塵埃抄

阿波野治

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ヘリコプターと農家の娘

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 私はヘリコプターに搭乗していた。行き先や目的は定かではない。
 順調に飛行を続けていたヘリが、突然、不自然なまでに激しく揺らぎ始めた。機体は揺れながら次第に降下し、地面に墜落した。
 ヘリに損傷はなかったが、爆発する危険性があるらしく、搭乗者は全員、機外へ脱出することになった。狭い機内に収まっていたのが信じがたいほど大勢の人間が外へ逃れ、全速力でヘリから遠ざかり始めた。
 雑木林の中を走っていると、不意に呼び止められた。警官と思しき身形の男だった。こちらに歩み寄り、私の手首に手錠をかける。警官曰く、私は難民に該当する立場なので、これより所定の施設に移送されるという。
 移送先は、郊外の農家だった。
 その家で、下男として住み込みで働き始めた私は、その家の主人の娘に付き添い、得意先に荷物を配達する任を仰せつかった。届け先は近所のホテル。娘は窓口に小包を提出し、建物の中に入っていく。後を追うと、ホテルの一階はレストランになっていた。大勢の人間が食事をとっているが、娘の姿はどこにも見当たらない。
 まごついていると、いつの間にか近くのテーブル席に娘が座っていて、私を手招いた。娘の隣に腰を下ろす。娘は定食を食べていて、私の分も用意されていた。
 定食をつつきながら、私は娘と無駄話をした。私は娘に親しげな口を利いた。どうやら私は、娘に恋愛感情を抱いているらしい。
 娘が突然、今夜はこのホテルに一緒に泊まる予定になっている、と私に告げた。あなたと一緒は遠慮したい、と即座に応じると、娘は旋毛を曲げてしまった。冗談だと弁明し、詫びを入れたが、機嫌は治らない。途方に暮れ、顔を正面に向けると、小学生の時に一年間だけ同じクラスだった長身の鎌田さんが前の席に座っていて、私や娘が食べているのと同じ定食を食べていた。
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