17 / 77
17
しおりを挟む
レイの言うとおりだ。僕たちは一つの大きな枠の中で活動していたが、同じ目標を目指して行動をともにするのではなく、互いに単独行動をとっていた。枠の中に用意されているものの用途が限られているから、見かけのうえでは、同じ行動をとるという結果になっていただけで。
「だけど、気まずいとか、そういうことではなかったでしょ? 楽しかったでしょ? 人が好きで勝手に読んでいる漫画を、別に好きじゃないけどその人に付き合って読む、なんて窮屈な真似はしていないから。好きなことを好き勝手にやっていたから」
これもレイの言うとおりだ。たしかに、楽しかった。自分を殺して共同作業を行わなかったからこそ、軋轢が生じる余地がなく、永遠に続いていきそうな安定感で「楽しい」が続いていた。
「曽我、むちゃくちゃ熱心に漫画を読んでいるようには見えないから、それがちょっと気になって。いや、責めるつもりはないよ? あたしが家にあった漫画を勝手に持ってきただけだから、好みに合わなかったとしても仕方ないし。だったら、無理にあたしの好きに合わせるんじゃなくて、曽我が夢中になれるものにのめりこむことで、あたしと二人きりの時間を楽しく気楽に過ごしてほしい。そう思ったから、ゲームをすればって言ってみたわけ」
しゃべり終えると、レイは一瞬だけ苦笑して漫画に視線を戻した。そうしたあとは、見慣れた彼女の横顔があるばかりだ。
無理に人に合わせるのではなくて、自分が好きなことをやるべき。
進藤レイの思想を読み解くうえでも、僕の人生に影響をもたらしたという意味でも、その言葉の重要性は看過できないものがある。
もっとも、それは当時から時間を置いて、冷静な心で客観的に眺めてみた結果、初めて気がついたことだ。当時の僕は、心を揺さぶられたのはたしかだが、レイのその発言の重要さを充分に認識していなかった。
ほんとうにいいのかな。配慮してくれたのはありがたいけど、空気が悪くなっちゃいそうで、怖いな。
そう思いながらゲーム機の電源を入れる。いきなり音が鳴り出したので、慌ててミュートした。レイはゲーム音についてはいっさい意見しなかったが、読書をするのだから静かなほうがいいに決まっている。
同じポケモンのソフトばかり何年も遊びつづけているので、飽きている。好みではないが、未読ゆえに新鮮な気持ちで読める漫画と、どちらが充実した時間を送るためのパートナーとしてふさわしいのかな、という素朴な疑問はあった。
「だけど、気まずいとか、そういうことではなかったでしょ? 楽しかったでしょ? 人が好きで勝手に読んでいる漫画を、別に好きじゃないけどその人に付き合って読む、なんて窮屈な真似はしていないから。好きなことを好き勝手にやっていたから」
これもレイの言うとおりだ。たしかに、楽しかった。自分を殺して共同作業を行わなかったからこそ、軋轢が生じる余地がなく、永遠に続いていきそうな安定感で「楽しい」が続いていた。
「曽我、むちゃくちゃ熱心に漫画を読んでいるようには見えないから、それがちょっと気になって。いや、責めるつもりはないよ? あたしが家にあった漫画を勝手に持ってきただけだから、好みに合わなかったとしても仕方ないし。だったら、無理にあたしの好きに合わせるんじゃなくて、曽我が夢中になれるものにのめりこむことで、あたしと二人きりの時間を楽しく気楽に過ごしてほしい。そう思ったから、ゲームをすればって言ってみたわけ」
しゃべり終えると、レイは一瞬だけ苦笑して漫画に視線を戻した。そうしたあとは、見慣れた彼女の横顔があるばかりだ。
無理に人に合わせるのではなくて、自分が好きなことをやるべき。
進藤レイの思想を読み解くうえでも、僕の人生に影響をもたらしたという意味でも、その言葉の重要性は看過できないものがある。
もっとも、それは当時から時間を置いて、冷静な心で客観的に眺めてみた結果、初めて気がついたことだ。当時の僕は、心を揺さぶられたのはたしかだが、レイのその発言の重要さを充分に認識していなかった。
ほんとうにいいのかな。配慮してくれたのはありがたいけど、空気が悪くなっちゃいそうで、怖いな。
そう思いながらゲーム機の電源を入れる。いきなり音が鳴り出したので、慌ててミュートした。レイはゲーム音についてはいっさい意見しなかったが、読書をするのだから静かなほうがいいに決まっている。
同じポケモンのソフトばかり何年も遊びつづけているので、飽きている。好みではないが、未読ゆえに新鮮な気持ちで読める漫画と、どちらが充実した時間を送るためのパートナーとしてふさわしいのかな、という素朴な疑問はあった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる