9 / 15
踊り場のランチタイム
しおりを挟む
昼休み時間。昨日と同じように学食の前で待ち合わせる。
「ごめん、待った?」
五分ほどでサチが駆けつけた。今日も相変わらず、走っている最中の胸の揺れは絶景の一言に尽きる。
「三十秒だけクラスの友だちと話をするつもりだったんだけど、長引いちゃった。ごめんね」
「いや、全然いいよ。友だち付き合いも大事だもんな」
「ありがとう。寛大な心の持ち主だね、直太郎くんは」
「まあな。ところで、今日は学食じゃなくて外で食べたいんだけど。食べるものは購買で買って。だめかな?」
「いいけど、どうして?」
「んー、なんとなく」
学食に来るまでは、学食以外の場所で食事をしようとは一ミリも考えていなかった。しかしサチを待っている間に、人がいない場所で二人きりで食べたい、という願望が芽生えた。生徒たちでごった返す学食内の様子を見ているうちに、昨日サチと昼食をともにしたさいに、じろじろと見られたことを思い出した。二日連続でそれは勘弁してほしい、と思ったのだ。
早い話が、嫉妬。サチをひとり占めしたくて、昼休み時間だけでも二人きりで過ごしたくて、そんな提案をしたのだ。
「おなかぺこぺこだし、さっそく移動しよっか。で、どこで食べるの?」
「実は、まだ決まってない。とりあえず購買に行こうぜ」
「りょーかい!」
人がいない場所がいいとは思っていたが、具体的にどこで、ということまでは決めていなかった。まずは互いにパンと飲み物を購入。それから二か所ほど、これはと見当をつけた場所に足を運んでみたが、いずれも先客がいた。迷っていても時間の無駄ということで、俺が向かったのは、
「おー、旧校舎! 二日連続!」
サチは小さく歓声を上げた。
「もしかして直太郎くん、静かな場所で食べたかったの? だったら、絶好のスポットかもね。わたしたちの思い出の場所でもあるわけだし」
サチは喜んでいるようだが、明らかなマイナス要素が一つだけある。日当たりが悪いのだ。まだ四月中旬だから、日陰だと昼間でも少し肌寒い。昼食くらい、温かな日なたで食べたい。
「雑草だらけで、座るはちょっとって感じだな。もう少し場所を探そう」
サチを促し、校舎の外壁を沿うように移動を開始する。
最初の角を折れると、目の前に階段があった。二階に行くための外階段だ。見上げてみると、踊り場に日が射している。
「サチ、踊り場で食べよう。日当たりがいいから」
「あっ、ほんとだ。眺めもいいし、いいね。じゃあ、行こう!」
サチは元気よく階段を上り始めた。俺も上りかけたが、足を止めたままサチを目で追う。背中ではなく、それよりも下をじっと見つめる。十段ほど上ったところで、スカートの中がとうとう見えた。今日は、黒だ。
「直太郎くん、どうしたの?」
足を止め、不思議そうな顔をこちらに向ける。スカートの裾を気にする素振りは見せていない。このシチュエーション、女子ならば俺の目論見にすぐに感づきそうなものだが、サチは鈍感らしい。
「いや、なんでもない。行こうぜ」
二日連続で下着を拝見できた喜びににやつきながら、俺も階段を上る。
俺たちは踊り場に腰を下ろし、さっそく昼食を食べ始める。俺は焼きそばパンとチョココロネ。サチはホイップクリーム入りの大きなメロンパン。ボリュームは申し分はなく、味も合格点に達している。
食べながらの会話の話題は、やはりというか、部活動のこと。口火を切ったのは、サチだ。
「担任の先生にいろいろ聞いてみたんだけどね、部員が五人集まらなくても、部室を使わせてもらえる場合もないわけじゃないみたい。空き教室自体は結構あるらしくて」
どうやら独自にリサーチをしていたらしい。流石は発起人だけあって、熱意がある。
「ごめん、待った?」
五分ほどでサチが駆けつけた。今日も相変わらず、走っている最中の胸の揺れは絶景の一言に尽きる。
「三十秒だけクラスの友だちと話をするつもりだったんだけど、長引いちゃった。ごめんね」
「いや、全然いいよ。友だち付き合いも大事だもんな」
「ありがとう。寛大な心の持ち主だね、直太郎くんは」
「まあな。ところで、今日は学食じゃなくて外で食べたいんだけど。食べるものは購買で買って。だめかな?」
「いいけど、どうして?」
「んー、なんとなく」
