塵埃抄

サンダーバード

　猫も杓子もエコの御時世、ゆで卵にも食品添加物が使われ、中華人民共和国の動物園では全身が青色のパンダが公開されたそうだ。
「昨日のテニスの試合結果について話すのもいいけど、そんなことよりも」
　そう話を切り出した彼女の肌は荒れていて、高度経済成長、生まれ変わった三歳児も臍を噛む。
「ビスケットはなぜ三枚しかないの？」
　逆に訊くけど、アルキメデスの公理ってなんなの？　ドブに沿って延々と続く塀、そこに群生した苔でさえも呼吸をしていて、即ち、哀愁。控えめに見積もった場合における、蛍光ペン。要するにだね、君……。
　頭部がベンツの九官鳥がなにか食べている。
　バスから降りながら彼は考えた。蕗の薹、あれを私は一度も玩んだことがない、この掌で。原油価格の高騰。ビーズで作ったブレスレット。フォワードの信条。松毬、というよりは、鮮魚店のサクラ。紙はどうして基本的には薄いのだろう。ナイルの賜、ってやつかい。それとも、分別されていないゴミ袋の中の混沌、と表現するのが適切かな。なにか答えてくれよ。意外に思うかもしれないけど、狼だって人肌が恋しいんだぜ。
　海だ。兵庫県は高砂市に在住の北村さん一家が日課にしているのは、無論、足湯だ。砂金の採掘。最近では、それもいい、と考え方を変え始めている。愛と平和。
　乳幼児の母親は多くのものを二個ずつ買っている。それに対する散文的な反論。
　朝、いや昼かもしれない、金魚の水槽を見た。夕飯はなにを食べようか。集中力が散漫なのよ、生まれ立ての馬みたいに。そう彼女は指摘したけれど、本当は、敷き詰められていたものをなんと呼ぶのかが分からなかっただけなんだ。ほら、御覧、夜の帳が。
　はたと気がつく。二人が住んでいたのはプロイセンの古城だったことに。
　頷き合って、笑い合ったのさ。なにせ、弾倉にはビー玉など入っていなかったのだから。