26 / 33
サイレン
しおりを挟むとりあえずハッピー先生は後回しにして山小屋へ向かう。
すっかり忘れていたがあの眠り姫がようやく目を覚ましたらしい。
今どうしてることやら。少々気になる。
「いらっしゃい。あれ珍しいお客さんだ。何の用? 」
いつも料理でお世話になってる管理人の女性。
それだけでなく人手が足りないと駆り出されるのでほぼ毎日顔を合わせている。
決して自分から積極的に関わろうとせずサポート役に徹している。
だからなのか名前を知らない。
勝手に管理人さんだとか。山小屋のおばさんと呼んでいる。
本名を知らないから適当に。だからこういう場面では困る。
まあここは素直に奥さんでいいか。
「お邪魔します。ちょっと用事が。二階に上がらせてもらいますね奥さん」
「奥さんって言わないの。二人は夫婦じゃないんだから」
照れながら訂正する。
もちろん知ってるんだけどな……
「二階って? ああそうか。君も見たか。ぜひ見舞ってやってくれ」
謎の少女の存在を隠す訳でもなく会わせない訳でもない。
お見舞いの許しを得る。
「はい、ではお言葉に甘えまして」
「お客さんが一人先に来てる。それと私はちょっと出かけるから留守を頼むよ」
そう言うと女は走って行ってしまった。
これはチャンス? それとも俺は嵌められた?
俺を試すつもりかもしれない。
留守を頼むか…… シードクターもお出かけか。
相談したいことがあったのに。次の機会だな。
二階に上がろうとしたその時声が……
気付かれないように足音を立てずに上へ。
「お名前は? 」
「あーちゃん」
「もう一度。お名前は? 」
「アリー」
「年齢は? 」
「十六歳」
「もう一度」
「十六歳と数ヶ月」
「家族は? 」
「いないよ」
「家族は? 」
「家族なんかじゃない。あいつらは家族なんかじゃない」
さっきまで天使のような少女が声を荒げる。
やはり彼女にも何かしらの過去があるのだろう。
ここに来た者は皆そうだ。トラウマ級の思い出。
何かしら重いのを抱えてる。俺も含めて……
「ここに来た目的は? 」
「連れて来られた」
「目的は? 」
「マウントシーで暮らすこと」
「はいもういいよ。頑張ったね」
聞き取りを終える。
「ねえ一緒に遊ぼう? 」
「ダメダメ! 今日は忙しいの」
甘えん坊のあーちゃんとつれないエレン。
甘える妹とそれを咎める姉。
まるで本当の姉妹のよう。
「彼女の容態はどうだ? 」
ノックもせず入るのは俺の主義じゃないがドアが開いていたら仕方がない。
尋問が終わるまで大人しくしていたのだから文句ないだろ?
「ちょとあなた…… 」
俺の顔を見て怯えている。何かあるのか?
「君の名は確か深海さんだっけ? 俺は大河だ」
知ってるだろうがあーちゃんにも自己紹介しなくてはな。
「知ってますよ。ですが勝手に入るあまりの非礼。この子だって怯えてるじゃない」
よく見ると確かに震えている。これはまずかったかな。
「俺も用があってな。お見舞いに来た」
「彼女が嫌がってます。それ以上近づきにならないで」
あーちゃんの前に立つ。弱いものを守ろうと必死だ。
「君はあーちゃんて言うのか? 」
「聞き耳を立ててたんですね? まったく困った人」
受け入れる気配が無い。
「あーちゃん俺だ。初めてじゃないはずだ」
そう俺もこの子も一緒にベットに寝かされていた。
そう言う意味では深い関係にあると言っても過言ではない。
彼女も俺をうっすら覚えてるかもしれない。
あの時は眠り姫に興味を示さなかった。
なぜなら俺には彼女たちがいたから。
マウントシー攻略が俺の使命。
間違ってもこんな小さな女の子をターゲットにしない。
見た目は十歳前後だが二人の会話から十六歳だと分かりビックリしている。
幼過ぎる見た目。かわいい女の子は嫌いじゃない。
いや俺は変態じゃない。
「あーちゃん。俺だ忘れたか? 」
手を差し出し歩き出す。
「近づかないでと言ったでしょう」
えらい剣幕で顔を紅潮させる。
「ハイハイ。分かったよ。それで彼女の容態はどうなんだ? 」
なおも近づこうとすると無理矢理止められる。
「なぜあなたにお答えしなければならないんですか? 」
確かによく考えればそうだ。まさしく正論。
俺もそれが聞きたいくらいだ。
「ここの管理人にはお世話になってる。ここに来れたのは彼らに認められた証拠さ」
「分かりました」
結局折れるエレン。
警戒するエレンを無視してあーちゃんを見舞うことに。
続く
すっかり忘れていたがあの眠り姫がようやく目を覚ましたらしい。
今どうしてることやら。少々気になる。
「いらっしゃい。あれ珍しいお客さんだ。何の用? 」
いつも料理でお世話になってる管理人の女性。
それだけでなく人手が足りないと駆り出されるのでほぼ毎日顔を合わせている。
決して自分から積極的に関わろうとせずサポート役に徹している。
だからなのか名前を知らない。
勝手に管理人さんだとか。山小屋のおばさんと呼んでいる。
本名を知らないから適当に。だからこういう場面では困る。
まあここは素直に奥さんでいいか。
「お邪魔します。ちょっと用事が。二階に上がらせてもらいますね奥さん」
「奥さんって言わないの。二人は夫婦じゃないんだから」
照れながら訂正する。
もちろん知ってるんだけどな……
「二階って? ああそうか。君も見たか。ぜひ見舞ってやってくれ」
謎の少女の存在を隠す訳でもなく会わせない訳でもない。
お見舞いの許しを得る。
「はい、ではお言葉に甘えまして」
「お客さんが一人先に来てる。それと私はちょっと出かけるから留守を頼むよ」
そう言うと女は走って行ってしまった。
これはチャンス? それとも俺は嵌められた?
俺を試すつもりかもしれない。
留守を頼むか…… シードクターもお出かけか。
相談したいことがあったのに。次の機会だな。
二階に上がろうとしたその時声が……
気付かれないように足音を立てずに上へ。
「お名前は? 」
「あーちゃん」
「もう一度。お名前は? 」
「アリー」
「年齢は? 」
「十六歳」
「もう一度」
「十六歳と数ヶ月」
「家族は? 」
「いないよ」
「家族は? 」
「家族なんかじゃない。あいつらは家族なんかじゃない」
さっきまで天使のような少女が声を荒げる。
やはり彼女にも何かしらの過去があるのだろう。
ここに来た者は皆そうだ。トラウマ級の思い出。
何かしら重いのを抱えてる。俺も含めて……
「ここに来た目的は? 」
「連れて来られた」
「目的は? 」
「マウントシーで暮らすこと」
「はいもういいよ。頑張ったね」
聞き取りを終える。
「ねえ一緒に遊ぼう? 」
「ダメダメ! 今日は忙しいの」
甘えん坊のあーちゃんとつれないエレン。
甘える妹とそれを咎める姉。
まるで本当の姉妹のよう。
「彼女の容態はどうだ? 」
ノックもせず入るのは俺の主義じゃないがドアが開いていたら仕方がない。
尋問が終わるまで大人しくしていたのだから文句ないだろ?
「ちょとあなた…… 」
俺の顔を見て怯えている。何かあるのか?
「君の名は確か深海さんだっけ? 俺は大河だ」
知ってるだろうがあーちゃんにも自己紹介しなくてはな。
「知ってますよ。ですが勝手に入るあまりの非礼。この子だって怯えてるじゃない」
よく見ると確かに震えている。これはまずかったかな。
「俺も用があってな。お見舞いに来た」
「彼女が嫌がってます。それ以上近づきにならないで」
あーちゃんの前に立つ。弱いものを守ろうと必死だ。
「君はあーちゃんて言うのか? 」
「聞き耳を立ててたんですね? まったく困った人」
受け入れる気配が無い。
「あーちゃん俺だ。初めてじゃないはずだ」
そう俺もこの子も一緒にベットに寝かされていた。
そう言う意味では深い関係にあると言っても過言ではない。
彼女も俺をうっすら覚えてるかもしれない。
あの時は眠り姫に興味を示さなかった。
なぜなら俺には彼女たちがいたから。
マウントシー攻略が俺の使命。
間違ってもこんな小さな女の子をターゲットにしない。
見た目は十歳前後だが二人の会話から十六歳だと分かりビックリしている。
幼過ぎる見た目。かわいい女の子は嫌いじゃない。
いや俺は変態じゃない。
「あーちゃん。俺だ忘れたか? 」
手を差し出し歩き出す。
「近づかないでと言ったでしょう」
えらい剣幕で顔を紅潮させる。
「ハイハイ。分かったよ。それで彼女の容態はどうなんだ? 」
なおも近づこうとすると無理矢理止められる。
「なぜあなたにお答えしなければならないんですか? 」
確かによく考えればそうだ。まさしく正論。
俺もそれが聞きたいくらいだ。
「ここの管理人にはお世話になってる。ここに来れたのは彼らに認められた証拠さ」
「分かりました」
結局折れるエレン。
警戒するエレンを無視してあーちゃんを見舞うことに。
続く
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
熾ーおこりー
ようさん
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞参加予定作品(リライト)】
幕末一の剣客集団、新撰組。
疾風怒濤の時代、徳川幕府への忠誠を頑なに貫き時に鉄の掟の下同志の粛清も辞さない戦闘派治安組織として、倒幕派から庶民にまで恐れられた。
組織の転機となった初代局長・芹澤鴨暗殺事件を、原田左之助の視点で描く。
志と名誉のためなら死をも厭わず、やがて新政府軍との絶望的な戦争に飲み込まれていった彼らを蝕む闇とはーー
※史実をヒントにしたフィクション(心理ホラー)です
【登場人物】(ネタバレを含みます)
原田左之助(二三歳) 伊代松山藩出身で槍の名手。新撰組隊士(試衛館派)
芹澤鴨(三七歳) 新撰組筆頭局長。文武両道の北辰一刀流師範。刀を抜くまでもない戦闘の際には鉄製の軍扇を武器とする。水戸派のリーダー。
沖田総司(二一歳) 江戸出身。新撰組隊士の中では最年少だが剣の腕前は五本の指に入る(試衛館派)
山南敬助(二七歳) 仙台藩出身。土方と共に新撰組副長を務める。温厚な調整役(試衛館派)
土方歳三(二八歳)武州出身。新撰組副長。冷静沈着で自分にも他人にも厳しい。試衛館の弟子筆頭で一本気な男だが、策士の一面も(試衛館派)
近藤勇(二九歳) 新撰組局長。土方とは同郷。江戸に上り天然理心流の名門道場・試衛館を継ぐ。
井上源三郎(三四歳) 新撰組では一番年長の隊士。近藤とは先代の兄弟弟子にあたり、唯一の相談役でもある。
新見錦 芹沢の腹心。頭脳派で水戸派のブレインでもある
平山五郎 芹澤の腹心。直情的な男(水戸派)
平間(水戸派)
野口(水戸派)
(画像・速水御舟「炎舞」部分)
【本当にあった怖い話】
ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、
取材や実体験を元に構成されております。
【ご朗読について】
申請などは特に必要ありませんが、
引用元への記載をお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる