金字塔の夏

阿波野治

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カイリとの衝突①

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 ナツキは誰とでもある程度仲よくなれるが、放課後や休日にいっしょに遊ぶ人間の数は少ない。
 中学生になり、クラスが別々になったことで、ただでさえ少ない友だちの数はさらに減った。その数少ない友だちの一人がチグサであり、カイリだ。

 しかし、カイリとはゴールデンウィーク直前に大喧嘩をしてしまい、自他ともに認める親友から一転、険悪な仲になってしまった。
 そして、唯一の遊び相手と言っても過言ではないチグサとは、真樹の強引な決定のせいで、三日のあいだいっしょに遊べない。

 朝から部屋にクーラーをかけ、マンガ、ゲーム、マンガ、ゲームのローテーションで時間をつぶす。早めの昼食をとったあと、少し仮眠をとって、引き続きマンガとゲーム。
 それにも飽きて、あくびをしながら時計を見て、ナツキは思わず目を瞠った。まだ午後二時を回ったばかりだったからだ。

 この調子で過ごしていたら、退屈に殺されてしまう。今日一日だけならまだしも、これが三日も続くのだと思うと、ぞっとする。

「……遊びに行こう、かな」


* * *


 行き先に決めた大型ショッピングセンターは、ナツキの自宅から徒歩十五分ほどの場所にある。
 真夏の暑さを考えると、十五分歩くのは少々つらい。出かける前はそう思っていたが、いざ歩いてみると、さほど苦痛を感じないことに気がつく。二日間炎天下を歩いたことで、心と体がいくらか鍛えられたのかもしれない。

 ナツキは最初、気の赴くままにフロアを逍遥するつもりでいた。しかし、入ってすぐの場所にある店のショーウインドーに陳列されていた帽子を見て、ピラミッド行きに役立ちそうな商品を見て回ろう、と考えが変わった。
 帽子、服、靴、鞄。テナントの数が多く、軽く覗いてみるだけでもかなり時間をつぶせる。自分ではなく、チグサにぴったりか否かを基準に見ていることに気がつき、くすぐったいような、むず痒いような気持ちになった。大きすぎるリュクサック。不評だったニューヨークヤンキースのキャップ。買い換えるものがあるとすれば自分のほうなのに。

 いいな、と思うものは何点かあった。チグサにサプライズでプレゼントしたら喜ぶだろう、とも思った。しかし、あいにく、手持ちの金が少なすぎる。今日のところは、有意義に時間を消費できたのでそれでよしとして、エスカレーターで二階へ。

 来る前から覚悟してはいたが、賑わう場所を一人で歩く疎外感はやはり心に刺さる。二階はフードコートにゲームセンターにオモチャ屋と、家族連れで賑わう店が多いせいか、より強くその感情を覚える。
 何軒かの店に寄るつもりでいたが、一軒目の雑貨屋を出た時点で、もう帰ろう、という気分になった。

 ただ、歩き回ったせいで喉が渇いているので、水分補給をしておきたい。フードコートか、それともカフェか。ぱっと浮かんだ二つの選択肢のうち、現在地から近いという理由で、前者を選択する。

 フードコートは空席を見つけるのも難しい盛況ぶりだ。疎外感を散々味わってきたのも相俟って、しりごみをしてしまったが、ショッピングセンター内の飲食店はどこも似たようなものだと思い直す。
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