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【黒の創造召喚師 ―Closs over the world―】
第037話 師匠、大学へ行きたいと仰る(当日に)②
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「ふむ……そうか、行ったことがないのか。同じ場所にあるというのに……」
「いや、そもそも高校と大学じゃあ専門性が違うから。それに、俺のクラスは特段大学の人たちと交流する機会が無いからね。まぁ、ソアラたちは別だろうけど。でも、どうしてそんなことを?」
リリアの発言に、今度はツグナから問いかける。
「うん? なに、大したことはないさ。ちょっと白桜大学の教授から『研究テーマに関することで意見を交わしたい』と以前に打診を受けていてな。丁度、宇宙工学に関する理論で煮詰まっていたから、息抜きに行ってみるのも一興かと思ってな」
「えっと……宇宙工学? あれっ? ちょっと前に聞いた話だと量子物理学って耳にした記憶が……」
ツグナはポソリと口を挟むが、リリアにはその言葉が聞こえなかったのか、言葉に耳を貸さず、そのままツラツラと話を続けていく。
「……で、こういった類の申し出はここ最近増えて来ていて、正直ウンザリしていたんだがな。招待者の研究テーマがたまたま私の研究と似通ったものだったということもあって、今回出席を決めたのだ。ツグナの高校も一度見てみたいと考えていたしな」
「えっ? あぁ、うん……さいですか」
ハーフエルフが宇宙工学とはこれ如何に、と最早突っ込みどころが多過ぎて「お腹いっぱい」状態のツグナだったが、意志力を総動員して目を逸らし、無難な相槌一つでやり過ごす。
「ま、まぁ……そういうことなら了解はしたよ。俺が通っているのは高校だけど、併設されてる大学は近いし、系列の学校だから施設内を案内するくらいは簡単だと思う。一応大学の方のマップも把握してるから、その招待された日時と場所を教えてくれれば案内できるよ。それで、具体的な日程は?」
二つ返事でリリアの申し出を了承したツグナは、再び彼女に詳細を訊ねる。
「えぇっと確か……おっ、日付は今日だな。時間は朝の9時過ぎから、と書いてある」
「ブフッ――!?」
テーブルに置いてあった招待状を広げたリリアが、事もなげにしれっとそんな爆弾を投下する。その爆弾は見事ツグナに直撃し、おかげで飲みかけたコーヒーを盛大に噴射してしまう出来事となった。
「ゲホッ、ゴホッ……ちょ、ちょっと待って! きょ、今日って!? しかも朝の9時から!? 何でもっと前に言ってくれないんだよ!」
突然の事態に、慌ててパンを胃の中に突っ込んだツグナがテキパキと食べ終えた食器類を片付けながら悪態をつく。
「ハッハッハッ! いやぁ、悪い悪い。そもそも、これが届いたのは二週間も前だったのだがな。出席の返事をした後、研究のこともあってすっかり忘れてしまったんだ。向こうだと、こういった類のものはシルヴィが何も言わずに一手に処理してくれていたから、聞くのが遅くなってしまった」
「ま、マジかよ。か、勘弁してくれ……」
顔を手で覆いつつ、逃れようのない現実に「もういっそ何もかも投げ出してやろうか」という考えがツグナの頭を掠める。
(いや、いくら何でも師匠のことだ。「あっはっは……」とホントはしっかり準備していて、意地悪くドッキリを仕掛けただけ
という可能性も――)
日頃からイタズラを仕掛けられているツグナは、リリアの言葉を鵜呑みにはせず、心の中でそんな期待にも似た思いを抱く。
しかし――
「ふむ……全くもって準備などしていないが、そんなに焦らずとも大丈夫だろう。まだ約束の時間までしばらくの猶予があるからな!」
「つーか身支度すらも終わってないケドな!」
そんな淡い期待は見るも無惨に砕け散った。迫る現実を前にしてもまるで反省の色も窺えないリリアに、ツグナはちょっとだけ涙目になりながら噛み付くように吠えると共に「シルヴィは大変だったろうな……」と今はこの場にいない彼女の苦労に人知れず思いを馳せた。
「いや、そもそも高校と大学じゃあ専門性が違うから。それに、俺のクラスは特段大学の人たちと交流する機会が無いからね。まぁ、ソアラたちは別だろうけど。でも、どうしてそんなことを?」
リリアの発言に、今度はツグナから問いかける。
「うん? なに、大したことはないさ。ちょっと白桜大学の教授から『研究テーマに関することで意見を交わしたい』と以前に打診を受けていてな。丁度、宇宙工学に関する理論で煮詰まっていたから、息抜きに行ってみるのも一興かと思ってな」
「えっと……宇宙工学? あれっ? ちょっと前に聞いた話だと量子物理学って耳にした記憶が……」
ツグナはポソリと口を挟むが、リリアにはその言葉が聞こえなかったのか、言葉に耳を貸さず、そのままツラツラと話を続けていく。
「……で、こういった類の申し出はここ最近増えて来ていて、正直ウンザリしていたんだがな。招待者の研究テーマがたまたま私の研究と似通ったものだったということもあって、今回出席を決めたのだ。ツグナの高校も一度見てみたいと考えていたしな」
「えっ? あぁ、うん……さいですか」
ハーフエルフが宇宙工学とはこれ如何に、と最早突っ込みどころが多過ぎて「お腹いっぱい」状態のツグナだったが、意志力を総動員して目を逸らし、無難な相槌一つでやり過ごす。
「ま、まぁ……そういうことなら了解はしたよ。俺が通っているのは高校だけど、併設されてる大学は近いし、系列の学校だから施設内を案内するくらいは簡単だと思う。一応大学の方のマップも把握してるから、その招待された日時と場所を教えてくれれば案内できるよ。それで、具体的な日程は?」
二つ返事でリリアの申し出を了承したツグナは、再び彼女に詳細を訊ねる。
「えぇっと確か……おっ、日付は今日だな。時間は朝の9時過ぎから、と書いてある」
「ブフッ――!?」
テーブルに置いてあった招待状を広げたリリアが、事もなげにしれっとそんな爆弾を投下する。その爆弾は見事ツグナに直撃し、おかげで飲みかけたコーヒーを盛大に噴射してしまう出来事となった。
「ゲホッ、ゴホッ……ちょ、ちょっと待って! きょ、今日って!? しかも朝の9時から!? 何でもっと前に言ってくれないんだよ!」
突然の事態に、慌ててパンを胃の中に突っ込んだツグナがテキパキと食べ終えた食器類を片付けながら悪態をつく。
「ハッハッハッ! いやぁ、悪い悪い。そもそも、これが届いたのは二週間も前だったのだがな。出席の返事をした後、研究のこともあってすっかり忘れてしまったんだ。向こうだと、こういった類のものはシルヴィが何も言わずに一手に処理してくれていたから、聞くのが遅くなってしまった」
「ま、マジかよ。か、勘弁してくれ……」
顔を手で覆いつつ、逃れようのない現実に「もういっそ何もかも投げ出してやろうか」という考えがツグナの頭を掠める。
(いや、いくら何でも師匠のことだ。「あっはっは……」とホントはしっかり準備していて、意地悪くドッキリを仕掛けただけ
という可能性も――)
日頃からイタズラを仕掛けられているツグナは、リリアの言葉を鵜呑みにはせず、心の中でそんな期待にも似た思いを抱く。
しかし――
「ふむ……全くもって準備などしていないが、そんなに焦らずとも大丈夫だろう。まだ約束の時間までしばらくの猶予があるからな!」
「つーか身支度すらも終わってないケドな!」
そんな淡い期待は見るも無惨に砕け散った。迫る現実を前にしてもまるで反省の色も窺えないリリアに、ツグナはちょっとだけ涙目になりながら噛み付くように吠えると共に「シルヴィは大変だったろうな……」と今はこの場にいない彼女の苦労に人知れず思いを馳せた。
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