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いさかい
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「なんで、あるって分かるんだよ。まだ見てもいないのに」
「イナが見るのを嫌がること、それ以上にたしかな証拠があるでしょうか? おばあさまの死にまつわる真実は、イナにとって直視しがたいことなのです。おばあさまの個人情報や思い出をほとんど記憶にとどめていなかったのも、それが要因です。ですが、それでも、あなたは直視しなければなりません。あなたが真の意味で幸福になるためには、絶対に欠かすことができない通過儀礼ですから」
「……なんだよ」
声は若干、自分自身でなければ聞きとれなかったくらい微かではあるが、震えた。
「リーフは、そんなに永遠に消えたいの? さっきからぼくをむかつかせるようなことばかり言って」
「忘れましたか、イナ。私はあなたを助けるために生まれた存在。永遠に消えることになるのだとしても、あなたが幸福になるのであれば、どんな道でもおすすめしますとも」
「ぼくにとって直視しがたいんでしょ? おばあちゃんの死にまつわる真実とやらは。ぼくのためだからという理由だけで直視を強要してくるって、矛盾してない?」
「苦い良薬を服用するようなものだと私は認識しています。つまり、デメリットよりもメリットのほうが圧倒的に大きい。怖いかもしれませんが、それを乗り越えれば、イナは真の意味で幸福になれる。そう確信しているからこそ、開けてくださいとお願いしているのです」
本当に、「おばちゃんの死にまつわる真実」が部屋の中にあるのだろうか? それを直視することで、ぼくの人生に実りがもたらされるのだろうか?
そんなこと、誰にも分からないじゃないか。イナは心の中で吐き捨てる。リーフはある意味、イナ自身よりもイナに知悉している存在だ、という現実を見て見ぬふりをして。
静謐な強硬さを見せるリーフに、どう対応するべきなのか、イナはかなり迷った。可能な限り高速で頭を回転させているのに、いつまで経っても答えが遠い。
しかし、いざたどり着いてしまうと、酷く呆気なく手中に収められた実感を覚えた。
「リーフ。お前、消そうとしても消えないよな。この場でぼくが力を使ったとしても」
「その可能性が高いと思われます。普段でもそうですが、今は最も大切な問題に関する説得を行っている最中ですから、なおさら消えにくいかと」
「ああ、そう。じゃあ、消えなくていいよ。その代わり、石膏像みたいに永遠に固まってろ」
命じた瞬間、リーフの瞳が少し大きくなった。なにか言おうとしたらしく、閉ざされていた唇に僅かな隙間が生じた。
その表情で、リーフは凍りついた。肉体が石膏と化したわけではないが、自発的に肉体を動かせなくなったという意味で、石膏像に等しい状態と化した。
「イナが見るのを嫌がること、それ以上にたしかな証拠があるでしょうか? おばあさまの死にまつわる真実は、イナにとって直視しがたいことなのです。おばあさまの個人情報や思い出をほとんど記憶にとどめていなかったのも、それが要因です。ですが、それでも、あなたは直視しなければなりません。あなたが真の意味で幸福になるためには、絶対に欠かすことができない通過儀礼ですから」
「……なんだよ」
声は若干、自分自身でなければ聞きとれなかったくらい微かではあるが、震えた。
「リーフは、そんなに永遠に消えたいの? さっきからぼくをむかつかせるようなことばかり言って」
「忘れましたか、イナ。私はあなたを助けるために生まれた存在。永遠に消えることになるのだとしても、あなたが幸福になるのであれば、どんな道でもおすすめしますとも」
「ぼくにとって直視しがたいんでしょ? おばあちゃんの死にまつわる真実とやらは。ぼくのためだからという理由だけで直視を強要してくるって、矛盾してない?」
「苦い良薬を服用するようなものだと私は認識しています。つまり、デメリットよりもメリットのほうが圧倒的に大きい。怖いかもしれませんが、それを乗り越えれば、イナは真の意味で幸福になれる。そう確信しているからこそ、開けてくださいとお願いしているのです」
本当に、「おばちゃんの死にまつわる真実」が部屋の中にあるのだろうか? それを直視することで、ぼくの人生に実りがもたらされるのだろうか?
そんなこと、誰にも分からないじゃないか。イナは心の中で吐き捨てる。リーフはある意味、イナ自身よりもイナに知悉している存在だ、という現実を見て見ぬふりをして。
静謐な強硬さを見せるリーフに、どう対応するべきなのか、イナはかなり迷った。可能な限り高速で頭を回転させているのに、いつまで経っても答えが遠い。
しかし、いざたどり着いてしまうと、酷く呆気なく手中に収められた実感を覚えた。
「リーフ。お前、消そうとしても消えないよな。この場でぼくが力を使ったとしても」
「その可能性が高いと思われます。普段でもそうですが、今は最も大切な問題に関する説得を行っている最中ですから、なおさら消えにくいかと」
「ああ、そう。じゃあ、消えなくていいよ。その代わり、石膏像みたいに永遠に固まってろ」
命じた瞬間、リーフの瞳が少し大きくなった。なにか言おうとしたらしく、閉ざされていた唇に僅かな隙間が生じた。
その表情で、リーフは凍りついた。肉体が石膏と化したわけではないが、自発的に肉体を動かせなくなったという意味で、石膏像に等しい状態と化した。
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