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ジュースの色
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凪と七海は分かれ道まで引き返し、左の道へ進んだ。すると、開けた場所に出た。いくつもの飲食店や土産物屋などがあり、人で賑わっている。
二人は木陰にひっそりと建つ小さな店に入った。店頭に設置された看板によると、洋風のスイーツとドリンクをメインで提供しているらしい。
案内されたのは、窓際の座敷席。さっそくテーブルにメニューを広げ、商品を見ていく。
「このパフェ、おっきいね。カラフルだし、なんていうかもう、眺めているだけで楽しいよ。あっ、このチョコアイス、チョコが七種類も使われているんだって。イチゴ味とか、フルーツ系のチョコがいろいろ使われているのかな」
七海は掲載されている写真を次から次へと指差しながら、感想を口にする。選択肢の多さに一つを選びかねているというよりも、個々の商品への意見を述べるのが目的でしゃべっている。凪はほほ笑ましい気持ちで盛んに相槌を打った。
二人はけっきょく、ドリンクの中から異なる味のジュースを注文した。凪はメロン。七海はピーチ。
選んだ理由をたずねると、答えは二人とも「なんとなく」。二人は幼い子どものように笑みをこぼした。
「お待たせしました。ピーチ味のジュースと、メロン味のジュースになります」
店員がテーブルまで運んできたものを見て、凪は驚いた。ジュースはグラスに入っていたのだが、どちらも泥水のような茶褐色だったのだ。メロンなら黄緑、ピーチならピンクと、あざやかな色をしているのが普通なのに。
困惑する凪の目の前で、七海はなんのためらいもなく、自分のグラスのストローに唇をつけた。とたんに顔が綻んだ。
「うん、甘くておいしい! 凪くんも飲みなよ」
おそるおそる飲んでみる。たしかに、メロンの味がした。甘いし、おいしかったが、彼は首を傾げた。
「どうしたの? 口に合わなかった?」
「いや、おいしいよ。すごくおいしい。でも、なんでこんな変な色なんだろうね」
「違和感を覚えているわけだね。だったら、ストローで混ぜてみて」
「混ぜる? どうして?」
七海は「いいからやってみて」と手振りで促す。半信半疑でストローを回してみると、すぐに変化が現れた。茶褐色の中に黄緑色がにじんだかと思うと、その色が見る見る拡大していき、液体はあっという間に黄緑一色に変わったのだ。
「……びっくりした。このジュースにこんな仕掛けがあるなんて、知らなかったよ」
凪は唖然とした顔を七海に向けながら言う。
「七海。色が変わる秘密を知っていたということは、君はこの店に来たことがあるんだね」
「ううん、初めて来る店。あのね、凪くん。わたしが近くにいるからこそ、ジュースは変色したんだよ。簡単に言うと、わたし、不思議な現象を引き起こす体質なんだ」
二人は木陰にひっそりと建つ小さな店に入った。店頭に設置された看板によると、洋風のスイーツとドリンクをメインで提供しているらしい。
案内されたのは、窓際の座敷席。さっそくテーブルにメニューを広げ、商品を見ていく。
「このパフェ、おっきいね。カラフルだし、なんていうかもう、眺めているだけで楽しいよ。あっ、このチョコアイス、チョコが七種類も使われているんだって。イチゴ味とか、フルーツ系のチョコがいろいろ使われているのかな」
七海は掲載されている写真を次から次へと指差しながら、感想を口にする。選択肢の多さに一つを選びかねているというよりも、個々の商品への意見を述べるのが目的でしゃべっている。凪はほほ笑ましい気持ちで盛んに相槌を打った。
二人はけっきょく、ドリンクの中から異なる味のジュースを注文した。凪はメロン。七海はピーチ。
選んだ理由をたずねると、答えは二人とも「なんとなく」。二人は幼い子どものように笑みをこぼした。
「お待たせしました。ピーチ味のジュースと、メロン味のジュースになります」
店員がテーブルまで運んできたものを見て、凪は驚いた。ジュースはグラスに入っていたのだが、どちらも泥水のような茶褐色だったのだ。メロンなら黄緑、ピーチならピンクと、あざやかな色をしているのが普通なのに。
困惑する凪の目の前で、七海はなんのためらいもなく、自分のグラスのストローに唇をつけた。とたんに顔が綻んだ。
「うん、甘くておいしい! 凪くんも飲みなよ」
おそるおそる飲んでみる。たしかに、メロンの味がした。甘いし、おいしかったが、彼は首を傾げた。
「どうしたの? 口に合わなかった?」
「いや、おいしいよ。すごくおいしい。でも、なんでこんな変な色なんだろうね」
「違和感を覚えているわけだね。だったら、ストローで混ぜてみて」
「混ぜる? どうして?」
七海は「いいからやってみて」と手振りで促す。半信半疑でストローを回してみると、すぐに変化が現れた。茶褐色の中に黄緑色がにじんだかと思うと、その色が見る見る拡大していき、液体はあっという間に黄緑一色に変わったのだ。
「……びっくりした。このジュースにこんな仕掛けがあるなんて、知らなかったよ」
凪は唖然とした顔を七海に向けながら言う。
「七海。色が変わる秘密を知っていたということは、君はこの店に来たことがあるんだね」
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