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2章 屋敷での生活
執事の告白
しおりを挟むこれはティナが倒れる前の話です。
ロセがティナの専属執事になってから、二週間がたったころ。
今日ティナは外でお茶を楽しんでいた。
「やっぱりロセがいれるお茶はおいしいね!」
「ふふ、ありがとうございます。」
ティナの言葉に、ロセは嬉しそうに微笑む。
(あぁ~、目が潰れるぅ!!)
やはり攻略者だからか、ロセの顔はとても整っている。鮮やかな緑色の髪はキチッとまとめてあり、いかにも出来る執事という感じだ。髪と同じ色の瞳をもつ、柔らかな目元は包み込んでくれるような優しさが滲み出ている。
先ほどロセのいれる紅茶は美味しいと言ったが、本当に美味しい。いつもティナの好みドンピシャな物をいれてくれる。また、紅茶に合うお菓子選びも大変優秀である。ティナが甘過ぎるお菓子が苦手と言ってから、用意されるお菓子が甘過ぎるお菓子ではなく、甘さが控えめな物に変わった。そしてそのお菓子もとても美味しい。
ちなみに今日はフルーツのパウンドケーキである。小さくカットされたドライフルーツが沢山混ぜられていて、砂糖の甘さではなくフルーツ本来の甘味を感じられる物だ。ティナはこれを大変気に入り、三枚目を食べようとしてロセにとめられた。
(うーん、今日は良い日だなぁ。)
そんなことを考えていた矢先・・・。
「・・・ティナ様、私は今まで隠していた事があります。」
いきなり話し出したロセは、いつになく真剣か顔で、ティナは何事かと気を引き締める。ロセをよく見てみると、微かに震えていた。
(な、なに・・・?なんかやばい感じ!?)
「私は・・・、私は貴族に拾われましたが、元は平民なんです。今まで黙っていて、申し訳ありません・・・。」
拳を握りしめ、苦しそうにそう言うロセに、ティナはこう言った。
「だからなんですか?」
(確かにそんな設定あったけど、元庶民の私からしたら全く気にならないし、優秀なロセをゲームみたいに苛めるなんてありえないわっ)
そんなことをティナが考えている事など知らないロセは、少し目を潤ませながら問いかけてきた。
「ティナ様は嫌ではないのですか?元平民の私が。」
「うん。全く嫌じゃないよ?そもそも、貴族は平民を見下すけど、平民がいるから貴族の私達が暮らせてる訳で、見下すなんてあり得ないから。それに、ロセはお父様に見定められてうちに来たんでしょ?堂々としてればいいの!」
(あ、五歳児にしては言葉が達者過ぎたかな?まぁこれから隠せる自信ないし、いっか!!)
「ティナ様・・・」
よっぽど勇気を出して言ったのだろう。未だに震えているロセに、ティナは優しく微笑みながら言った。
「それに、私はロセが好きだよ?いつも気を配ってくれて、凄く感謝してるの。」
するとロセは泣き笑いの様な、また、何かを決意した様な笑顔で、
「感謝してるのは、私の方です・・・。」
と言った。その時のロセの笑顔は、とても美しく、格好良かった。
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