どうせみんな死ぬ

阿波野治

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444号室

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 反復運動は、
 あなたが雄々しき剣をわたしのぱっくりと開いた傷口に突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否や引き抜く反復運動はわたしに快楽をもたらすのだけど、あなたはわたしが声を上げることを、快感を覚えるたびに声を上げることを嫌がる。なぜかと言えば、この建物の部屋と部屋を仕切る壁は薄く、声は隣室に筒抜けだとあなたは思っているからなのだけど、それはあなたの思い込みに過ぎないので、あなたが雄々しき剣をわたしの傷口に突き刺しては引き抜くごとに声を上げたいとわたしは思っている。とはいえ実際にわたしが声を上げれば、あなたが雄々しき剣をわたしのぱっくりと開いた傷口に突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否や引き抜く反復運動に快楽を感じてわたしが声を上げれば、隣室の者に私が快楽を感じた時の声を聞かれるのをなによりも嫌がる、住人の声は隣室に筒抜けだと思っているが故に嫌がるあなたは、わたしの声を聞いた瞬間、わたしの傷口に剣を突き刺しては引き抜く運動を一定のリズムで反復する作業を止めるに違いなく、止めたが最後、わたしのぱっくりと開いた傷口に剣を突き刺しては引き抜く作業を再開するまでの時間を、雄々しき剣でわたしのぱっくりと開いた傷口を突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否や引き抜く反復運動を再開するまでの時間を、わたしが声を上げたことを非難するのに費やすに違いなく、それはわたしにとってのなによりの罰なので、それをわたしはなによりも恐れているので、可能ならばわたしはそれを避けたい。避けたいと願う故、わたしは声を上げることを、快感を覚えるたびに声を上げることを控え、あなたが剣を傷口に突き刺し行き当たりに先端をぶつけるや否や引き抜く反復運動をただ受け止めているのだけど、わたしが快感を覚えるごとに声を上げることをあなたが嫌がらなければ、わたしが快感を覚えるたびにわたしが上げる声が薄い壁を越えて隣の住人に聞こえるとあなたが嫌がりさえしなければ快感を覚えるたびに声を上げたいとわたしは思っているので、あなたの雄々しき剣がわたしのぱっくりと開いた傷口に押し入ってはその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否やすぐさま引き抜くたびに声を上げたいのだけど、実際のわたしは声を上げずに、快感を覚えても声を上げずに、突き刺しては引き抜く反復運動をただ受け止めている。声が隣室に筒抜けだなんてあなたの思い込みに過ぎないから、快感を覚えたわたしが上げた声が隣室に筒抜けだなんてあなたの思い込み以外のなにものでもないから、わたしが快感を覚えるたびに声を上げても隣室に筒抜けだなんてことは有り得ないのだけど、筒抜けだなんて有り得ないからといって、あなたが雄々しい剣をわたしのぱっくりと開いた傷口に突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否や引き抜く反復運動によって快感を覚えてわたしが声を上げたとすれば、あなたはわたしに罰を与えるに違いないので、雄々しき剣でわたしのぱっくりと開いた傷口を突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけてはすぐさま引き抜く反復運動を止め、反復運動を止めてから再開までの時間をわたしを非難することに費やすという罰を、雄々しき剣でわたしのぱっくりと開いた傷口を突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけてはすぐさま引き抜く反復運動を止めて再開するまでの時間をわたしを非難することに費やすという罰を与えるに違いないので、それをわたしはなによりも恐れているので、わたしは決して声を上げないのだけど、それでいて声を上げたいとわたしが思い続けるのは、あなたが雄々しき剣をわたしのぱっくりと開いた傷口を突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否や引き抜く反復運動を止めて再開するまでの時間をわたしを非難することに費やすという罰をわたしはなによりも恐れているにもかかわらずあなたが雄々しき剣をわたしのぱっくりと開いた傷口を突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否や引き抜く反復運動によって快感を覚えるたびに声を上げたいという思いをわたしが手放せないのは、わたしのぱっくりと開いた傷口を突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否やすぐさま引き抜く反復運動によって快感を覚えるたびにわたしが上げる声が隣室に筒抜けというのはあなたの思い込みに過ぎないからであって、443号室、445号室、344号室、544号室、そのどの部屋も空き部屋だというのに、あなたはわたしのぱっくりと開いた傷口を突き刺しその先端をわたしの中の行き当たりにぶつけるや否や引き抜く反復運動によって快感を覚えるたびにわたしが上げる声は隣室に筒抜けだとあなたは思い込んでいる。
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