられ身を震わせるレカルナだが、アギレスに向けたその青い瞳の奥には強い意志を宿していた。彼女はアギレスに言われてもなお、ギュッと拳を握り締めて居並ぶ面々に呼びかけた。
「困難な道を歩むことはとうに覚悟しています。ですが、私一人の力はあまりに小さい。無理なお願いということは重々承知しています。ですが……この国のために皆様のお力をどうかお貸しください」
決死の覚悟を言葉の端々に漂わせるレカリナ王女は、深々と頭を下げつつ助力を求める。その言葉にミュルゼ侯爵をはじめとする面々は、皆わずかに相好を崩しながら頷き合うのだった。
セロが再び目を覚ましたこの楽園があるのは、シュタイナー大陸の南東に位置する「ブレルデン公国」、その端に位置する場所である。
そこから北上した先に位置するブレルデン公国の首都、アミュイア。多くの人が行き交い、日々賑わいを見せるその都市にある、とある豪奢な屋敷。一目でどこぞの貴族の邸宅だとわかるその屋敷では、既に陽がとっぷりと暮れた頃を見計るように、一台また一台と四頭引きの馬車がゆっくりと敷地内に入っていった。
次々と門を潜り敷地内に入る馬車から姿を現したのは、総勢十名ほどの老若男女であった。彼らは夜陰に紛れるように辺りを警戒しつつ静かに屋敷の中に入っていく。
屋敷の中に入っていく者たちは、いずれも上品な服を纏ういわゆる「上流階層」に位置する者たちである。彼らは黙したまま屋敷の中に足を踏み入れると、屋敷のメイドたちの挨拶もそこそこに真っ直ぐに屋敷内のある一室へと向かっていった。
「……全員揃ったようだな」
最後のメンバーが室内に入ったのを確認すると、部屋の中央に設置されたソファに腰掛けていた屋敷の主――レイナルド=ミュルゼ侯爵が居並ぶ面々を前に口を開いた。
「……では始めよう。諸君、わざわざ集まってもらったのは他でもない。今日話し合うのは、我らが『ブレルデン公国』に巣食う悪――『楽園』と称される機関についての対応だ」
屋敷の主であるミュルゼ侯爵が進行役となり、話を進める。この場に集まった者たちは、その身なりからも推察できるようにブレルデン公国の中枢を担う貴族たちであった。彼らは事あるごとに非公式で集まってはこうして今後の国家運営の方策を話し合っていた。
そして、この日の議題に上ったのが「楽園」に関することである。
「あのぅ、すみません……楽園というのは?」
「あぁ、クロッグ=アルスベルト男爵殿か。確か……お主は最近代替わりしてのだったな?」
ミュルゼ侯爵の話に割り込むように、スッと手を挙げた青年――アルスベルト子爵が口を挟む。その問いかけに侯爵の傍に立っていた老人が長い顎鬚を擦りながら確認するように呟く。
「えぇ、その通りですアギレス=ヨーグ子爵殿」
「なら分からんのも無理はない。侯爵殿の言う『楽園』とは、先々代の国王陛下の時に設立された『研究機関』のことじゃよ」
「研究機関、ですか……ちなみに、楽園ではどのような研究を?」
老人の答えに、今度は若い女性の声が室内に響く。彼女はレイナ=フォルナといい、アギレスと同じ子爵の位に就いている。
「それは、今はもう失われたとされる技法――魔法に関しての研究じゃよ」
「――っ!? ま、魔法ですって? しかも、先々代の国王陛下がご存命の時から!?」
アギレスが返した答えに、レイナは一瞬息を詰まらせながら再び訊ねた。
「……そうだ。もともとは我がブレルデン公国のさらなる発展のため、今は無き先々代の国王陛下が主導され、続けられし研究。それが古の技法とされる『魔法』に関する研究だ。他国からの介入を防ぐため、先々代の国王陛下からの密命により楽園という機関が設置されたと聞いている。知らぬのも無理はなかろう。そして……楽園ではこの現代に魔法を復活させるための方策を探る研究が今なお続けられている」
頷きながら呟くミュルゼ侯爵の言葉に、先ほど質問したクロッグが再び訊ねた。
「でも、一体何故それが『悪』だと? 確か、失われた技法である魔法は現代よりも栄えていたとされる過去の文明における基幹技術のはずですよね? それを復活させようとする楽園に、頭ごなしに『悪』だと決めつける根拠はないと思いますが……」
「確かにその目的は素晴らしいものと言えよう。だが――」
一度そこで言葉を切ったミュルゼ侯爵は、居並ぶ面々の顔を眺めた後にハッキリと告げた。
「――その研究とは、人体実験をしてまでも行うべきものなのかね?」
告げられた言葉に、その場にいる者たちは一様に表情を凍り付かせた。
「まさか……」
ミュルゼ侯爵の言葉に、クロッグを始め居合わせた者たちは一様に息を詰まらせた。人体実験――それは人が持つ欲望を極限までに肥大化させた悪魔の如き所業である。戦時下などの危機的状況であるならそれもあり得ることだろうが、現状ではそうした国家間の争いは起きていない。
「人体実験とは穏やかとは言えんのぅ……侯爵殿、その情報は確かか?」
剣呑な面持ちで訊ねるアギレスに、ミュルゼ侯爵は深く頷きながらさらに言葉を重ねる。
「えぇ。確証を得るまでに苦労はしましたが、確かな筋からの情報です。先々代の国王陛下による密命により設置された楽園は、我が国の秘匿機関。そこにいる職員及び資金提供をする出資者には厳しい秘密保持義務が課せられているようですしね。過去に秘密を漏洩しようとした者は、内々に始末されたようですから」
「国の秘匿機関、か……徹底しておるのぅ」
「正しく。そして、どうやらその実験には大勢の年端もいかぬ子どもたちが犠牲になっているようですね。加えて言えば、『楽園』はその出資者たちにその子どもたちをしばしば『売り払って』いる。おそらく、実験の適性が無いと判断された者が出資者たちに『見返り』として売り払われているのでしょう。もっとも、その売り払われていった子どもたちも実験の犠牲者と似たり寄ったりの末路を歩むケースが多いですね……」
「人身売買か……これはまた難儀な。酷いことを――」
続いて告げられた悪い知らせに、訊ねたアギレスは眉間に皺を寄せながら重苦しく呟く。
「どっどど、どうするんですか? 我が国の一研究機関が人体実験など……それにその子どもたちがもし他国からも掻き集められているのなら、余計な火種を生みかねない」
慌てた様子で結論を求めるクロッグに、ミュルゼ侯爵は「分かっている」と返しつつ、落ち着き払った声でさらに言葉を続けた。
「『楽園』で行われている研究――魔法の復活は、研究の観点からすれば有意義なものだっただろう。だが、先々代の国王陛下がご存命であった頃とは違い、今や『精霊革命』により技術は発展し、人々の生活の質は向上している。また、精霊結晶及び精霊構文を用いた多くの機器は一昔前では考えもしなかった利益を生み出している。このような時代に、もはや『楽園』での研究はその大義を失っているといえるだろう」
ミュルゼ侯爵は険しい表情を見せつつ、集まった面々に同意を求めた。
――精霊革命。
彼の告げたこの言葉は、このシュタイナー大陸における技術を大いに飛躍させた技術革新であった。それまで人海戦術で行っていたことが「精霊導具」によって効率化させることが可能になった。
それは人々の生活の質を向上させただけではなく、その土地を治めるミュルゼを始めとした貴族にも経費の削減と新たな需要の創出、産業の活性化という恩恵をもたらしたのだ。
特に産業の活性化は、為政者たる貴族にとってまさに「金のなる木」足り得る。一昔前では見向きもされなかった山から精霊結晶が採掘されれば、それを巡って商取引が行われる。その取引に税をかければ莫大な収益が望めるのだから。
事実、精霊革命以後、結晶の産出地を領地に持つ貴族は急速にその力を伸ばしていた。一部から「新貴族」などと皮肉を込めて呼ばれる彼らは、ミュルゼ侯爵にとっても無視できない勢力となっていた。
精霊革命という技術革新から早十五年。それほどの短い期間しか経過していないものの、今や精霊導具にまつわる数々の利権は多くの貴族が喉から手が出るほど欲しがるものとなっていた。
「そうね。侯爵が仰る通り、精霊革命により生み出された数多の機械が生み出す利益はもはや無視できないほどの規模になっている。各国ではそうした機器を製作する『機巧師』の確保に躍起になっているのが現状ですからね」
