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徳川埋蔵金の発掘
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道をぶらぶらと歩いている最中、急に友人が、
「埋蔵金発掘しに行こうぜ。徳川埋蔵金」
などと言い出したものだから、わたしはたまげた。確かにわたしたちは道をぶらぶらと歩くほど暇を持て余しているが、まさか徳川埋蔵金の発掘とは。
「別にいいけど、埋蔵金なんてどこに埋まってるんだよ」
「正確には分からないけど、多分、この近くにあると思う」
「この近くって、お前、ここは四国だぜ。徳川埋蔵金なんだから、東京か、愛知か、どちらかじゃないのか」
「阿呆。徳川家康は天下統一を果たしたんだぜ。全国各地に埋蔵金が埋まっているに決まっているだろう」
なるほど。流石、友人は頭がいい。
「でも、埋まっている正確な場所は分からないんだろう。どうやって見つけるんだ?」
「阿呆。探している人間が『ここにある』と思った場所に決まっているだろう。そんなことも分からないのか」
なるほど。流石、友人は頭がいい。
道中、友人は徳川埋蔵金についてではなく、先週末にマッサージ店でマッサージを受けた時の話をした。そこは簡易な性的なサービスも行う店だったのだが、サービスがマッサージのみの店に行きたかったが、入ってみるといかがわしい店だった、ではなく、友人は最初から性的なサービスも込みのマッサージが目的でその店を訪れたという。
友人曰く、その店では焦らしのテクニックを効果的に駆使したらしい。初めから店員が脱いだり、客の股間を触ったりするのではなく、徐々に脱いでいき、徐々にマッサージする箇所を股間に近づけていったのだそうだ。
友人は自らが受けたマッサージの模様を、マッサージ室に入った場面から順に語り始めた。臨場感溢れる語り口だったが、友人は致命的なミスを犯していた。詳細に語りすぎたのだ。あまりにも細かな部分まで語ったため、必然に話は冗長になった。わたしは次第に退屈になってきた。
必死にあくびを噛み殺していると、友人の足が止まった。目の前には薬屋があった。いかにも昭和という感じの、古めかしい、掘立小屋に近い造りの建物だ。
「入ろうぜ。埋蔵金発掘に役立つものが売っているかもしれない」
友人にしては的外れな発言だと思ったが、退屈から逃れたい一心で、後に続いて入店する。
店内は薄暗く、埃っぽく、狭かった。中央の棚には液体や粉末が入った小瓶が、内壁に沿って設えられた棚には武器の類が、それぞれ陳列されている。
「へえ。薬だけじゃなくて、武器まで売っているのか。面白いなぁ」
「レアものが多いな。図鑑でした見たことない武器ばかりだ」
わたしも友人も、薬よりも武器を熱心に見た。個性的な形状のものが多く、大いに目を楽しませてくれたが、武器というよりは拷問器具に属する商品が多いのが少し気になる。
「一つ買いたいものがあるんだが、店員がいないなぁ」
レジカウンターの前まで来たタイミングで友人が呟いた。カウンターの内側は無人だった。
「仕方ない。埋蔵金を探しに行こう」
店を出た直後、友人の服の内側からなにかが滑り落ちた。「あ」と小さく呟き、落ちたものを素早く拾い上げ、再び服の内側へ。
わたしたちは黙して見つめ合う。
不意に意味深に微笑んだかと思うと、友人はわたしに背を向け、全速力で走り始めた。
「おい、待て! さっき落としたものはなんだ!」
わたしは友人を追いかけた。友人は足を止めるどころか、ぐんぐん加速する。距離は見る見る開いていく。
友人が盗んだのは、武器なのか、薬なのか。盗んだか盗んでいないかよりも、そちらの方が問題に思えた。
「埋蔵金発掘しに行こうぜ。徳川埋蔵金」
などと言い出したものだから、わたしはたまげた。確かにわたしたちは道をぶらぶらと歩くほど暇を持て余しているが、まさか徳川埋蔵金の発掘とは。
「別にいいけど、埋蔵金なんてどこに埋まってるんだよ」
「正確には分からないけど、多分、この近くにあると思う」
「この近くって、お前、ここは四国だぜ。徳川埋蔵金なんだから、東京か、愛知か、どちらかじゃないのか」
「阿呆。徳川家康は天下統一を果たしたんだぜ。全国各地に埋蔵金が埋まっているに決まっているだろう」
なるほど。流石、友人は頭がいい。
「でも、埋まっている正確な場所は分からないんだろう。どうやって見つけるんだ?」
「阿呆。探している人間が『ここにある』と思った場所に決まっているだろう。そんなことも分からないのか」
なるほど。流石、友人は頭がいい。
道中、友人は徳川埋蔵金についてではなく、先週末にマッサージ店でマッサージを受けた時の話をした。そこは簡易な性的なサービスも行う店だったのだが、サービスがマッサージのみの店に行きたかったが、入ってみるといかがわしい店だった、ではなく、友人は最初から性的なサービスも込みのマッサージが目的でその店を訪れたという。
友人曰く、その店では焦らしのテクニックを効果的に駆使したらしい。初めから店員が脱いだり、客の股間を触ったりするのではなく、徐々に脱いでいき、徐々にマッサージする箇所を股間に近づけていったのだそうだ。
友人は自らが受けたマッサージの模様を、マッサージ室に入った場面から順に語り始めた。臨場感溢れる語り口だったが、友人は致命的なミスを犯していた。詳細に語りすぎたのだ。あまりにも細かな部分まで語ったため、必然に話は冗長になった。わたしは次第に退屈になってきた。
必死にあくびを噛み殺していると、友人の足が止まった。目の前には薬屋があった。いかにも昭和という感じの、古めかしい、掘立小屋に近い造りの建物だ。
「入ろうぜ。埋蔵金発掘に役立つものが売っているかもしれない」
友人にしては的外れな発言だと思ったが、退屈から逃れたい一心で、後に続いて入店する。
店内は薄暗く、埃っぽく、狭かった。中央の棚には液体や粉末が入った小瓶が、内壁に沿って設えられた棚には武器の類が、それぞれ陳列されている。
「へえ。薬だけじゃなくて、武器まで売っているのか。面白いなぁ」
「レアものが多いな。図鑑でした見たことない武器ばかりだ」
わたしも友人も、薬よりも武器を熱心に見た。個性的な形状のものが多く、大いに目を楽しませてくれたが、武器というよりは拷問器具に属する商品が多いのが少し気になる。
「一つ買いたいものがあるんだが、店員がいないなぁ」
レジカウンターの前まで来たタイミングで友人が呟いた。カウンターの内側は無人だった。
「仕方ない。埋蔵金を探しに行こう」
店を出た直後、友人の服の内側からなにかが滑り落ちた。「あ」と小さく呟き、落ちたものを素早く拾い上げ、再び服の内側へ。
わたしたちは黙して見つめ合う。
不意に意味深に微笑んだかと思うと、友人はわたしに背を向け、全速力で走り始めた。
「おい、待て! さっき落としたものはなんだ!」
わたしは友人を追いかけた。友人は足を止めるどころか、ぐんぐん加速する。距離は見る見る開いていく。
友人が盗んだのは、武器なのか、薬なのか。盗んだか盗んでいないかよりも、そちらの方が問題に思えた。
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