黒の創造召喚師

幾威空

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【黒の創造召喚師 ―Closs over the world―】

第019話 いざ征かん、学校という名の日常へ④

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 リーナ姉、あの隣で喋ってたのは……友達?」
「まぁそうね。今日知り合ったばかりだけれど」
 帰り道、校舎から出たアリアが隣で歩くリーナに訊ねる。

「そうなんだ。いいなぁ~リーナ姉は。もうお友だちが出来て」
 わずかに肩を落として羨むアリアに、リーナが聞き返す。

「そう? 意外ね。どちらかと言うと、こういったコミュニケーションは貴方の方が得意だと思うけど……」
「あ~、まぁそうなんだけどね。何というか……遠巻きにジロジロ見られるのがウザったるくて。気になって話をするどころじゃなかったんだよねぇ~」
 げんなりした様子で口を開くアリアに、キリアも軽くため息を吐きながら同意する。

「そうなのよね……最初は『この指輪が上手く機能してないのか?』とも思ったんだけど、トイレの鏡を見てもちゃんと指輪の効果は発動していたし、問題も無いように思えるのよね。だけど、突き刺さる視線は変わらないし、振り解こうと見てくる輩に視線を向けると、何故か顔を赤らめて視線を外すし……」

 そうして揃って「気疲れした」とため息を吐くアリアとキリアとは対照的なのがソアラだった。彼女は「それは災難だったねぇ……」と苦笑しながら、自分が席に着いた時のことを思い返しつつ話す。

「私は逆に自分から話し始めたからなぁ……アリアやキリアの言う『ウザったるい視線』を気にしてる余裕はなかったよ。話してみると、案外スムーズに意思疎通できたよ? 聞けば『ハッと見惚れちゃってどう声をかければいいのか分からなかった』ってさ。それにしても不思議なのが、クラスの何人かの女の子から『お姉様と呼んでもいいですか?』って聞かれたことなんだよね」
「お姉様ねぇ……ソアラはどっちかと言うと、ボクと同じ『妹ポジション』な気がするけどなぁ。まぁそれはいいとして……それで? どう答えたの?」
 ため息を吐き切って心が軽くなったのか、アリアが眉根を寄せつつ訊ねる。

「いや、無難に『ソアラって呼んでね』って返しておいたよ。私は貴女の姉じゃあないんだけど……って突っ込みたかったけど、相手の事を考えると、ね」
「それもそうだね。相手が何か悪いことをしたワケじゃないんだし、キッパリと正面から断るのも都合が悪い……か」
「そうね、まだ学校が始まったばかりだものね」
 ソアラの返答に、アリアとリーナが軽く頷きながら同意する。

 そんな他愛もない会話を続けていると、彼女たちの前に学院の校門が見えて来た。

「あ、ツグ兄だ!」
 大きな校門の柱に寄りかかりながら人を待つツグナに気付いたアリアが、一直線に彼のもとへと駆け寄る。

「おー、お疲れ様。どうだった、学校は?」
「不安と緊張、かなぁ……人が多いし、むず痒い視線は刺さるし。気疲れしたよー」
 スルリとアリアはツグナの背後に回って抱きつく。ツグナは猫のようにトロンとした表情で気持ちよさそうに抱きついてくるアリアに、「やれやれ……」と小さく肩を上下させて苦笑いを浮かべた。

「ある程度まとまっていたら話は違ったんだろうが、生憎とバラバラになったからなぁ……」
「そうですね。兄さんの言う通り、同じクラスになっていたら少しは違っていたんでしょうが……こればかりは仕方がありませんね」

 ツグナに抱きつくアリアを羨ましそうに見ながらも、追いついたリーナが言葉を返す。
「半日しか経ってないけれど、私も疲れたわ。向けられる視線はどれも好意的なのだけれど……私のちょっとした仕草にも反応してくるから気を遣うのよね。数日経てばまた違ってくるでしょうけど、それまでが大変そうね……」
 げんなりした顔で呟くキリアに、ツグナは「反応してしまう相手のことも、分からんでもないな」とわずかばかりの同情を寄せる。

 キリアはおよそ日本人とは思えない、金髪青眼の美少女だ。この姿で目立つなと言うのが無理というものだろう。
「まぁ最初から上手くことが運べるなんてのは無理だろうさ。この学校にはしばらく世話になることだし、新しい環境に慣れるのには時間も必要だ。なぁに、心配はいらないさ。授業が始まれば、このうわついた空気も落ち着くだろうよ」
「そういうものなのかなぁ……?」
「まぁ、兄さんの言うことですし、どのみちこの学校には通わないといけないのですから、仕方がないでしょう」
 ツグナの言葉に首を傾げつつ呟くソアラに、リーナが諭すように言葉をかける。

「ふむ……今日は半日で終わりだ。なら――昼前だけど、どこかで甘いものでも食べていくか? 疲れた時には甘いものがいい、ってのはよく聞くしな」
 ふとツグナの口から呟かれた提案に、女性陣は「それは本当か!?」などとまるで獲物を狙うような目つきで、分かりやすい反応を示す。

「ただぁし! 行くとしてもどこか一箇所だけだからな。いくつもの店をハシゴする時間的余裕はないし、帰ったら昼飯があるからな」
「「「「はーい!」」」」
 ツグナの提案に気をよくしたソアラたちは、先ほどまでの憂はどこへやら、といった感じで一転して嬉しそうな顔で「どれを食べようか」と話し合っている。
「ほら、いつまでもここに居たら、食べられるものも食べられなくなるぞ。移動しながら決めたらいいだろ?」
 ガラリと変わった女性陣の空気に、ツグナは何度目かの苦笑を浮かべて彼女らを先導するのだった。
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