ミュルゼ侯爵の言葉に、レイナが頷きながら同調を示す言葉を返す。実際、彼女の指摘通り、多くの国家は精霊導具を生み出すことの出来る「機巧師」を一人でも多く確保するため、学術機関を設けて人材の育成に注力している。
また、多くの国で機巧師はライセンス制となっており、高いスキルを有すると認められた機巧師は多くの面で優遇され、他国への流出を防ぐよう様々な措置が施されているほどだ。
もっとも、中には大した実績も無いのに「機巧師」のライセンスから得られる特権を用いて好き勝手なことをする輩もいるのだが。
「では、どうする? 侯爵殿……楽園を潰すか?」
「えぇ……もはや古い技術に固執し、あまつさえ禁忌とされる人体実験にまで手を染める楽園の存在は、この国の恥部と言っていいでしょう。ですが、単に楽園を潰しただけではそれまで甘い汁を吸っていた連中が他所へ移るだけでしょう」
「なるほど……先ほど侯爵殿が言った『出資者』という者たちか」
ミュルゼ侯爵の言葉を察したアギレスが確認するように呟く。
「えぇ。私の伝手で調べ上げたところ、楽園に出資する者たちはいずれもこの国の中枢を担う有力な貴族たちのようです」
「それほどの力を持つ方々を相手に、たったこれだけの人数で、ですか……? いくら何でもそれは無謀では? 加えてもし彼らを一掃できたとしても、国家運営の中枢を担っていた方々が大勢粛清されたとなれば、現政権への打撃も計り知れませんよ?」
顔を若干青ざめさせながら意見するクロッグに、眉根を寄せたレイナの声が割って入った。
「ならば貴方は今もなお人体実験などという悪魔の所業を行う楽園の存在を、指を咥えて見ていろと? 冗談じゃないわ。事が露見していない間はいいかもしれないけれど、他国がもし楽園の所業に感づいたらどうなるか……貴方だって分かるでしょう?」
「それはそうですが……」
会議の進行役であるミュルゼ侯爵を差し置き、クロッグとレイナは互いの意見をぶつけ合う。その二人を見つめる他の面々は、やや呆れ顔でちらりと侯爵の顔色を窺っていた。
「よさないか、二人とも。互いの言い分はもっともだ」
ため息交じりに二人の論戦をストップさせたミュルゼ侯爵は、沈黙の降りた室内で居並ぶ面々を前に告げる。
「もはや事態は高度に政治的だ。元々が先々代の国王陛下からの勅命なのだからな。こうなれば、私たちの判断でどうこうできる問題ではない」
「ならばどうする?」
間髪入れず呟くアギレスに、ミュルゼ侯爵は再び口を開いた。
「それ相応の判断を下し得る人物に裁可を委ねるだけだ」
アギレスの問いにミュルゼ侯爵は静かに答えを返す。と同時に、扉をノックする音が一同の耳に届いた。
「あぁ、丁度いいタイミングだ……入ってくれ」
ノック音を聞いたミュルゼ侯爵が中へ入るよう促すと、ややあってゆっくりと扉が開く。開かれた扉の向こうに立っていたのは、侯爵付きの執事と――
「――っ!?」
金色の長い髪を腰まで伸ばし、空色のフリル付きドレスを身に纏う少女の二名であった。少女はドレスの色よりもなお濃い青色の目を細めて微笑を浮かべると、執事に付き添う形で部屋の中へと歩みを進める。
一方、ミュルゼ侯爵を除く面々はその少女を目に留めると、一様に息を詰まらせる。
「皆に紹介しよう。此度の『楽園』における数々の情報を提供してくれた人物であり――」
目を見開いて驚く彼らを差し置き、ミュルゼ侯爵は説明を続ける。
「我が『ブレルデン公国』の第一王女であらせられるレカルナ=ブレルデン様だ」
「皆さま、ご機嫌麗しゅう」
彼の説明を耳にしつつ、その金色に輝く長い髪を揺らしながら、レカルナ王女殿下は微笑を湛えて侯爵の横に並び立った。
◆◇◆
「まさか、王女殿下がいらっしゃるとはのぅ……」
アギレスは長い顎鬚をさすりながら「してやられたわい」と非難にも似た目をミュルゼ侯爵に向ける。
「ごめんなさいね、アギレス。楽園に関する情報は王家と一部の貴族しか知らないの。また楽園を利用して自らの欲を満たそうとする輩もいる。ただ、あの忌まわしき組織を潰すためには、私一人の力ではどうすることもできない。少数の、信頼できる仲間が必要だったの」