学食に来るまでは、学食以外の場所で食事をしようとは一ミリも考えていなかった。しかしサチを待っている間に、人がいない場所で二人きりで食べたい、という願望が芽生えた。生徒たちでごった返す学食内の様子を見ているうちに、昨日サチと昼食をともにしたさいに、じろじろと見られたことを思い出した。二日連続でそれは勘弁してほしい、と思ったのだ。
早い話が、嫉妬。サチをひとり占めしたくて、昼休み時間だけでも二人きりで過ごしたくて、そんな提案をしたのだ。
「おなかぺこぺこだし、さっそく移動しよっか。で、どこで食べるの?」
「実は、まだ決まってない。とりあえず購買に行こうぜ」
「りょーかい!」
人がいない場所がいいとは思っていたが、具体的にどこで、ということまでは決めていなかった。まずは互いにパンと飲み物を購入。それから二か所ほど、これはと見当をつけた場所に足を運んでみたが、いずれも先客がいた。迷っていても時間の無駄ということで、俺が向かったのは、
「おー、旧校舎! 二日連続!」
サチは小さく歓声を上げた。
「もしかして直太郎くん、静かな場所で食べたかったの? だったら、絶好のスポットかもね。わたしたちの思い出の場所でもあるわけだし」
サチは喜んでいるようだが、明らかなマイナス要素が一つだけある。日当たりが悪いのだ。まだ四月中旬だから、日陰だと昼間でも少し肌寒い。昼食くらい、温かな日なたで食べたい。
「雑草だらけで、座るはちょっとって感じだな。もう少し場所を探そう」
サチを促し、校舎の外壁を沿うように移動を開始する。
最初の角を折れると、目の前に階段があった。二階に行くための外階段だ。見上げてみると、踊り場に日が射している。
「サチ、踊り場で食べよう。日当たりがいいから」
「あっ、ほんとだ。眺めもいいし、いいね。じゃあ、行こう!」
サチは元気よく階段を上り始めた。俺も上りかけたが、足を止めたままサチを目で追う。背中ではなく、それよりも下をじっと見つめる。十段ほど上ったところで、スカートの中がとうとう見えた。今日は、黒だ。
「直太郎くん、どうしたの?」
足を止め、不思議そうな顔をこちらに向ける。スカートの裾を気にする素振りは見せていない。このシチュエーション、女子ならば俺の目論見にすぐに感づきそうなものだが、サチは鈍感らしい。
「いや、なんでもない。行こうぜ」
二日連続で下着を拝見できた喜びににやつきながら、俺も階段を上る。
俺たちは踊り場に腰を下ろし、さっそく昼食を食べ始める。俺は焼きそばパンとチョココロネ。サチはホイップクリーム入りの大きなメロンパン。ボリュームは申し分はなく、味も合格点に達している。
食べながらの会話の話題は、やはりというか、部活動のこと。口火を切ったのは、サチだ。
「担任の先生にいろいろ聞いてみたんだけどね、部員が五人集まらなくても、部室を使わせてもらえる場合もないわけじゃないみたい。空き教室自体は結構あるらしくて」
どうやら独自にリサーチをしていたらしい。流石は発起人だけあって、熱意がある。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
おじさんとショタと、たまに女装
味噌村 幸太郎
恋愛
キャッチコピー
「もう、男の子(娘)じゃないと興奮できない……」
アラサーで独身男性の黒崎 翔は、エロマンガ原作者で貧乏人。
ある日、住んでいるアパートの隣りに、美人で優しい巨乳の人妻が引っ越してきた。
同い年ということもあって、仲良くなれそうだと思ったら……。
黒猫のような小動物に遮られる。
「母ちゃんを、おかずにすんなよ!」
そう叫ぶのは、その人妻よりもかなり背の低い少女。
肌が小麦色に焼けていて、艶のあるショートヘア。
それよりも象徴的なのは、その大きな瞳。
ピンク色のワンピースを着ているし、てっきり女の子だと思ったら……。
母親である人妻が「こぉら、航太」と注意する。
その名前に衝撃を覚える翔、そして母親を守ろうと敵視する航太。
すれ違いから始まる、日常系ラブコメ。
(女装は少なめかもしれません……)
放課後の生徒会室
志月さら
恋愛
春日知佳はある日の放課後、生徒会室で必死におしっこを我慢していた。幼馴染の三好司が書類の存在を忘れていて、生徒会長の楠木旭は殺気立っている。そんな状況でトイレに行きたいと言い出すことができない知佳は、ついに彼らの前でおもらしをしてしまい――。
※この作品はpixiv、カクヨムにも掲載しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる