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セールスマンと薄紙
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昼下がり、キャベツの千切りを頭に散らしたセールスマンが自宅を訪問し、
「スケッチブックは要りませんか」
透けるほど薄い紙切れを差し出した。簡単に破れそうだし、スケッチブックなのに一枚しかないから、すぐになくなってしまう。苦笑して頭を振ると、
「嫌だなあ、サンプルですよ、サンプル。どんな描き心地か、試してみてくださいよ」
セールスマンは営業スマイルで私を見つめる。ペンは自分で用意しなければならないらしい。
踵を返し、リビングのドアを開けた途端、鉄砲水が襲いかかってきた。凄まじい水圧に、為す術なく玄関まで押し流された。
立ち上がると、水深は膝まであった。水嵩は刻一刻と増していく。
突然、あはははは、という笑い声。振り向くと、玄関ドアの前で、セールスマンが薄紙で折られた飛行機に跨って宙に浮いていた。頭に載った千切りキャベツがぱらぱらと落ちては水に呑み込まれていく。水位は早くも腰に達しそうだ。
「スケッチブックは要りませんか」
透けるほど薄い紙切れを差し出した。簡単に破れそうだし、スケッチブックなのに一枚しかないから、すぐになくなってしまう。苦笑して頭を振ると、
「嫌だなあ、サンプルですよ、サンプル。どんな描き心地か、試してみてくださいよ」
セールスマンは営業スマイルで私を見つめる。ペンは自分で用意しなければならないらしい。
踵を返し、リビングのドアを開けた途端、鉄砲水が襲いかかってきた。凄まじい水圧に、為す術なく玄関まで押し流された。
立ち上がると、水深は膝まであった。水嵩は刻一刻と増していく。
突然、あはははは、という笑い声。振り向くと、玄関ドアの前で、セールスマンが薄紙で折られた飛行機に跨って宙に浮いていた。頭に載った千切りキャベツがぱらぱらと落ちては水に呑み込まれていく。水位は早くも腰に達しそうだ。
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