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蛮行と救い③
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「おいおい、やべーって、それは」
「やばくねぇよ。蜂蜜のボトルより細いんだから」
「アホ。ケツの穴の直径を考えろ」
「こいつ、漏らしそうじゃね?」
「それはそれでおもしれーよ。ぜってぇ臭いけどな。うんこは天使がしてもくせぇ」
「天使はクソしないだろ」
やはり会話は盛り上がり、やはり碇が最初に冷静さを取り戻した。
「そいじゃあ、いくぞー」
魚肉ソーセージを構え、アナルの出入り口に宛がう。角度的に挿入しにくいらしく、もたついている。それを受けて、脚を持つ二人は十センチほど高く持ち上げた。
フィルムに包まれた加工食品がのめり込む。おおおっ、という歓声。狭い分、細さのアドバンテージをものともせずに痛い。蜂蜜のボトルのときと同じような速度で中に入っていく。進行に合わせて、男たちは「おおおおお」と言う。
魚肉ソーセージはどこまで入るのだろう。腸の長さは膣を上回っているから、ボトルよりもずっと深く埋もれてしまうかもしれない。そうなった場合、どうやって取り出せばいいのだろう。
わたしにとっても、そしておそらくは碇たち四人にとっても予想外の出来事が起きたのは、わたしがそう憂慮している最中のこと。
「あなたたち、なにをしているの?」
若い女性の声が聞こえた。場は水を打ったように静まり返った。
靴音が聞こえる。ヒールが高い靴が奏でる響きだ。首を思い切り持ち上げたが、碇の体が邪魔になって見えない。音がやんだ。
「やっべぇ。相葉だよ」
わたしが自力で正答を導き出すよりも先に、坂本が答え合わせをした。
「あなたたち、五組の子ね? 今日は不要不急の外出は控えるように、という連絡が回ったはずだけど、どうして外に出ているの?」
「性欲処理ですよ、先生」
四人を代表して碇が答える。わたしに背を向けたので顔は分からないが、醜悪な笑みが浮かんでいるのは間違いない。
「俺ら若いんで、オナニーだけじゃ処理が間に合わないんすよ。だから、この間抜け面のブスで処理してたっていう」
「双方の合意があるのであれば、とやかく言うつもりはないわ。でも、どう見ても無理矢理よね」
「は? 違いますって。だってこいつ、嫌だとは一言も言ってないし。そうだよな、みんな」
碇は三人の顔をぐるっと見回した。三人は頷いたらしい。碇の顔はすぐに相葉先生へと戻る。勝ち誇ったようなにやにや笑いが浮かんでいるはずだ。
「脅して口を封じただけでしょう」
「いや、そんなことしてませんって。こいつ、あんましゃべんないし、なにやっても無表情なんすよ。たまにちょっと痛がるくらいで。異常なんすよ。それが先生には、脅された結果表情が死んでいるように見えているだけじゃないですか」
「聞き苦しいだけから、見え見えの嘘をつくのはもうやめなさい。か弱い女の子にそんなことするのは、異常以外のなにものでもないわ。曲がりなりにも高校に入学するだけの頭があるなら、それくらい分かるでしょう」
相葉先生は毅然とした口調で非難する。
「いい加減、等々力さんを解放しなさい。かわいそうでしょう」
「俺らの方がよっぽどかわいそうでしょ。行き場を失った性欲、どうすればいいんすか。相葉先生が責任取ってくれるんですか? 俺ら四人全員の相手しなきゃならないわけですけど、先生のあそこ、持ちますかね」
「俺ら、マジ絶倫っすよ」
碇の下卑た発言に、佐藤が下卑た合いの手を入れた。ひゃはは、と四人が一斉に笑い声を上げたが、
「あなたたちごときと、そんなことをするはずがないでしょう。いいから、その子を離しなさい」
間髪を入れずにぴしゃりと遮る。静かな怒りが込められた、気を緩めていた者が思わず居住まいを正すような、そんな声だ。
