愛は魔法じゃ生みだせない(改訂版)

A奈

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一属性(※微)

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『"一属性"

 ──一千万人に一人現れる先天性異常であり、本来なら二つの魔法属性を持って成人までかけて徐々に融合し身体を安定させるが、一属性に該当する人は文字通り魔法属性が一つしかないため融合ができず、身体が不安定な状態が続き、成人を迎える前に亡くなるケースが非常に多い。
 尚、完全な治療法はまだ見つかっていない。』




「…はあ」

 何千回も見た文章だが、一気に気持ちが萎んで、俺は本を閉じた。
 この世界の人間は大なり小なり魔法が使える。ただ、"魔導士"になれるのは一握りだ。
 魔法教育に特化した学園などはそもそも王都にしかない上に、入学試験も難しい。学費も恐ろしく高く、合格したとて通えるかどうかは別だ。そういう生徒のための給付金などもないわけではないが、勿論条件があるため簡単には貰うことはできない。
 そんな所に辺鄙な村育ちで平民の、しかも一属性である自分が無償で通えているのは、学校側―──いや、理事長とあるをしているからだった。



 ──コンコン。


「っ!」

 このドアのノックは間違いなくだ。本当なら無視したいところだが、少し前にそれをやったらドアを破壊されたので、渋々玄関に向かう。

「やっほー、センパイ♡」

 ドアを開けると、ふざけた口調で手を振るロイがいた。憎々しいブロンドが、後ろの窓から夕陽に照らされ、無駄にキラキラしていた。

「…何の用だよ?」
「分かってて聞いてる? 小悪魔なとこもイイかも…」

 ゾッとする。何が小悪魔だ、気色悪い。質問はちゃんと返せ…等々、言いたいことは山程あるが、ぐっと飲みこんで、もう一回同じことを聞こうとした。

「だから何の用だって──!? んん~~…!!」

 その時、突然顎をつかまれ、口を塞がれた。苦しさのあまりの息継ぎの隙にぬるりとロイの熱い舌が侵入してきて、乱暴に口内を蹂躙される。俺がキスに意識を持ってかれてるのをいいことに、大きな筋張った手が、俺の尻をいやらしく擦った。

「──ぷはっ、お前っ、手ぇどけろっ…!」
「えーやだよ。俺もガッチガチで苦しいの。ほら」

 手を掴まれて、股間に誘導させられる。ズボン越しでも分かるくらい昂っているの熱さに、俺は顔から火が出そうになった。

「はは、真っ赤じゃん。あんなことやこんなこといっぱいしてんのにさあ、純情だよね」


 壮絶な色気を孕んだ声で、俺の耳元に囁く。


「ヤろ、センパイ? 後処理はしてあげる」









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