「そこで王女殿下と親しい私が信頼できる者たちを集めた、というわけだ」
レカルナ王女の言葉を引き継ぐように、侯爵が口を開き説明を続けていく。
「先にも言ったように、もはや『楽園』の研究は大義名分を失っている。だが、今もなおその利権にしがみつく輩がいることは事実。王女様が調べたところによれば、楽園はその権力を肥大化させ、今では王家ですらコントロールできないまでに巨大化している」
「王家という頸木を外れた楽園は、今では利権に群がる貴族を巻き込み暴走を始めています。『人体実験』という人の尊厳を踏みにじる行為にまで及んでいるのがその証左と言えましょう。統制の効かない組織など、国家にとってはもはやリスク以外の何物でもありません。『精霊革命』という技術革新が目覚ましい今日、古の技法である『魔法』に固執する楽園はもはや不要でしょう」
先ほどまで浮かべていた微笑を消し、真剣な面持ちで呟くレカルナ王女の気迫に呑み込まれ、ミュルゼ侯爵を除く者たちはしばしの間彼女の発言に言葉を挟むことができなかった。
「……じゃが、先ほどクロッグの坊主も言っておったが、楽園の出資には多数の有力貴族がおるらしいとのこと。よしんば試みが成功したとしても、それだけの人数を一度に粛清すれば、現政権への痛手にもなりましょう。また少なからず犠牲者が出ることも想定されます。ご決断されれば、もう引き返すことはできません。それでも?」
アギレスはクロッグとレイナの論戦中に出てきた懸念を口にしつつ、王女殿下へ暗に覚悟を問うた。
――そう、クロッグやアギレスの言う通り、楽園という巨大組織を潰すにはそれ相応の痛手を伴う。口で言うのは簡単だが、一度動いてしまえばそれはもう後戻りすることはできない。また、成功するかどうかも確証はできない。
仮に失敗してしまえば、最悪ここにいる全員の首が飛ぶこともあり得るのだ。
「えぇ……アギレスの言う通り、成功するのかどうかも定かではない。けれど、統制を失い、暴走する組織を黙認していたとなれば、それこそ他国につけ入れられる隙を与えてしまうというもの。現在は大きな国家間の戦争が起きていないとはいえ、それはあくまでも表面に出てきていないだけの話です。自浄作用のない国家という印象を他国に与えてしまいかねないこの状況を改善しなければ、いずれ我が国は楽園の情報を嗅ぎ付けた他国の格好の的となってしまう。それだけは絶対に避けねばなりません」
「……確かにこの状況が続けば、やがて王女様が分析した通りの結末となりましょう。ですが、それが実現するのはまだ先のこと。それに貴方は王女様じゃ。王家の一人とはいえ、国王陛下とは異なり実質的な命令を下せる立場にはおらん。国からの通達が無い現状で我らが手を貸すということは、第三者から見れば陛下を裏切ったとも判断される恐れがある。リスクだけを受け入れて従えとは……我らに死ねと言っていることと同義でありますぞ?」
「ちょ、ちょっとアギレス子爵――っ!」
レカルナを責めるアギレスの言葉に、その場にいたクロッグが割って入ろうとする。しかしながら、ギロリと睨む老人とは思えないその鋭い目つきに怯み、彼の言葉は急速にしぼんで消えるのだった。
「――分かっています」
一瞬沈黙の降りた室内に響くレカルナの声。現実を突きつけられ身を震わせるレカルナだが、アギレスに向けたその青い瞳の奥には強い意志を宿していた。彼女はアギレスに言われてもなお、ギュッと拳を握り締めて居並ぶ面々に呼びかけた。
「困難な道を歩むことはとうに覚悟しています。ですが、私一人の力はあまりに小さい。無理なお願いということは重々承知しています。ですが……この国のために皆様のお力をどうかお貸しください」
決死の覚悟を言葉の端々に漂わせるレカリナ王女は、深々と頭を下げつつ助力を求める。その言葉にミュルゼ侯爵をはじめとする面々は、皆わずかに相好を崩しながら頷き合うのだった。
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