「言うことを聞かないなら、警察を呼びますからね。さあ、早くしなさい」
「やばくねぇよ。蜂蜜のボトルより細いんだから」
「アホ。ケツの穴の直径を考えろ」
「こいつ、漏らしそうじゃね?」
「それはそれでおもしれーよ。ぜってぇ臭いけどな。うんこは天使がしてもくせぇ」
「天使はクソしないだろ」
やはり会話は盛り上がり、やはり碇が最初に冷静さを取り戻した。
「そいじゃあ、いくぞー」
魚肉ソーセージを構え、アナルの出入り口に宛がう。角度的に挿入しにくいらしく、もたついている。それを受けて、脚を持つ二人は十センチほど高く持ち上げた。
フィルムに包まれた加工食品がのめり込む。おおおっ、という歓声。狭い分、細さのアドバンテージをものともせずに痛い。蜂蜜のボトルのときと同じような速度で中に入っていく。進行に合わせて、男たちは「おおおおお」と言う。
魚肉ソーセージはどこまで入るのだろう。腸の長さは膣を上回っているから、ボトルよりもずっと深く埋もれてしまうかもしれない。そうなった場合、どうやって取り出せばいいのだろう。
わたしにとっても、そしておそらくは碇たち四人にとっても予想外の出来事が起きたのは、わたしがそう憂慮している最中のこと。
「あなたたち、なにをしているの?」
若い女性の声が聞こえた。場は水を打ったように静まり返った。
靴音が聞こえる。ヒールが高い靴が奏でる響きだ。首を思い切り持ち上げたが、碇の体が邪魔になって見えない。音がやんだ。
「やっべぇ。相葉だよ」
わたしが自力で正答を導き出すよりも先に、坂本が答え合わせをした。
「あなたたち、五組の子ね? 今日は不要不急の外出は控えるように、という連絡が回ったはずだけど、どうして外に出ているの?」
「性欲処理ですよ、先生」
四人を代表して碇が答える。わたしに背を向けたので顔は分からないが、醜悪な笑みが浮かんでいるのは間違いない。
「俺ら若いんで、オナニーだけじゃ処理が間に合わないんすよ。だから、この間抜け面のブスで処理してたっていう」
「双方の合意があるのであれば、とやかく言うつもりはないわ。でも、どう見ても無理矢理よね」
「は? 違いますって。だってこいつ、嫌だとは一言も言ってないし。そうだよな、みんな」
碇は三人の顔をぐるっと見回した。三人は頷いたらしい。碇の顔はすぐに相葉先生へと戻る。勝ち誇ったようなにやにや笑いが浮かんでいるはずだ。
「脅して口を封じただけでしょう」
「いや、そんなことしてませんって。こいつ、あんましゃべんないし、なにやっても無表情なんすよ。たまにちょっと痛がるくらいで。異常なんすよ。それが先生には、脅された結果表情が死んでいるように見えているだけじゃないですか」
「聞き苦しいだけから、見え見えの嘘をつくのはもうやめなさい。か弱い女の子にそんなことするのは、異常以外のなにものでもないわ。曲がりなりにも高校に入学するだけの頭があるなら、それくらい分かるでしょう」
相葉先生は毅然とした口調で非難する。
「いい加減、等々力さんを解放しなさい。かわいそうでしょう」
「俺らの方がよっぽどかわいそうでしょ。行き場を失った性欲、どうすればいいんすか。相葉先生が責任取ってくれるんですか? 俺ら四人全員の相手しなきゃならないわけですけど、先生のあそこ、持ちますかね」
「俺ら、マジ絶倫っすよ」
碇の下卑た発言に、佐藤が下卑た合いの手を入れた。ひゃはは、と四人が一斉に笑い声を上げたが、
「あなたたちごときと、そんなことをするはずがないでしょう。いいから、その子を離しなさい」
間髪を入れずにぴしゃりと遮る。静かな怒りが込められた、気を緩めていた者が思わず居住まいを正すような、そんな声だ。
「言うことを聞かないなら、警察を呼びますからね。さあ、早くしなさい」
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